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6話 再会
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その後、俺は帰還用ゲートで地上にやってきた。
辺りはすでに真っ暗になっている。
そうか、卒業式を終えてすぐにこの迷宮へとやってきたが、そんなに時間が経っていたのか。
全盛期であればこんな迷宮、十数秒で踏破できたというのに……若返ったことにより、ここまで弱体化してしまったのか。
本当はもう1つ行きたい迷宮があったのだが……今日はもうやめておこう。
今日のところはおとなしく、帰るとしようか。
悲しいが、仕方のないこと──
「ま、待ってくれ!!」
「? ……あ」
トボトボ帰途に至る俺に声をかけたのは、見覚えのある青年だ。
少し長い茶色い髪を、後ろに束ねている。
輝くような金色の瞳、整った顔立ち。
俺よりも少しだけ背が高く、175センチはあるだろう背丈。
腰にはロングソード、服装は革鎧だ。
現時点において、俺と彼は面識がない。
だが……俺は彼を知っている。
憎々しいほどに、彼のことを恨んでいる。
そう、彼の名は──
「……カイト・クラジオンだな」
「え、どうして俺の名前を知っているんだ?」
カイト・クラジオン、彼こそが俺をパーティから追放した張本人だ。
正史では5年後に俺を追放し、代わりにテノールを迎え入れた。
そして……俺に無様な人生を送らせたのだ。
こいつがいなければ、俺は……華のある人生を送れたのに!!
彼らと共に世界最難易度の迷宮を攻略し、彼らと共に栄光を掴めたのに!!
それなのに……俺だけが!! 悔しい思いをした!!
……思い出すと沸騰してしまいそうなほどに、苛立ちが募ってしまう。
「そりゃあ知っているさ。なんたって、竜人族が冒険者登録してくるなんて前代未聞なんだからな」
「な、何故それを!?」
竜人族、それは今から15年後までは伝説上の種族とされてきた種族だ。
遥か天空に都市を築き上げ、そこで暮らすと言われる一族、それが竜人族だ。
神話やおとぎ話にはその名を出すことがあるが、誰もその姿を見たことがない。
故に、竜人族は空想上の産物だと思われてきた。
15年後に、カイトが世界最難易度の迷宮を攻略し、自身の種族を公表するまでは。
「俺は『透視の魔眼』を持つからな。お前の肩に刻まれた竜人族の紋章が、文字通り透けて見えるんだよ」
もちろん嘘だ。俺は魔眼など持ち合わせていない。
「そうか……いや、そんなことは良いんだ。俺の種族なんて、この際どうだっていい」
「ほぉ? 俺に何か用がありそうだな」
カイトが次に放つ言葉は、手に取るようにわかる。
正史では数か月ほど後だが、今回と同じような形で声をかけられたからな。
「お前……1人でサムライル迷宮を踏破したんだろ?」
「あぁ、そうだが?」
「腰に携えた剣、見事な得物だな……。お前の強さも、きっと……想像を絶するのだろうな」
「さっさと結論から話したらどうだ? 俺は急いでいるんだ」
「済まない、強者を見たら褒めてしまう癖があるんだ」
カイトはキリッと、俺を見つめてくる。
それは俺を追放した時のような冷酷なモノではなく、とても勇ましく覚悟を感じさせられるモノだった。
「単刀直入だが──俺の仲間になってくれ」
「断る」
間髪入れずに、俺はカイトの招待を断った。
「な、何故だ!! 確かに今の俺は弱い。だが……いずれ最強を目指している!!」
「だからどうした? お前が最強に至れる保証なんて、どこにもないだろう」
あぁ、よく知っているさ。
カイト、お前は世界最強の冒険者になる。
俺はそのことを、誰よりもよく知っている。
「そ、それはそうだが……、お前の力が必要なんだ!!」
「俺はお前の力なんて、必要とはしていない」
「頼む!! お前は強い!! お前と一緒なら、俺は更なる高みへと至れるんだ」
「……『お前は強い』か」
追放されたときは、『お前は弱い』と言われたんだがな。
