追放賢者のやり直し ~『お前は弱い』と言われてパーティから追放された賢者は過去に戻り、これまでに培った知識を活かして世界最強になる~

志鷹 志紀

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17話 隠しボス

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 トアル迷宮には、『隠しボス』が存在する。
 これが発覚したのは、今から190年後の未来だ。

 隠しボスに出会うためには、いくつか準備が必要だ。
 まず初めに、14層で隠しアイテムの『竜の瞳』を入手する。
 次にカルキノスを一撃で討伐する。
 最期にボス部屋の壁を、最上級魔法で粉砕する。
 以上を行うことで、トアル迷宮の『隠しボス』に通じる通路が開かれるのだ。
 こんな面倒な手順を取る必要があるため、トアル迷宮の『隠しボス』は発見までに190年もの時間がかかったのだ。

「さて、着いたな」

 通路を歩むこと10分。
 ようやく俺たちは、『隠しボス』が潜むボス部屋へとたどり着いた。

「あ、アルガさん……これって……」

「アンタ……正気なの……?」

 目の前で佇むボスに、2人は恐れおののいている。
 俺もこのボスの攻略法を知らなければ、きっと同じ態度を取っていただろう。

「ギジュラァ……」

 その容姿を一言で例えるとするならば、9本の頭を持った大蛇。
 全長はかなり長く、100メートルを超えるだろう。
 漆黒のウロコに覆われた体躯は非常に太く、大木の幹にも負けないほど。
 牙から滴る唾液は地面に落ちた瞬間に、ジュワッと地面を溶かす猛毒。
 合計18個の瞳は深紅に輝いており、俺たちを得物と認識している。

 S級の最上位に君臨する魔物、ヒュドラ。
 これまでに討伐してきた魔物たちとは比べ物にならないほどの、圧倒的な強敵だ。

「ギジャァアアアアア!!」

「さぁ、完全攻略を実施しよう」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「2人とも!! 時計回りに走れ!!」

「え、わ、わかりました!!」

「もう!! ヒュドラと戦うなんて、聞いていないわよ!!」

 ピリカは素直に、ラブリは文句を言いながら、それぞれ俺の指示に従う。
 
「ギジャァアアアアア!!」

 ヒュドラは攻撃を繰り出す。
 だが、不思議なことにヒュドラは、俺たちが先ほどまでいた場所・・・・・・・・・に攻撃をしている。
 当然ながら俺たちは時計回りに走っているため、ヒュドラの攻撃は食らわない。

「ピリカ!! 尾の先端を切り裂け!!」

「わ、わかりました!!」

 ピリカに指示を出し、俺はその間に頭の付近に移動する。
 ピリカはすぐに行動を実施し、ヒュドラの尾に攻撃を実施した。

「行きます!! 【|蛇王斬じゃおうざん】!!」

「ギジュァアアアアア!!」

 その巨躯からすると微々たるダメージのハズなのに、ヒュドラは大きく怯む。
 そして地面に垂れ込んだ。いわゆる、ダウンを取れたのだ。

「俺も行くぞ!! 【|蛇王斬じゃおうざん】!!」

 首の1本を|蛇王斬じゃおうざんで切断する。
 ドクドクと垂れ流れる紫色の血、その一部が返り血として身体に付着してしまう。
 ヒュドラは唾液だけではなく、血液にも強力な毒を持つ。
 このままでは、ものの10秒も経てば死んでしまうだろう。
 事実、全身を激痛が走っている。

「ピリカは右から見て3本目の首を切断しろ!! ラブリは俺たちに解毒魔法を施せ!!」

「は、はい!!」

「なんでそんな具体的なのよ……。後で説明してもらうわよ!!」

 キラキラとした光が俺を包み込み、身体を襲う激痛が晴れていく。
 ラブリが解毒魔法を施してくれたのか。文句は多いが、仕事は早いな。
 
「【|蛇王斬じゃおうざん】!!」

 ふと目を見やると、ピリカがヒュドラの首を切断していた。
 彼女も同様に、仕事が早くて的確だ。

「アルガさん!! 次はどうすればいいですか!!」

「左から2本目の首を切断だ!!」

 指示を送り、俺は魔法の準備を整える。
 狙いは、切断された首の断面。

「《上級の火炎弾ボルケーノ・フレイム》」

 轟々と燃え盛る焔が、ヒュドラの傷口を焼く。
 ヒュドラは極めて高い回復能力を持つため、傷口を焼かなければ瞬く間に再生してしまうのだ。
 
「ギジャァアアアアア!!」

 ダウンから復活したヒュドラが、その身体を起き上がらせようとする。
 だが── 

「【|蛇王斬じゃおうざん】!!」

「【|蛇王斬じゃおうざん】!!」

「ギジュァアアアアア!!」

 俺とピリカ、2人の斬撃がヒュドラの首を落とす。
 それに伴い、ヒュドラはまたしてもダウンしてしまった。

「ピリカ!! 右から4番目、左から6番目、一番右端、一番左端、この順番で首を斬ってくれ!!」

「はい!!」

 俺の指示に従い、ピリカはバタバタと首を切断していく。
 そして同様に、俺も首を焼いていく。

「アルガさん!! 最後の首はどうしますか!!」

「最後の首は不死身の首だ!! 切り落としても焼いても、再生してくる!!」

「だったら、どうしようもないじゃない!! こんなところで詰むの!!??」

「切断攻撃が通じないだけだ!!」

 俺は魔法を展開する。

「《最上級の光束輪ホーリー・リング》」

 俺は掌から光の輪を出現させ、ヒュドラの首元まで移動させる。
 そしてそのまま輪を小さくし、ヒュドラの首を絞め上げる。
 元々は拘束用の魔法なのだが使い方次第では、このようにくびりり殺すことも可能なのだ。

