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第二章──義(ただしさ)の誓い、過去の刑吏
23話
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「くっ……何故ここに花化従が……まさか、また妨げに参られたか……?」
清が睨み付ける。
「あらあら……それはまた酷い言いようでありんすねぇ……邪魔とは。助けに来たのでありんすよ……なにせ、でき損ないが愚かなる『義』を語りおるものゆえ……我が主が、みかねて、でありんす……くくくっ……」
花化従は手にもつ扇子を口に添え嫌みな笑い声を響かせる。
「まさか……まことに、まさか……そなた、灰塊殿を仕舞うつもりか……!?」
清が慌てて灰塊の盾になり守ろうとする。
「はいぃ? これだから、でき損ないは質が悪いのでありんすねぇ……舞師たる者、花紋様を得た者を仕舞うこそが役目……それを果たす気すらなきとは、嘆かわしい……」
花化従は嘲笑する。
「これが、静さまのまことの妹とは……静さまがあまりにも不憫でありんす……」
清は煽られ我を忘れて叫ぶ……。
「あゝ……如何に……そこに潜むか……陰に隠れず、いざ姿を現せ……この一族を穢す穢れよ……舞師に憑きし物の怪め……!」
ヒトヒト──ヒトヒト──
静かなる足音が霧から聞こえる。
「戯れ言は済み申したか……? 無駄口叩く暇あらば、さっさと済ませれば良いものを……御覧じろ……でき損ないが語ったがゆえ、あの者は既に虫の息にて候……」
「虫の息とな……!?」
清は慌てて振り向く。左手の紋様が赤く血の色に染まり今にも消えてしまいそうな息をしながら倒れている灰塊の姿があった。
「灰塊殿……灰塊殿……!」
灰塊は埃を掴み苦しみながら清の裾を掴む。
「拙者は……どうやら、これまでの命にて候……。されど未だ『義』は悟れず……あやつの言葉のごとく、拙者は……拙者は……『偏』の中に生きて参ったのかもしれぬ……ただ……その想いを抱いたまま逝くことは……手にかけた者らに、あまりにも忍びなきこと……。もし、拙者があと一刻ばかり命を繋げば……『義』とは何か、その答えに辿り着けたやもしれぬに……拙者は……まことに……『義』を……知りとうござった……」
灰塊の瞳に光が失いかけている。しかし、そのかすかに動く手に石鑿と金槌を持ち彫り出す。
「ならば、届かずとも……これを残したく存ずる……もし、もし叶わば……」
キンッ……キンッ……
鑿が石に食い込み、力なき力で打ち続ける灰塊。
キンッ、キンッ……キンッ……
「花化従よ……あの哀れな者のため、手向けの舞を……舞おうぞ」
霧の闇から浮き出る白い面が花化従に促す。
「心得ておりんす」
花化従が花傘を広げ、花断の面をつける。
「いざ、仇花霊々の舞にて候。花傀儡筆頭、花化従、此れに──」
静が舞おうと宣言する。その時──
「いざ、花霊々の舞にて候。花護人筆頭、花天照此れに──」
まるで霧を払い光が全体を照らす。花天照が清の頭上に降臨する。花化従が静の線香花火に息を吹き掛け火を灯すと、花天照も清の線香花火に息吹をかけ火を灯す。
対極する舞が激突する──。それは『義』を証明するため、『偏』を知らしめるため……。
清が睨み付ける。
「あらあら……それはまた酷い言いようでありんすねぇ……邪魔とは。助けに来たのでありんすよ……なにせ、でき損ないが愚かなる『義』を語りおるものゆえ……我が主が、みかねて、でありんす……くくくっ……」
花化従は手にもつ扇子を口に添え嫌みな笑い声を響かせる。
「まさか……まことに、まさか……そなた、灰塊殿を仕舞うつもりか……!?」
清が慌てて灰塊の盾になり守ろうとする。
「はいぃ? これだから、でき損ないは質が悪いのでありんすねぇ……舞師たる者、花紋様を得た者を仕舞うこそが役目……それを果たす気すらなきとは、嘆かわしい……」
花化従は嘲笑する。
「これが、静さまのまことの妹とは……静さまがあまりにも不憫でありんす……」
清は煽られ我を忘れて叫ぶ……。
「あゝ……如何に……そこに潜むか……陰に隠れず、いざ姿を現せ……この一族を穢す穢れよ……舞師に憑きし物の怪め……!」
ヒトヒト──ヒトヒト──
静かなる足音が霧から聞こえる。
「戯れ言は済み申したか……? 無駄口叩く暇あらば、さっさと済ませれば良いものを……御覧じろ……でき損ないが語ったがゆえ、あの者は既に虫の息にて候……」
「虫の息とな……!?」
清は慌てて振り向く。左手の紋様が赤く血の色に染まり今にも消えてしまいそうな息をしながら倒れている灰塊の姿があった。
「灰塊殿……灰塊殿……!」
灰塊は埃を掴み苦しみながら清の裾を掴む。
「拙者は……どうやら、これまでの命にて候……。されど未だ『義』は悟れず……あやつの言葉のごとく、拙者は……拙者は……『偏』の中に生きて参ったのかもしれぬ……ただ……その想いを抱いたまま逝くことは……手にかけた者らに、あまりにも忍びなきこと……。もし、拙者があと一刻ばかり命を繋げば……『義』とは何か、その答えに辿り着けたやもしれぬに……拙者は……まことに……『義』を……知りとうござった……」
灰塊の瞳に光が失いかけている。しかし、そのかすかに動く手に石鑿と金槌を持ち彫り出す。
「ならば、届かずとも……これを残したく存ずる……もし、もし叶わば……」
キンッ……キンッ……
鑿が石に食い込み、力なき力で打ち続ける灰塊。
キンッ、キンッ……キンッ……
「花化従よ……あの哀れな者のため、手向けの舞を……舞おうぞ」
霧の闇から浮き出る白い面が花化従に促す。
「心得ておりんす」
花化従が花傘を広げ、花断の面をつける。
「いざ、仇花霊々の舞にて候。花傀儡筆頭、花化従、此れに──」
静が舞おうと宣言する。その時──
「いざ、花霊々の舞にて候。花護人筆頭、花天照此れに──」
まるで霧を払い光が全体を照らす。花天照が清の頭上に降臨する。花化従が静の線香花火に息を吹き掛け火を灯すと、花天照も清の線香花火に息吹をかけ火を灯す。
対極する舞が激突する──。それは『義』を証明するため、『偏』を知らしめるため……。
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