あの日のたった5年前で、こうも評価が一変するとはな。
改めて思うが……カイトの言うことなんて、何も信じられないな。
「……どうしても、俺とは組みたくないのか?」
「あぁ。俺はお前に恨みがあるからな」
「恨み……だと? 俺がいったい何をしたっていうんだ? 俺とお前は、初対面だろう?」
「俺は……未来で追放されたからな」
「…………………は?」
まぁ、その反応が妥当だろう。
俺も初対面の相手から、未来の話をされたら同じ反応をすると思う。
「それは……どういうことだ?」
「これ以上、俺に話しかけるな。お前を見ていると……殺したくなるからな」
そう言って、俺はその場を去ろうとする。
だが……カイトは俺の袖を掴み、俺の進行を止めてきた。
「……まだ何か用か?」
「……どうしても、お前のことが諦められない。お前の強さがあれば、俺はもっと高みに行けるんだ!!」
「……相変わらず、自分勝手な男だな。俺はお前の顔なんて、二度と見たくないのに」
「どうしてそこまで嫌うのかはわからないが……1つ頼みがある」
「……はぁ」
カイトは俺の袖から手を離し、少し離れて剣を抜いてきた。
……はぁ、こいつが次に発する言葉が手に取るようにわかる。
「どうか手合わせ願う。俺が勝てば……俺の仲間になってくれ」
「……呆れるほどに自己中心的だな」
俺の都合も考えずに、こうも自分の都合ばかり押し付けられるなんてな。
……どうして以前の俺は、こんな自己中男の仲間になったのだろうか。
……今となっては思い出せない。
「……わかった。いいぞ」
「本当か!? 感謝する!!」
「……そうしなければ、お前は地獄の果てまで付きまとってくるだろ」
カイトは快活に見えて、実はネトッとしつこい性格だ。
自分の目的を果たすためなら、どんな手段にも手を染める。
……そんな男だからこそ、世界最難易度の迷宮、『フォルテ迷宮』を攻略できたのだろうか。
「さぁ、かかってこい」
俺も吸血魔剣を抜き、構えた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……? キミは体格からして、魔法師じゃないのか?」
「察しの通り、俺は魔法師だ。だが、未熟なお前を相手に魔法で戦っては、フェアじゃないだろう? だから不得手な剣技で相手をしてやるのさ」
「つまり……俺を舐めているんだな……?」
「ハンデを付けてやっているんだ。感謝しろよ」
カイトの額に青筋が立っている。
イライラしているのが、見て取れるな。
「確かに……剣技は不得手らしいな。随分不格好な構え方だ」
「……見る目がないな」
剣を極力低く構え、脚を前後に大股に開く。
確かにこの時代の人間には、この構えは不格好に見えるだろう。
不格好な構え方だとカイトは評したが、俺のこの構えは未来において最もスタンダードな剣の構え方である。
今から200年後、とある剣聖が生み出したこの構えは『シンエイ流剣術』として、広く浸透する。
格好こそ不格好だが、対魔物・対魔法・対武器術、あらゆる局面で有利に動く最強の剣術なのだ。
「あまり俺をバカにするなよ!! 【爆炎剣】!!」
カイトは怒りを叫びながら、剣を振り抜いてきた。
その剣はメラメラと深紅の炎に包まれており、斬られてしまったら大ヤケドは避けられないだろう。
……そんな危険な剣技を、仲間にしたい人に翳すなよ。
「【骨折剣】」
だが、カイトの剣技は俺には届かない。
悠々と斬撃を回避し、反撃を放つ。
今の俺が唯一使用可能な、剣技を。
「ぐ、がぁッッッ!!」
俺の剣はカイトの左腕に命中。
ボキッと軽快な音が響き、次の瞬間にはカイトはその場に蹲った。
「な、何だ……その剣技は……!? 俺にいったい、何をした!?」
「自分の左腕を見ればわかるだろう。お前の左腕をへし折ったんだ」
「へし折った……だと!? 俺は竜人族だぞ!! 人間如きの剣技で、へし折れるほど軟弱な骨はしていない!!」
「現実を受け入れろ。竜人族であるお前の骨は、脆弱な魔法師の剣技でへし折れたんだ」
