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29話:洗剤が欲しい!3 カクレサワガニ
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異世界生活十九日目
森の中での野営は少し不安だったが、コメちゃんズに囲まれていたおかげか、思ったよりぐっすり眠れた。
「みんな、おはよ~」
「お、メグミ起きたか!カモフラージュが効いたのか、全然危険はなかったぜ!」
「寝る前にガサガサしてたのは、隠れる準備してたんだね……ありがとう!」
「拙者の指導で、外からは何も分からぬ完璧な隠れ家になっておりましたぞ!」
「ケイちゃん監修なんだ……なんか分かる気がする」
「なんだか褒められてない気がしますぞ!」
「起きたなら、出発するぞ。高地には明るいうちに着いておきたい」
「はーい!」
私たちは仮拠点を出て、再び森を進んだ。
だんだん勾配がきつくなってきた。どうやら高地に近づいているらしい。
「よし、みんな。この崖を越えたら高地だ。メグミは足元に気をつけろよ!」
「メグミは僕たちが押し上げるよ!」
コメちゃんズとミコちゃんが、わらわらと私の周りに集まる。
これは……かつて砂浜で運ばれた時と同じ構図!
「ちょ、ちょっと待って、ミコちゃん……!」
「今回はちゃんと運ぶ場所わかってるから大丈夫だよ!」
ドドドドドドド!
一気に崖の上まで運ばれてしまった。
崖の上は霧がうっすらかかっていて、森よりもずっと涼しい。まるで日本の秋のような空気だ。
その中に、立派でどこか南国っぽくない木が何本も生えている。
「メグミ、ここが泡の出る実のなる木が育ってる高地だ」
ふんふん。よく見ると、木の周りを小さなカニたちがちょろちょろと動いている。あれがサワキさんの言ってたカニかな?
【カクレサワガニ】
・サワガニ科。甲幅2cmほど。2019年に新種として発表された、日本最小のサワガニ。
・渡嘉敷島の森林に生息し、陸上生活に強く適応している。
・食用には向かず、個体数も少ないため沖縄県の天然記念物に指定されており、採捕は禁止されている。
あ、カニペディアだ。
サワキさんの近縁種で、私たちの世界ではとても珍しいカニらしい。
カニペディアですら「食用じゃない」と言ってるあたり、かなり特別なんだろうな……。
「すまない、ちょっといいか」
サワキさんが、カクレサワガニの一匹に話しかけた。
「密林のサワガニか。何をしに来た」
「お前たちが世話している木の実を、少し分けてほしいのだ」
「なに! 我々の生活を支える木の恵みを奪いに来たというのか!」
「いえ、違います! この実が泡を出すと聞いて、その確認に来たんです!」
慌てて二匹の間に割って入った。
「泡? たしかに泡立つ汁は出るが、それがなんだというのだ」
「その泡が汚れを落とせるかもしれなくて。試してみたいんです。決して根こそぎ奪いに来たわけじゃありません!」
「ふむ……清めに使うのか。我々が育てたものが、そのような用途に……」
「我々は種しか食べない。木の世話と引き換えにそれを得て生きている。ならば試しに持って行くといい。だが、種は必ず置いていけ」
「ありがとうございます!」
試しに近くの沢の水を使い、実にコメちゃんズが軽く傷をつけて泡立ちを確認する。
バシャバシャ……アワワワ。
「あ! 泡立ってるよ! まるで石鹸みたい!」
「メグミよ、“石鹸”とは何だ?」
「あ、うーんとね……泡が出る塊だよ!」
「泡が出るものはいろいろあるんだな……」
「でもちょっと泡立ちは弱いかも? 自然のものだからかな」
「あ、でもなんか手がしっとりパリッとした感じ……!」
「カクレサワガニさん、もう少し実を分けていただけませんか?」
「種を置いていくなら構わんぞ」
「ありがとうございます!」
さっそく、少し汚れたワンピースを取り出して洗ってみる。
ゴシゴシ……。
「あーっ! 汚れがちょっと落ちた! これ、付いた直後だったらきれいに落ちてたかも!」
「不思議ですぞ!」
「不思議っすねー」
「ふしぎだねー!」
これは間違いなく天然の洗剤だ!
