花仕舞師

RISING SUN

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第八章──悌(したしみ)の絆、隠された友情の証

127話

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 漆黒の蕾がひとつ咲くと、雨が降りはじめ、地表に雨粒が弾かれる。それが人の影をなし花傀儡はなくぐつ弐、花雫はなしずくが現れる。青い瞳、青い髪を靡かせ、涙雨なみだの衣を纏い舞はじめると、それに対なすように真白の蕾が咲く。水鏡のような神秘の世界が広がり鏡面の如く。そこから現れるのは花護人はなもりびと弐、花水鏡はなみかがみ。美しく水鏡のような衣。瞳と髪は銀色に輝く。お互いの舞は伝八の心をそれぞれ写し出す。『とらわれ』と『したしみ』。二つの想いに揺れた伝八の心を花雫と花水鏡が舞で表現していく。
 雨が上がり、舞が終わると雲の切れ目から陽が射す。互いの二つ目の蕾が開くと花傀儡参、花徒影はなとかげと花護人参、花翅はなばねの姿。花徒影に陽があたると青く輝く、蒼鱗そうりんの衣、じっとりと濡れたような髪。一面の花園の世界で、花護人花枝参、花翅はなばねは蝶のような翅を羽ばたかせ舞う。伝八の心に纏わりつく『執』に寄り添うように舞う花徒影に対し、それを払うように舞う花翅。一心に鉋で薄皮の木肌を舞わせる伝八に呼応するように互いが舞う。
 第三の蕾が咲く。漆黒の蕾から現れた姿は背を向け、なんとも言えない色の喪色もしきの衣に包まれている。そこに描かれるは花が逆さに咲く模様。型を崩すような舞。花傀儡肆、反花そりばな。異様な舞を描くことで逆撫でにし、感情を露にす。そして真白の蕾からは二人鎖で繋がれた双子の姿。鎖が切れると一人が伝八に寄り添い、一人が影に寄り添い根を大地に根づかせる如く舞う。世界を森林のような世界に導く。花護人、肆花根孖はなねしの翡翠の目の根音と藤色の目の根子。
「この幼子たちも……」
 兵之助が驚く。朱鷺に寄り添い尽くす姿の幼子が舞を力強く舞っている。朱鷺の腹も呼応する。
「宿る稚児ややこも感じてる……あの子たちのおかげ……」
 朱鷺が腹を抱え語りかける。
 伝八の『悌』の心を根付かせるように舞を仕上げていく。
 次の蕾がゆっくりと咲くとあたり一面、焔が揺らぐ。そこはまるで反花が煽った感情に焚き付けるような舞。深紅に染まる化焔かえんの衣、深紅の目。情熱的に見る者の心を煮えたぎらかす舞。花傀儡伍、花焔はなほむら。彼女の舞はそれが人の心と言わんばかりに過激に舞う。真白の蕾からはそれを打ち消すかのように霧に包み一面を白く染め上げる。霧のように姿かたちはあやふやだが人影が浮かぶ。衣装は靄がかかっており、輪郭は姿をはっきりとは映し出さない。花護人伍、花霧はなぎり。溶かすように舞い徐々に晴れ渡る心を表すように姿が浮かぶとそこは真白を表す瞳と衣装。殿しんがりの舞へと渡す橋。最後の舞がすべての終わりを告げるように……。
 最後の蕾が咲く。花傀儡陸、花墨はなずみが登場する。花焔が焼き付くした後のように水墨のような薄い衣の無明幽墨織むみょうゆうぼくおり、薄い黒い目と髪色。すべてが幻のように『執』を纏わせたまま浄化を試みる舞。そして荘厳な社が聳え立つ世界が広がる。そこから花護人陸、花誓はなうけが荘厳な社からゆっくり歩いてくる。手には花契筆ノ詞綴はなちぎりふでのことばつづりを持ち優雅ゆうげの花冠を頭にかぶり、舞を舞いながら花契筆ノ詞綴を掲げる。
 そこに終演を知らせるかのように伝八が最後と言わんばかりに鉋を滑らす。

 シュッ──

 最後の仕上げの如く微かな木屑が削られ地に落ちた。伝八は天を見上げ微笑んだ。
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