「そんな……あり得ない……」
カイトの言うとおり、通常ならばあり得ない話だ。
竜人族は人間よりも圧倒的に頑丈な肉体を有している。
皮膚はドラゴンのウロコの強度に匹敵し、筋肉の密度は人間の数千~数万倍以上。
それらを支える骨も当然ながら頑強で、アダマントやオリハルコンと並んで世界有数の硬度を誇る。
「俺が放った【骨折剣】、これは骨を折ることに特化した剣技だ」
「な、なんだと……? そんな剣技、聞いたことがない……。そ、それに……如何に骨を折ることに特化しているといっても、竜人族の俺の骨を折るなんて……あり得ない!!」
「【骨折剣】はそれが”骨”であれば、必ず折ることが可能だ。どれだけ頑強であっても、どれほどの硬度を有していようとも、【骨折剣】は必ずへし折る」
「そんな……そんな剣技、聞いたことがない!! 剣技に精通した俺が知らないんだから、そんな剣技はあり得ない!! デタラメなことを言うな!! 何か特別な……そうだ!! 魔法を使ったんだろ!!」
「……はぁ、哀れな生き物だな」
自分の無知を恥じることもできず、自分の知識のみを信仰するなんて。
相手を糾弾し、自分の正当性を高めようとする姿は……あまりにも醜い。
俺がかつて慕っていた男は、ここまで情けない男だったのか。
「魔法を使わないと言ったのに!! この卑怯者──」
「──《最上級の獄炎》」
カイトに謗られる前に、魔法を発動する。
地面を融かし、空気を燃やす業火が、カイトの身体を焼く。
「……! ……ウ……!!」
炎の中心で何かを発しようとしているが、あまりの熱でそれも難しい様子。
だが、口の動きで何を伝えたいのかは理解できる。
おそらく……『ウソ吐き』と言っているのだろう。
「賢者が魔法を使って、何が悪いんだ」
このままカイトを焼き殺すのは、少々勿体ない。
カイトには今後、凄惨な人生を歩んでほしいからな。
「……ふんッ」
俺は魔法を掻き消す。
炎が消えると、そこには黒焦げになったカイトの姿が。
ピクピクと痙攣しているところから察するに、まだ生きている様子だ。
最上級魔法を食らっておいて……頑丈なヤツだな。
「じゃあな。また会おう」
今度こそ、俺は踵を返した。
煮えたぎるような殺意を押し殺して。
必ず、俺が最初に最難易度の迷宮を攻略して見せる。
必ず、栄光を手にして見せる。
必ず、世界最強になって見せる。
必ず、招待に失敗したことを後悔して見せる。
カイトの顔を見たことで、俺の中の焔がさらに燃え上がった。
俺は絶対に完遂する。絶対に。
辺りはすでに真っ暗になっている。
そうか、卒業式を終えてすぐにこの迷宮へとやってきたが、そんなに時間が経っていたのか。
全盛期であればこんな迷宮、十数秒で踏破できたというのに……若返ったことにより、ここまで弱体化してしまったのか。
本当はもう1つ行きたい迷宮があったのだが……今日はもうやめておこう。
今日のところはおとなしく、帰るとしようか。
悲しいが、仕方のないこと──
「ま、待ってくれ!!」
「? ……あ」
トボトボ帰途に至る俺に声をかけたのは、見覚えのある青年だ。
少し長い茶色い髪を、後ろに束ねている。
輝くような金色の瞳、整った顔立ち。
俺よりも少しだけ背が高く、175センチはあるだろう背丈。
腰にはロングソード、服装は革鎧だ。
現時点において、俺と彼は面識がない。
だが……俺は彼を知っている。
憎々しいほどに、彼のことを恨んでいる。
そう、彼の名は──
「……カイト・クラジオンだな」
「え、どうして俺の名前を知っているんだ?」
カイト・クラジオン、彼こそが俺をパーティから追放した張本人だ。
正史では5年後に俺を追放し、代わりにテノールを迎え入れた。
そして……俺に無様な人生を送らせたのだ。
こいつがいなければ、俺は……華のある人生を送れたのに!!
彼らと共に世界最難易度の迷宮を攻略し、彼らと共に栄光を掴めたのに!!
それなのに……俺だけが!! 悔しい思いをした!!
