お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀

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38話 表彰

 その後、表彰式が行われ、立派なトロフィーが渡された。
 金でできたそれは、きっと高値で売れるだろう。
 もちろん、今はカネには困っていないので、売ったりはしないが。

 そして閉会式が行われた後、俺の元に大会のスタッフが近づいてきた。
 彼は「王城で優勝賞品の授与を行うため、一緒に来てほしい」と語ってきた。
 そういえば優勝賞品はトロフィーなどではなく、王立ルノール魔術学院受験資格証だったな。 

 そしてスタッフに連れられ、俺は現在王城にいる。
 正確には、謁見の間にて王の目の前にいる。

「まさかキミが優勝するだなんてな……」

 玉座に腰掛け、鷹のような鋭い眼差しをしたこの男こそが、この王国の国王陛下だ。
 50歳を超えているというのに、ローブ越しにもわかるほどの鍛えられた肉体。
 歴戦の戦士を彷彿とさせるその威厳は、いくら俺でも少し震えてしまうほど。

「えぇ、お久しぶりです。陛下」

「うむ……キミに何があったのかは聞かないが、大会で何があったかはすでに聞いている。よくぞ、民草を救ってくれた」

 陛下は頭を下げる。
 
「陛下、頭を上げてください。俺は民を救うなんて高尚なことは考えていなくて、ただ……スルマに復習したいと思っていただけです」

「それでも……キミが救ってくれたことは事実だ。感謝を述べさせてくれ。それに……キミが望むことなら、どんなことでも協力すると誓おう」

「あはは……ありがたいですね」

 王立ルノール魔術学院受験資格証が欲しくて参加しただけなのに、まさかこんなことになるだなんてな。
 棚からボタ餅、東洋ではこんな状況をそういう風に言うのだったような。

「それでは、早速ですけれど……望みを言ってもいいですか?」

「あぁ、もちろんだとも! 何でも言ってくれ!!」

「えっとですね……まずは王立ルノール魔術学院受験資格証をください」

「おぉそうか! そういえばキミは今年で15歳だったな! よし、それでは早速だが授与しよう!!」

 陛下は隣にいた騎士から一通の封筒を預かる。
 そして俺の元までやってきて、その封筒を渡してきた。

「我の娘も今度、王立ルノール魔術学院を受験するのだ。互いに合格したら、是非仲良くしてやってくれ」

「へぇ、娘さんですか……」

 公爵家として幾度か王家主催のパーティには参加したことがあるが、なんだかんだ一度も王女……つまり国王陛下の娘とはあったことがない。
 理由はわからないが、なんだか闇が深そうだ。

「しかし、まさかキミは王立ルノール魔術学院を受験するだなんてな。いやぁ、ビックリだ」

「あはは、俺もそう思います」

 奪盗術師の力がなければ、不可能だったことだ。
 どんな奇跡が起きても、無理なことは無理なのだ。

「あ、そうだ。陛下、もう1つ願いを聞いてもらってもいいですか?」

「あぁ、もちろん」

 王立ルノール魔術学院受験資格証をもらう以外に、もう1つ俺には叶えてもらいたい願いがある。
 それは──

「『研究機関』の連中と合わせてください」


 ◆


 午前1時、俺は王城のとある部屋にいた。
 
「遅いな……」

 壁掛け時計に視線を送り、ただ人を待つ。
 現代は前世よりも圧倒的に劣化しているため、暇を持て余すことが多い。
 前世であれば、『エレガントフォン』という道具で、いくらでも暇を潰せたというのに。

「すみません、お待たせいたしました」

 と、そんな時に扉が開かれた。
 やってきたのは、1人の男性。
 非常に華奢な肉体で、白衣を身に纏っている。
 
「初めまして、あなたが……『研究機関』の人ですね」

「えぇ、そうです」

 ニッコリと青白い顔を歪ませ、笑みを作り出す男性。
 その表情はハッキリと言って……不気味極まりない。

「しかし……まさかあなたのような人が、我々のことをご存じだとは思いませんでしたよ」

「有名ですからね、とある都市伝説が」

 この国にはとある都市伝説が存在する。
 『我が国には極秘の組織がいくつかある。その内の1つに囚人を用いて、人体実験を行っている組織がある』というものが。
 
 どれほどのクスリを打ち込めば、人は死ぬのか。
 人が耐えられる痛みの限界は、一体どれほどのモノなのか。
 そんな人道から外れた実験を、夜な夜な行っているという噂が出回っているのだ。

「えぇ、その都市伝説は概ね正しいです。しかし……」

「根も葉もない都市伝説が多い中、何故研究機関の都市伝説は存在するという確証を得たのか……と言いたいのですよね?」

「えぇ、是非ともお聞かせ願いたいです」
 
 都市伝説というものは、多くが初等部に卒業するものだ。
 身体が大きくなるにつれ、人は現実を痛感する。
 そして幼き日に信じていた都市伝説など、虚構であるということに気づくのだ。

「言語化は難しいのですが……強いて言うのなら、勘ですかね」

「勘……ですか」

「えぇ、俺の直感が存在すると言ったのです」

 もちろん嘘だ。
 俺が研究機関が存在すると確信した理由、それは俺の前世に起因する。
 前世の俺は今の研究機関のような、人道から外れた機関に所属していた。
 過去にもそういった機関が存在し、都市伝説として似た噂があるのならば、現代にも存在するのではないかと思い至っただけの話だ。

「……その話の審議はさておき、我々と接触しようと思った理由はなんですか?」

「単純な話ですよ。あなた方に、被験者モルモットを提供しようと思いましてね」

「……ほぉ、興味深い話ですね。是非とも、詳しくお聞かせ願いたいものです」

「えぇ、もちろん」

 俺は男性に、とある計画を話す。
 それは俺の……復讐の最終章となる話だ。

 
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