追放賢者のやり直し ~『お前は弱い』と言われてパーティから追放された賢者は過去に戻り、これまでに培った知識を活かして世界最強になる~

志鷹 志紀

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16話 トアル迷宮 2/2【ラブリ視点】

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 その後、私たちは19層へと降り立ったわ。
 
「【獣狩けものがりやいば】!!」

「《上級の光輝フォトン・ライト》《上級の光刃フォトン・ギロチン》《上級の光線フォトン・レイ》」

 襲い掛かる魔物たちが、次々に死んでいくわ。
 岩でできたオオカミ、ロックウルフは細切れに。
 怪力を誇るクマ、グレイトベアは融かされ。
 防御力に定評のあるカメ、アイアンタートルは両断。
 幻影魔法が強力なゴースト、イリュージョンゴーストは光線の餌食に。

 襲ってきた魔物も、決して弱くないわ。
 そのどれもが、最低でもA級以上。
 イリュージョンゴーストに至っては、下位とはいえS級に分類される魔物よ。

 そんな強敵たちを……ピリカは手こずる様子も見せずに、両断。
 アルガに至っては、魔法の質が下がってしまう多連詠唱シークェルを使用して圧倒。
 正直……2人とも規格外すぎるわよ。
 こんな芸当、今のトップクラスの冒険者たちでもできるかわからないわ。

「アンタたちを見ていると……落ち込むわね」

 自分の才能の無さが、露呈しているようだわ。
 私は腐っても元聖女だから、一般的な回復魔法師よりは才能があるハズだけど……この2人を見ていると、もしかすると自分は凡人なんじゃないかって錯覚するわね。

 アルガは元々規格外だから、わかるのよ。
 問題はピリカよ。獣人だから身体能力に長けているのは知っているけれど、それでも……常識を遥かに凌駕しているわ。
 アルガから渡された療法を用いて身体能力が10倍になったらしいけれど、それを加えても……異常なほどに強いわ。
 ……2人とも規格外にもほどがあるわね。

「ラブリ、少し被弾した。回復魔法を頼む」

「はいはい、わかったわよ。《全体完全回復魔術パーフェクト・ヒール》」

 燦然さんぜんと輝く光が、2人を包み込むわ。
 
「ほら、これで完治……って、何よその眼」
 
 光が去った後に、2人は不思議そうな眼で私を見つめていたわ。
 何よ、何か言いたいのかしら?

「いや……、ラブリって……天才だなと思ってな」

「は、はぁ? 何よ、それ。皮肉のつもり?」

「……わたしもそう思いますよ」

「ピリカまで……。何よ、本当の天才にそんなことを言われても、嬉しくなんかないんだからね!!」

 もちろん嘘よ。
 天才と褒められて喜ばない人間なんて、この世界に存在しないわ。
 だけど……どうして、急にそんなことを言ってきたのかしら?

「ピリカ、《全体完全回復魔術パーフェクト・ヒール》って一部の回復魔法師しか使えないって知っているよな?」

「えぇ、そうね。でも、私は元聖女よ? このくらいできて、当然だわ」

「……俺の知る限り、《全体完全回復魔術パーフェクト・ヒール》を使える聖女は一握りのハズだぞ」

「ウソよ、私よりも才能のある妹だってできたのよ?」

「……その妹、本当にできるのか? その目で、実際に見たのか?」

「……何が言いたいわけ?」

「……ラブリの妹、ウソを吐いているんじゃないか?」

 アルガは真剣な眼差しで、私を見つめてくるわ。
 侮蔑は一切含まれておらず、純粋に心配な感情を宿して。

「……ウソって、何を言っているの?」

「聖女になるためには最低限、《全体完全回復魔術パーフェクト・ヒール》を習得する必要があるんだろ?」

「えぇ、よく知っているわね」

「だが……これは俺の予想だが、将来的に……お前の妹の次の代から、《全体完全回復魔術パーフェクト・ヒール》ではなく《完全回復魔術マスター・ヒール》が聖女になるための条件になるんじゃないかと思ってな」

