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第八章──悌(したしみ)の絆、隠された友情の証
126話
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カタン──ズゥ……カタン、コトン、スッ……
カタン──ズゥ……カタン、コトン、スッ……
道中下駄を鳴らす音がする。
「姉さま……」
唐傘、花傘を差し、雅に姿を現し、道中下駄を外八文字の重たい下駄を引き摺るように歩く、花化従の後ろから白い面をつけた漆黒の着物姿の女が悠々と歩いてくる。
「あれは……あの折の……確か清殿の姉君、静殿……」
懐に仕舞込み幸吉の形見にした花飾りが熱を持つように感じた朱鷺。あの圧倒的で全てを掌握するような佇まいに心を震わす。まるですべてを見ていたかのように姿を現し、花魁の花化従がその絢爛美麗な姿で華を添える。異様な雰囲気に学舎の完成を祝おうとした面々が固唾を呑む。
「いったい何事ぞ……」
宗稔が口を開く。
「やはり参られたか……清殿に静殿……されど、儂は此の鉋にて匠を尽くす所存……」
伝八は鉋に力を入れる。
スゥー……
薄皮が削ぎ落ち、風に揺られ舞う。それを号令の如く、静がこえをかける。
「いざ、仇花霊々の舞にて候。花傀儡筆頭、花化従、此れに」
そして清も声をあげる。
「いざ、花霊々の舞にて候。花護人筆頭、花天照此れに」
二人は互いに花火線香を掲げる。
清の頭上に翼を広げた花天照が降臨し、清の掲げた線香花火に息を吹きかけ火を灯せば、静の傍らにいた花化従が静の掲げた線香花火に息を吹き火を灯す。辺りは暗闇に包まれ、ゆっくりと鉋を引く伝八とその二つの灯火の灯る微かな音にすべてが集約された。
闇から。仇花灯ノ籠ノ番人左手、地表から地を割って花灯ノ籠ノ番人右手が現れ静と清はそれぞれに渡す。
そして静は花現身を清は花告を唱える。
──執念の花を手折ることなかれ。散りゆく命にしがみつく、その心の影──
──『悌』の笑みは、消えてもなお、時の奥で揺れている──
互いの言葉が相反し交わる時、花化従と花天照がお互いの舞をぶつけ合う。それは『執』と『悌』の舞。面、花断をつけた花化従の身体から枝分かれした五本の枝が地表に刺さり、そして翼を広げ天空から枝分かれした五本の枝が地に刺さる。
静が厳かに語る。
「舞え──! 人の負の情さえ、生きる証とならんために……」
清は叫ぶ。
「舞え──! 人は理想を求め、歩みてこそ辿り着くものなれば──」
それぞれの想いを込め、漆黒の蕾と真白の蕾が五つずつ。宗稔や宗光、兵之助、朱鷺は目を離せないでいる。なぜならそれは人としてあるべき姿、人として求める姿を体現した舞。心が揺さぶられていたからだ。
「なんと荘厳な……」
兵之助が言葉を振り絞るように呟く。
「しかと見届けよ……かの者ら、必ずや儂の生きざまを体現してくれよう……この鉋の如く……」
伝八はただ鉋見据え、慎重に引戸の上框を削る。
カタン──ズゥ……カタン、コトン、スッ……
道中下駄を鳴らす音がする。
「姉さま……」
唐傘、花傘を差し、雅に姿を現し、道中下駄を外八文字の重たい下駄を引き摺るように歩く、花化従の後ろから白い面をつけた漆黒の着物姿の女が悠々と歩いてくる。
「あれは……あの折の……確か清殿の姉君、静殿……」
懐に仕舞込み幸吉の形見にした花飾りが熱を持つように感じた朱鷺。あの圧倒的で全てを掌握するような佇まいに心を震わす。まるですべてを見ていたかのように姿を現し、花魁の花化従がその絢爛美麗な姿で華を添える。異様な雰囲気に学舎の完成を祝おうとした面々が固唾を呑む。
「いったい何事ぞ……」
宗稔が口を開く。
「やはり参られたか……清殿に静殿……されど、儂は此の鉋にて匠を尽くす所存……」
伝八は鉋に力を入れる。
スゥー……
薄皮が削ぎ落ち、風に揺られ舞う。それを号令の如く、静がこえをかける。
「いざ、仇花霊々の舞にて候。花傀儡筆頭、花化従、此れに」
そして清も声をあげる。
「いざ、花霊々の舞にて候。花護人筆頭、花天照此れに」
二人は互いに花火線香を掲げる。
清の頭上に翼を広げた花天照が降臨し、清の掲げた線香花火に息を吹きかけ火を灯せば、静の傍らにいた花化従が静の掲げた線香花火に息を吹き火を灯す。辺りは暗闇に包まれ、ゆっくりと鉋を引く伝八とその二つの灯火の灯る微かな音にすべてが集約された。
闇から。仇花灯ノ籠ノ番人左手、地表から地を割って花灯ノ籠ノ番人右手が現れ静と清はそれぞれに渡す。
そして静は花現身を清は花告を唱える。
──執念の花を手折ることなかれ。散りゆく命にしがみつく、その心の影──
──『悌』の笑みは、消えてもなお、時の奥で揺れている──
互いの言葉が相反し交わる時、花化従と花天照がお互いの舞をぶつけ合う。それは『執』と『悌』の舞。面、花断をつけた花化従の身体から枝分かれした五本の枝が地表に刺さり、そして翼を広げ天空から枝分かれした五本の枝が地に刺さる。
静が厳かに語る。
「舞え──! 人の負の情さえ、生きる証とならんために……」
清は叫ぶ。
「舞え──! 人は理想を求め、歩みてこそ辿り着くものなれば──」
それぞれの想いを込め、漆黒の蕾と真白の蕾が五つずつ。宗稔や宗光、兵之助、朱鷺は目を離せないでいる。なぜならそれは人としてあるべき姿、人として求める姿を体現した舞。心が揺さぶられていたからだ。
「なんと荘厳な……」
兵之助が言葉を振り絞るように呟く。
「しかと見届けよ……かの者ら、必ずや儂の生きざまを体現してくれよう……この鉋の如く……」
伝八はただ鉋見据え、慎重に引戸の上框を削る。
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