花仕舞師

RISING SUN

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第二章──義(ただしさ)の誓い、過去の刑吏

24話

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 線香花火に火が灯されるとお互いの番人が顔を現す。仇花灯ノ籠ノ番人花左手あだばなともしのかごめのばんにんゆんで花灯ノ籠ノ番人右手はなともしのかごめのばんにんめて。互いとも主の線香花火を受け取る。静が舞い、清が舞う。静が舞えば清の線香花火の灯火を消すように風が舞い、それを右手めてが左手を添え護る。その逆もしかり、清の舞の風に晒される瞬間、左手ゆんでが火を護る。お互いが譲らない。かすかに開く目で灰塊は二人の舞を目で追う。
「嗚呼……『ただしさ』が舞い……『かたより』が舞う……この身の果てに、かくも見届け得ようとは……あと少し……あと一刻……わずかでも届きそうな……ならば、かの想い誰に預けようか ──預けるはただ一人……」

 カキーン──

 灰塊は最期の魂打たまうつ一槌──。
「願わくばこの想い、の者に届けぇ──!」

 その瞬間、火がかすかに揺らぎ、灰塊の瞳が刹那、見開いた。しかし……霞んでいく。灰塊の真実は今、風前の灯火。
 花化従が舞い、花天照が舞う。お互いの主の想いを代弁するかのように……。お互いの花枝の五つの蕾を開く。
 
 ──ただしさに反するはかたより……ひとばしら、傾けし道に、道理なし。歪みゆく空、我が心の如し──

 花現身はなうつしみを唱える静。

 ──そのただしさは、歪みなき刃のように、己を裂いて花咲かせる──

 負けじと花告はなつげを告げる。

 お互いの舞の始まりを告げると仇花枝弐の花傀儡、花雫はなしずくと花枝弐花護人、花水鏡はなみかがみが姿を現す。花雫が自らの雨粒の滴る涙雨なみだあめの衣の袖を振れば、花水鏡が静かに澄んだ水面のような水鏡の衣の袖を振り返す。信念が交わり互いが譲らない。
 ぬるっと灰塊の影に寄り添う仇花枝参、花徒影はなとかげ蒼鱗そうりんの衣の袖を振り、灰塊の欲を引き出し、花枝参、花翅はなばね翅衣揚羽はねごろもあげはの背から生える翅を羽ばたかせ、欲を引き剥がそうとする。まるでお互いの舞が灰塊の迷いを代弁しているかの如く。お互いの蕾が開き、花傀儡と花護人がそれぞれ自らの役割を全うする。仇花枝肆、喪色もしきの衣を纏う反花そりばなが灰塊の『ただしき』を『偏』に変えようと、背を向けたまま背徳を煽る舞を披露する。
「させませぬ──」
「灰塊さまの『義』の心、われらが護り申す」
 花枝肆の花根孖はなねしの翡翠の目、根音と藤色の目、根子が必死に舞う。
「お主……たちが……この拙者を護ると申すか……拙者の『義』を信ずると……? そうか、ならば、拙者が信じるは……『義』の心なり……」
 声が掠れながら灰塊が目を閉じる。
 仇花枝伍の花焔はなほむらがそれでも灰塊の『偏』に火を灯そうと化焔かえんの衣の袖を振り舞えば、花枝伍の花霧はなぎりが灰塊が迷わぬように霧霞きりがすみの衣の袖を振り、導く舞を司る。刹那の迷いが現れては消え、消えては現れる。
 そして互いの殿しんがり、仇花枝陸、花墨はなずみが漆黒の蕾が花開き、灰塊の迷いを固めるが如く無明幽墨織むみょうゆうぼくおりの袖を振り舞で閉じようとするが、優雅ゆうげの花冠をかぶる花枝陸、花誓はなうけが灰塊の義の記録を書した花契筆ノ詞綴はなちぎりふでのことばつづりを掲げ舞う。巫女姿ゆえ、白紲神環ノ衣しらつなぎかむわのころもを羽織る花誓の舞は一線なす御神楽の如く。
 お互いの舞に引き裂かれるように揺れ動く灰塊は花契筆ノ詞綴を掴んだ。
「届け──花文!」
 清が想いを直接、灰塊の感情に届けた。
 しかし、その前に花化従が灰塊を抱き抱え、自らの面を灰塊の顔に被せようとしている。花化従の美しさを見せつけながら、最期の言葉を告げる。
「さぁ……お逝きなさい……迷いに抗うことなく……」
「遅うござったか……?」
 清は面をかぶせられる灰塊を目の当たりにする。
「また……姉さまに……私の舞は届かない……」
 それでも最後まで舞うのが宿命。しかし、すべてが一歩先をいく仇花霊々の舞──。

 ──ただしさを棄て、我が道を征く。歪みに咲くは、偏の華。狂いし咲き様こそ、我が償い──

「此にて花尽はなついえ──」
 先に舞の終わりを告げる静。そして遅れること……清が花結はなむすびを告げる。

 ──ただしさの名のもとに散るは誇りか、それとも悔いか。裂かれた心に、なおも灯るは、ただ一輪の義──
 
「此にて締結、花結──」
 清が花結を告げ舞を終わらせた。

 お互いの線香花火が火溜まりの雫を落とす。雫の灯りがほろりと消えた時、灰塊の命の終わりを告げた。
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