……思い出すと沸騰してしまいそうなほどに、苛立ちが募ってしまう。
「そりゃあ知っているさ。なんたって、竜人族が冒険者登録してくるなんて前代未聞なんだからな」
「な、何故それを!?」
竜人族、それは今から15年後までは伝説上の種族とされてきた種族だ。
遥か天空に都市を築き上げ、そこで暮らすと言われる一族、それが竜人族だ。
神話やおとぎ話にはその名を出すことがあるが、誰もその姿を見たことがない。
故に、竜人族は空想上の産物だと思われてきた。
15年後に、カイトが世界最難易度の迷宮を攻略し、自身の種族を公表するまでは。
「俺は『透視の魔眼』を持つからな。お前の肩に刻まれた竜人族の紋章が、文字通り透けて見えるんだよ」
もちろん嘘だ。俺は魔眼など持ち合わせていない。
「そうか……いや、そんなことは良いんだ。俺の種族なんて、この際どうだっていい」
「ほぉ? 俺に何か用がありそうだな」
カイトが次に放つ言葉は、手に取るようにわかる。
正史では数か月ほど後だが、今回と同じような形で声をかけられたからな。
「お前……1人でサムライル迷宮を踏破したんだろ?」
「あぁ、そうだが?」
「腰に携えた剣、見事な得物だな……。お前の強さも、きっと……想像を絶するのだろうな」
「さっさと結論から話したらどうだ? 俺は急いでいるんだ」
「済まない、強者を見たら褒めてしまう癖があるんだ」
カイトはキリッと、俺を見つめてくる。
それは俺を追放した時のような冷酷なモノではなく、とても勇ましく覚悟を感じさせられるモノだった。
「単刀直入だが──俺の仲間になってくれ」
「断る」
間髪入れずに、俺はカイトの招待を断った。
「な、何故だ!! 確かに今の俺は弱い。だが……いずれ最強を目指している!!」
「だからどうした? お前が最強に至れる保証なんて、どこにもないだろう」
あぁ、よく知っているさ。
カイト、お前は世界最強の冒険者になる。
俺はそのことを、誰よりもよく知っている。
「そ、それはそうだが……、お前の力が必要なんだ!!」
「俺はお前の力なんて、必要とはしていない」
「頼む!! お前は強い!! お前と一緒なら、俺は更なる高みへと至れるんだ」
「……『お前は強い』か」
追放されたときは、『お前は弱い』と言われたんだがな。
あの日のたった5年前で、こうも評価が一変するとはな。
改めて思うが……カイトの言うことなんて、何も信じられないな。
「……どうしても、俺とは組みたくないのか?」
「あぁ。俺はお前に恨みがあるからな」
「恨み……だと? 俺がいったい何をしたっていうんだ? 俺とお前は、初対面だろう?」
「俺は……未来で追放されたからな」
「…………………は?」
まぁ、その反応が妥当だろう。
俺も初対面の相手から、未来の話をされたら同じ反応をすると思う。
「それは……どういうことだ?」
「これ以上、俺に話しかけるな。お前を見ていると……殺したくなるからな」
そう言って、俺はその場を去ろうとする。
だが……カイトは俺の袖を掴み、俺の進行を止めてきた。
「……まだ何か用か?」
「……どうしても、お前のことが諦められない。お前の強さがあれば、俺はもっと高みに行けるんだ!!」
「……相変わらず、自分勝手な男だな。俺はお前の顔なんて、二度と見たくないのに」
「どうしてそこまで嫌うのかはわからないが……1つ頼みがある」
「……はぁ」
カイトは俺の袖から手を離し、少し離れて剣を抜いてきた。
……はぁ、こいつが次に発する言葉が手に取るようにわかる。
「どうか手合わせ願う。俺が勝てば……俺の仲間になってくれ」
「……呆れるほどに自己中心的だな」
俺の都合も考えずに、こうも自分の都合ばかり押し付けられるなんてな。
……どうして以前の俺は、こんな自己中男の仲間になったのだろうか。
……今となっては思い出せない。
「……わかった。いいぞ」
「本当か!? 感謝する!!」
「……そうしなければ、お前は地獄の果てまで付きまとってくるだろ」
カイトは快活に見えて、実はネトッとしつこい性格だ。
自分の目的を果たすためなら、どんな手段にも手を染める。
……そんな男だからこそ、世界最難易度の迷宮、『フォルテ迷宮』を攻略できたのだろうか。
「さぁ、かかってこい」
俺も吸血魔剣を抜き、構えた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……? キミは体格からして、魔法師じゃないのか?」