「……? どういう意味?」

「だから、つまり……お前の妹は”聖女”という座に就きたくて、《完全回復魔術マスター・ヒール》までしか使えないのに《全体完全回復魔術パーフェクト・ヒール》を習得したとウソを吐いたんじゃないかと思ってな」

 そんな訳ない! と、反発することは……できないわ。
 確かに妹が《全体完全回復魔術パーフェクト・ヒール》を使用している状況なんて、見たことがないわ。
 それに妹は王家と癒着していて、第一王子の婚約者だった。
 王家の権力があれば、私を引きずりおろして妹を聖女にすることくらい、容易いでしょうね。

「……仮にそうだとしても、感謝するわね」

「どうしてだ?」

「私は堅苦しい”聖女”なんかじゃなくて、今のような自由な”冒険者”になりたかったの。むしろ私を捨ててくれて、ありがとうと伝えたいわ」

「……そうか、とにかくお前はスゴいヤツだ。もっと自信を持つんだ」

 私が珍しく本心を伝えると、アルガは私を撫でてきたわ。
 もう! 仲間になってから事あるごとに撫でてくるわね!!
 突っぱねたいけれど……いいえ、突っぱねたくないわね。
 言葉では反発しても、心は……素直でいたいわ。

 私はアルガに撫でられることが……心地よいと思っているわ。

「もう!! 気やすく触らないでよね!!」

 それにしても……アルガの言葉、気になるわね。
 『俺の予想だが、将来的に』って、それ……未来からやってきたって暗に言っているようなものじゃない。
 ……本当に、何者なのかしら。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 その後、私たちは最終層にやってきたわ。

「グポォオオオオ!!!!」

 トアル迷宮のボスは、巨大なカニだったわ。
 全長10メートルはあるであろう、巨大な体躯。
 2つのハサミは目測で7メートルはあって、挟まれたら逃げ出すことは不可能ね。
 真っ赤な甲殻は見るからに堅牢で、どんな攻撃も通じなさそう。
 10本の脚はどれも鋭利で、足元にいるだけで串刺しになってしまうわ。

 このカニの名前はカルキノス。
 確かS級に分類される、強力な魔物よ。

「うるさいな、《最上級の獄炎グレイト・インフェルノ》」

「グポォオオ……」

 強力な魔物……のハズだったんだけどね。
 アルガの放った炎魔法によって、カルキノスはこんがり焼かれてしまったわ。
 ボス部屋に漂うのは、おいしそうな匂い。
 ……ボス魔物だけど、同情するわ。

「えぇええええええええええ!! あ、アンタ……規格外すぎるわよ!! ボス魔物を一撃で倒すって、聞いたことないわ!!」

「ラブリさん……いずれ慣れますよ」

 私の肩をポンッと叩くピリカの表情は、全て諦めた風のもの。
 あぁ、なるほど。慣れてしまったのね。

「2人とも、まだ終わっていないぞ」

「え?」

「終わっていないって、さっきアンタが焼き尽くしたじゃない。帰還ゲートも出現したわよ?」

 私たちの言葉には耳を貸さず、アルガは魔法を展開したわ。
 そして──

「《最上級の鋼砲グレイト・キャノン》」

 巨大な鉄球を出現させて、壁にぶつけたわ。
 というか、そんなにポンポン最上級魔法を発動するって……。
 あまりにも自然すぎるからスルーしていたけれど、普通に考えたら異常よね。

「……え?」

「え、ウソ……」

 砂埃が晴れて、そこにあったのは──通路。
 この先に何かがあるかのような、意味深な通路よ。

「さぁ、冒険を続けよう」

 アルガはそう言って、通路を歩んでいったわ。
 
「……あ、待ちなさいよ!!」

「ま、待ってください!!」

 私たちは深く考えず、アルガの後を追っかけたわ。
 ……冷静に考えると、異常よね。
 こんな隠し通路を知っているアルガも、そんなアルガを信じて後を追う私たちも。

 ……いつか必ず、アルガの正体を暴いて見せるわ。
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