「ギジュ……」

 如何に切断に強いメタを有していても、首を絞められれば死んでしまう。
 どれだけ強い魔物であっても、それは変わらないのだ。

「ギ……」

 ヒュドラはバタッと地に伏せ、灰へと化した。
 つまり──

「わ、わたしたち……勝ったんですね……!!」

「完全勝利……というわけね」

 俺たちは勝利した。
 本来であれば遥か格上の相手に。
 完全勝利を収めたのだ。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「で、アルガ。説明しなさいよ」
 
「そうですよ!! どうして、あんなに的確に指示を出せたんですか?」

 勝利の余韻に浸る暇も与えてくれずに、2人に質問攻めにされる。
 まぁ、逆の立場だったならば、俺も同じようにしたハズだ。
 誤魔化しても……、問い詰められるだろう。
 だったら、今のうちに説明しておこう。

「2人は魔物の行動には2種類存在することを知っているか?」

「2種類……?」

「何よそれ、初耳ね」

 だろうな、これが発見されるのは100年後の話だからな。

「簡単に説明すると、『人間のように、自分で思考して行動する魔物』と『決められた行動しか取らない魔物』の2種類が存在するんだ」

「決められた行動……? ゴーレムとかならわかるけれど、普通の魔物もそんな行動を取るっていうの?」

「あぁ、その通りだ」

にわかかには信じられませんね……」

 まぁ、だろうな。
 俺も最初にこの話を聞いた時、そんなバカな話があるかと鼻で笑ったくらいだからな。
 現代人である2人が信じられなくても、不思議ではない。

「2人も見たことはないか? 同じ場所を行ったり来たりする魔物を」

「あぁ……、確かにあるわね」

「通路を行ったり来たりする、邪魔なゴブリンなどに遭遇したことはありますね」

「そういう魔物のことを指しているんだ。魔物の中には、まるでゴーレムのように事前に決められた行動しか取れないヤツがいる」

「信じがたいけれど……、魔物の研究は全然進んでいないから、あり得ない話ではないかもしれないわね」

「……でも、その決められた行動っていうのは、いったい誰が決めているんですか?」

「さぁ? そこまではわかっていない」
 
 もちろん、ウソだ。
 俺の生きた時代では、既にその犯人も判明している。
 話がややこしくなるから、適当にはぐらかしただけだ。

「で、今回のヒュドラもそうだったというわけだ。俺はこのヒュドラの行動を全て熟知していたから、適切な判断が取れただけの話だ」

「なるほど……ツッコミどころは満載だけど、今はやめておくわ」

「そうですね……もう、慣れました」

 何故か呆れた様子の2人。
 うーん、最近こういうの多いな。

「とりあえず、ボスドロップを確認しよう」

 宝箱を確認する。
 そこには──

「漆黒の鎧……ですか?」

「ヒュドラのウロコで編まれているわね」

「おぉ、大当たりだ」

 この鎧の名前は、『ヒュドラスケイル・アーマー』。
 今回の戦いでは披露できなかったが、本来ヒュドラのウロコは極めて優秀だ。
 魔法に大きな耐性があり、衝撃にも強い。
 並の攻撃であれば、ビクともしないのだ。

 これはそんなウロコで編まれた鎧なので、当然ながら強力だ。
 今の俺たちは革の鎧という、最弱に等しい鎧を装備している。
 この鎧を身に付ければ、戦力は大幅にアップするだろう。

「ピリカ、お前が身に付けろ」

「え、でも……いいんですか? アルガさんがいなければ、討伐できなかったんですよ?」

「本来は賢者であり後衛の俺が装備するよりも、前衛のピリカが装備した方がいいだろう」

「私もそう思うわ。この鎧はピリカが身に着けてこそ、意味があるのよ」

「……わかりました」

 ピリカは早速鎧を身に着ける。
 不思議と鎧はピリカの身体にピッタリ合った。

「似合っているじゃないか。かわいいぞ」

「か、かわ……!!」

 ピリカの頭を撫でる。
 フワフワの耳が心地よい。

「ハァ、イチャついてないでさっさと帰るわよ」

「あぁ、そうだな」

「あ……ハァ……」

 何故かションボリしているピリカ。
 なんだ、どうかしたのだろうか。

「どうした、ピリカ」

「……なんでもありません」

「……呆れるくらい鈍感ね」

「……?」

 何故罵られたのかさっぱりわからないまま、俺たちは帰還した。
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