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第四章──智(さとし)の学び舎、深き迷いの医学者
39話
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──一ヶ月前──
零闇を仕舞い、崩壊した本堂。瓦礫に埋もれる清を護ったのは花天照をはじめとする花護人たちだった。身体の屈強な花灯ノ籠ノ番人右手と花天照が翼を広げ、清を庇っていたが、そのほんの隙間から垂木が勢いよく落ちてきたため、無情にも清の胸を貫いていた。
なんとか瓦礫を撤去した花護人たちは清を取り囲み手当てをしている。清の胸を貫いた垂木。
「花天照よ……いかにすべきか……」
根子が焦りの色が滲む。
「私らには如何ともし難く候。これを除く術も存じませぬ……」
花天照さえ、表情が曇る。
「やはり、医術に通じし者に見守らるる他なしと存ずる……」
根音が戸惑いながら口にした、その時……
「なりませぬぞ。清さまの御身をむやみに晒してはならぬ……」
花天照が一喝する。
「清さまの御身を晒せば物の怪にて忌み嫌はれ申す。ゆえに私らがなんとかすべし。さもなくば清さまの夢も露と消ゆるのみ……」
しかし、できることは何もない。時間だけが無情に過ぎる。
「此処は……何処にござるか? はっ……零闇殿は如何に……」
清がゆっくりと目を開け、崩れた本堂をまのあたりにし動こうとする。
「清さま……」
花天照が気付き声をかける。
「清さま、動かれてはなりませぬ! 今は動かぬこと肝要に候」
根子が必死に清を止める。
「零闇殿は清さまの舞にて仕舞われ、『礼』を清さまに託され、安らかに往かれ申した」
根音が清を押さえながら答えた。
「然りと聞けども、なにゆえ動かぬべきや……?」
「それは……」
根音は口ごもる。清は違和感を感じ自らの手を胸にあてると違和感の正体に気づいた。
「これは……なにゆえに……?」
「清さまの舞後、本堂崩れ垂木、御胸を貫き申した。未熟ゆえ私ら清さまを護りきれず……今の私らには如何すべき術もなく候……」
花天照がなんとか答えた。だが清は意外な言葉を発し、笑った。
「何を躊躇うのか。そなたらの手で引き抜くがよろし……」
「何と、清さま……いかに仰せられる……!?」
根子はこの状況下でも笑う清に、それ以上の言葉を失う。
「痛みは感じぬ。今までもそうであった。異様なる傷痕、姉さまに御胸を貫かれても動じず。今回も……されど根音、根子がここに在れば……故に安んずる……」
清は微笑みながら、根音と根子の頭を撫でた。
「承知仕り候、清さま……どうか耐え忍びたまえ……」
花天照は決意の目をする。
「は!? 花天照よ……されど、それにて耐えられ申すや否や……あの御方は……」
根子が我に返り花天照を止めようとする。
「黙り給え!」
花天照は根子を睨みつけた。それは余計なことを口にするなという強い決意。花天照は唇を強く噛んでいる。語ることができれば楽になれる。しかし、それは許されていない。固く、そう固く……。花天照以下、すべての花護人は唇を噛み赤く滲ませていた。
零闇を仕舞い、崩壊した本堂。瓦礫に埋もれる清を護ったのは花天照をはじめとする花護人たちだった。身体の屈強な花灯ノ籠ノ番人右手と花天照が翼を広げ、清を庇っていたが、そのほんの隙間から垂木が勢いよく落ちてきたため、無情にも清の胸を貫いていた。
なんとか瓦礫を撤去した花護人たちは清を取り囲み手当てをしている。清の胸を貫いた垂木。
「花天照よ……いかにすべきか……」
根子が焦りの色が滲む。
「私らには如何ともし難く候。これを除く術も存じませぬ……」
花天照さえ、表情が曇る。
「やはり、医術に通じし者に見守らるる他なしと存ずる……」
根音が戸惑いながら口にした、その時……
「なりませぬぞ。清さまの御身をむやみに晒してはならぬ……」
花天照が一喝する。
「清さまの御身を晒せば物の怪にて忌み嫌はれ申す。ゆえに私らがなんとかすべし。さもなくば清さまの夢も露と消ゆるのみ……」
しかし、できることは何もない。時間だけが無情に過ぎる。
「此処は……何処にござるか? はっ……零闇殿は如何に……」
清がゆっくりと目を開け、崩れた本堂をまのあたりにし動こうとする。
「清さま……」
花天照が気付き声をかける。
「清さま、動かれてはなりませぬ! 今は動かぬこと肝要に候」
根子が必死に清を止める。
「零闇殿は清さまの舞にて仕舞われ、『礼』を清さまに託され、安らかに往かれ申した」
根音が清を押さえながら答えた。
「然りと聞けども、なにゆえ動かぬべきや……?」
「それは……」
根音は口ごもる。清は違和感を感じ自らの手を胸にあてると違和感の正体に気づいた。
「これは……なにゆえに……?」
「清さまの舞後、本堂崩れ垂木、御胸を貫き申した。未熟ゆえ私ら清さまを護りきれず……今の私らには如何すべき術もなく候……」
花天照がなんとか答えた。だが清は意外な言葉を発し、笑った。
「何を躊躇うのか。そなたらの手で引き抜くがよろし……」
「何と、清さま……いかに仰せられる……!?」
根子はこの状況下でも笑う清に、それ以上の言葉を失う。
「痛みは感じぬ。今までもそうであった。異様なる傷痕、姉さまに御胸を貫かれても動じず。今回も……されど根音、根子がここに在れば……故に安んずる……」
清は微笑みながら、根音と根子の頭を撫でた。
「承知仕り候、清さま……どうか耐え忍びたまえ……」
花天照は決意の目をする。
「は!? 花天照よ……されど、それにて耐えられ申すや否や……あの御方は……」
根子が我に返り花天照を止めようとする。
「黙り給え!」
花天照は根子を睨みつけた。それは余計なことを口にするなという強い決意。花天照は唇を強く噛んでいる。語ることができれば楽になれる。しかし、それは許されていない。固く、そう固く……。花天照以下、すべての花護人は唇を噛み赤く滲ませていた。
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