お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀

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37話 魔王 3/3

「観客の声に耳を傾けてみろ」

 スルマの頭を掴み、観客に向ける。
 彼らは怒りの表情で、スルマを睨んでいた。

「スルマの野郎! 早く死ね!」

「テメェのせいで、死ぬところだったんだぞ!」

「領地の財政難も、なんとかしろ!」

「テメェ貴族だろ! ファレト領の被害に、目を背けるな!」

「逃げるな! 弁明しろ!」

「アルカに謝って、早く死ね!」

「死ね無能!」

 観客は心ない言葉を、スルマにぶつける。
 領地を財政難に貶めた、無能のスルマを。
 大会で殺そうとした、非道のスルマを。
 徹底的に非難する。

「お前には、もう価値なんて無い。誰一人として、お前を応援などしない」

「ワシは……どうすればいい? 魔王の力を授かったというのに、貴様に敗北したワシは……どうすればいいのじゃ?」

「まずは俺に謝罪だ」

 フランスパンを囓る。

「これまでの謝罪、これからの謝罪。早くしろ」

「わ、わかった……」

 スルマは地面を掘る勢いで、頭を地面に刺す。

「ワシが……ワシが全て悪かった。アルカをいじめるようにイリカを仕向け、学内のいじめもワシが命じた。それらも全て、ワシのせいじゃ。無能な貴様を虐げることしか頭になかった、愚鈍なワシが……全て悪い。どうか……頼む、許してくれ……!」

「……学内のいじめも、お前が犯人だと?」

 フランスパンを囓る。

「……最初はお前に自死をしてもらおうと思っていたが、気が変わった」

「な、なんじゃと……?」

 フランスパンを囓る。
 そして、魔術をスルマにかける。

「《筋肉の唄マッスル・ソング》《筋肉の唄マッスル・ソング》《鋼鉄の唄アイアン・ソング》」

多連詠唱シークェル? それもワシに唱えたじゃと?」

「”死”よりも恐ろしい、地獄を見せてやる」

 フランスパンを囓る。

「奪盗術師は、そもそもは支援術師だ」

「支援術師……人や物を強化・弱体化させることができるのじゃろ? いまさら、それがどうしたのじゃ?」

「人を強化……つまり、肉体を強化するということは、寿命を延ばすことに繋がる。貧弱な肉体よりも、強靱な肉体の方が圧倒的に寿命があるからな」

「何が言いたいのじゃ……?」

「本当はわかっているんだろう?」

 フランスパンを囓る。

「つまり、俺の支援術でお前の寿命を延ばしてやった」

「な、なんじゃと!!」

「お前は寿命が尽きるまで、生き続けるんだ。才能を失い、醜い肉塊となりながらな」

 恥辱を得ながら生きることは、死ぬことよりも恐ろしい。

「そんな……ワシはこの状態で……生き続けるのか……!?」

「俺の支援術を掛けたから、100~200年以上は生き続けるだろうな」

「そ、そんな……き、気が狂ってしまう!! ワシは……才能がなく、皆から非難を浴びながら……生き続けなければならんのか!」

「愛息子と共に、一生恥を晒しながら生き続けろ」

「そ、そんな……」

「観客を襲ったことが原因で、爵位も剥奪されるだろうが、せいぜい頑張って生き続けろよ」

「まて! ワシは……ワシを、殺してくれ!! 恥を背負いながら生き続けるなど、ワシには……耐えきれない!!」

「……うるさい男だ」

 フランスパンを囓る。
 ……食べ過ぎて、フランスパンは残り僅かだ。

「こんなに短いフランスパンでは、切り刻めない……」

 短くなったフランスパンを握りしめ────

「これが息子だったもの・・・・・の、最後の応援だ」

 ────放つ。

「《フランスパンチ》!!」

 フランスパンを握りしめながら、スルマの腰を殴った。

【魔術スキル:フランスパンチを習得しました】

「ぐ、がぁ……」

 仙骨を砕かれ、そのまま失神するスルマ。
 魔力は仙骨に溜まる性質があるため、これでスルマは二度と魔術を扱えなくなっただろう。
 そんなスルマの表情は、未来への苦痛に歪んでいた。

「……コレは貰うぞ」

 残りのフランスパンを口に放り込み、黒魔刀ベリアルを拾う。

「せいぜい長生きしろよ。親の長生きを願うのは、親孝行だからな」

 ツバを吐き、俺は実況に目を向ける。



「優勝は!! アルカ選手だァアア!!」



 実況が俺の優勝を宣言すると、歓声が響き渡る。

「スゴいぜ!! アルカ選手!!」

「あの元宮廷魔術を倒すなんて!!」

「人外になった男を倒すなんて、スゴすぎますわ!!」

「さすがだぜ、アルカ選手!!」

 感謝の声援が鳴り止まない。
 最初は俺のことを蔑んでいた多くの観客も、今となっては感謝の嵐。

「……少し、気分が良いな」

 黒魔刀ベリアルを腰に差し、俺は控え室へと向かった。
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