「察しの通り、俺は魔法師だ。だが、未熟なお前を相手に魔法で戦っては、フェアじゃないだろう? だから不得手な剣技で相手をしてやるのさ」
「つまり……俺を舐めているんだな……?」
「ハンデを付けてやっているんだ。感謝しろよ」
カイトの額に青筋が立っている。
イライラしているのが、見て取れるな。
「確かに……剣技は不得手らしいな。随分不格好な構え方だ」
「……見る目がないな」
剣を極力低く構え、脚を前後に大股に開く。
確かにこの時代の人間には、この構えは不格好に見えるだろう。
不格好な構え方だとカイトは評したが、俺のこの構えは未来において最もスタンダードな剣の構え方である。
今から200年後、とある剣聖が生み出したこの構えは『シンエイ流剣術』として、広く浸透する。
格好こそ不格好だが、対魔物・対魔法・対武器術、あらゆる局面で有利に動く最強の剣術なのだ。
「あまり俺をバカにするなよ!! 【爆炎剣】!!」
カイトは怒りを叫びながら、剣を振り抜いてきた。
その剣はメラメラと深紅の炎に包まれており、斬られてしまったら大ヤケドは避けられないだろう。
……そんな危険な剣技を、仲間にしたい人に翳すなよ。
「【骨折剣】」
だが、カイトの剣技は俺には届かない。
悠々と斬撃を回避し、反撃を放つ。
今の俺が唯一使用可能な、剣技を。
「ぐ、がぁッッッ!!」
俺の剣はカイトの左腕に命中。
ボキッと軽快な音が響き、次の瞬間にはカイトはその場に蹲った。
「な、何だ……その剣技は……!? 俺にいったい、何をした!?」
「自分の左腕を見ればわかるだろう。お前の左腕をへし折ったんだ」
「へし折った……だと!? 俺は竜人族だぞ!! 人間如きの剣技で、へし折れるほど軟弱な骨はしていない!!」
「現実を受け入れろ。竜人族であるお前の骨は、脆弱な魔法師の剣技でへし折れたんだ」
「そんな……あり得ない……」
カイトの言うとおり、通常ならばあり得ない話だ。
竜人族は人間よりも圧倒的に頑丈な肉体を有している。
皮膚はドラゴンのウロコの強度に匹敵し、筋肉の密度は人間の数千~数万倍以上。
それらを支える骨も当然ながら頑強で、アダマントやオリハルコンと並んで世界有数の硬度を誇る。
「俺が放った【骨折剣】、これは骨を折ることに特化した剣技だ」
「な、なんだと……? そんな剣技、聞いたことがない……。そ、それに……如何に骨を折ることに特化しているといっても、竜人族の俺の骨を折るなんて……あり得ない!!」
「【骨折剣】はそれが”骨”であれば、必ず折ることが可能だ。どれだけ頑強であっても、どれほどの硬度を有していようとも、【骨折剣】は必ずへし折る」
「そんな……そんな剣技、聞いたことがない!! 剣技に精通した俺が知らないんだから、そんな剣技はあり得ない!! デタラメなことを言うな!! 何か特別な……そうだ!! 魔法を使ったんだろ!!」
「……はぁ、哀れな生き物だな」
自分の無知を恥じることもできず、自分の知識のみを信仰するなんて。
相手を糾弾し、自分の正当性を高めようとする姿は……あまりにも醜い。
俺がかつて慕っていた男は、ここまで情けない男だったのか。
「魔法を使わないと言ったのに!! この卑怯者──」
「──《最上級の獄炎》」
カイトに謗られる前に、魔法を発動する。
地面を融かし、空気を燃やす業火が、カイトの身体を焼く。
「……! ……ウ……!!」
炎の中心で何かを発しようとしているが、あまりの熱でそれも難しい様子。
だが、口の動きで何を伝えたいのかは理解できる。
おそらく……『ウソ吐き』と言っているのだろう。
「賢者が魔法を使って、何が悪いんだ」
このままカイトを焼き殺すのは、少々勿体ない。
カイトには今後、凄惨な人生を歩んでほしいからな。
「……ふんッ」
俺は魔法を掻き消す。
炎が消えると、そこには黒焦げになったカイトの姿が。
ピクピクと痙攣しているところから察するに、まだ生きている様子だ。
最上級魔法を食らっておいて……頑丈なヤツだな。
「じゃあな。また会おう」
今度こそ、俺は踵を返した。
煮えたぎるような殺意を押し殺して。
必ず、俺が最初に最難易度の迷宮を攻略して見せる。
必ず、栄光を手にして見せる。
必ず、世界最強になって見せる。
必ず、招待に失敗したことを後悔して見せる。
カイトの顔を見たことで、俺の中の焔がさらに燃え上がった。
俺は絶対に完遂する。絶対に。
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