「カクレサワガニさん、この実は私たちが探していたもののようです。浜辺で使う量を、分けていただくわけにはいきませんか?」
「見ての通り、この実がなる木はたくさんある。我々はその木を育てて種だけを使う。実には用はない。ただし根こそぎ取らなければ文句は言わん。生活に必要な分の種が確保できるなら構わん。だが、必ず種は置いていけ」
「分かりました! それと……もしまた足りなくなったら、もらいに来てもいいですか?」
「我々の暮らしに影響しないなら好きにするがいい。ただし次からは、取りすぎなければ我々に関わるな。お前たちは賑やかすぎて落ち着かん」
「はい……本当にありがとうございました!」
泡の実の木は結構高さがあり落ちている実以外を取るのは大変そうだった。
「木登りなら得意っすよー!実を落とすっすねー!」
「取りすぎないでねー!」
「了解っすー!」
ヤッシーに落としてもらった泡の実と種を器用に分離し、持ってきた瓶に詰めていく。
コメちゃんズが温度の魔法で乾燥させ、長持ちするようにしてくれた。
帰りは仮拠点でもう一晩休み、特に危険もなく無事に浜辺へと帰還することができた。
カクレサワガニさん……不思議なカニさんたちだったな……。
こうして、私たちの「洗剤探しの旅」は、無事に一段落したのだった。
森の中での野営は少し不安だったが、コメちゃんズに囲まれていたおかげか、思ったよりぐっすり眠れた。
「みんな、おはよ~」
「お、メグミ起きたか!カモフラージュが効いたのか、全然危険はなかったぜ!」
「寝る前にガサガサしてたのは、隠れる準備してたんだね……ありがとう!」
「拙者の指導で、外からは何も分からぬ完璧な隠れ家になっておりましたぞ!」
「ケイちゃん監修なんだ……なんか分かる気がする」
「なんだか褒められてない気がしますぞ!」
「起きたなら、出発するぞ。高地には明るいうちに着いておきたい」
「はーい!」
私たちは仮拠点を出て、再び森を進んだ。
だんだん勾配がきつくなってきた。どうやら高地に近づいているらしい。
「よし、みんな。この崖を越えたら高地だ。メグミは足元に気をつけろよ!」
「メグミは僕たちが押し上げるよ!」
コメちゃんズとミコちゃんが、わらわらと私の周りに集まる。
これは……かつて砂浜で運ばれた時と同じ構図!
「ちょ、ちょっと待って、ミコちゃん……!」
「今回はちゃんと運ぶ場所わかってるから大丈夫だよ!」
ドドドドドドド!
一気に崖の上まで運ばれてしまった。
崖の上は霧がうっすらかかっていて、森よりもずっと涼しい。まるで日本の秋のような空気だ。
その中に、立派でどこか南国っぽくない木が何本も生えている。
「メグミ、ここが泡の出る実のなる木が育ってる高地だ」
ふんふん。よく見ると、木の周りを小さなカニたちがちょろちょろと動いている。あれがサワキさんの言ってたカニかな?
【カクレサワガニ】
・サワガニ科。甲幅2cmほど。2019年に新種として発表された、日本最小のサワガニ。
・渡嘉敷島の森林に生息し、陸上生活に強く適応している。
・食用には向かず、個体数も少ないため沖縄県の天然記念物に指定されており、採捕は禁止されている。
あ、カニペディアだ。
サワキさんの近縁種で、私たちの世界ではとても珍しいカニらしい。
カニペディアですら「食用じゃない」と言ってるあたり、かなり特別なんだろうな……。
「すまない、ちょっといいか」
サワキさんが、カクレサワガニの一匹に話しかけた。
「密林のサワガニか。何をしに来た」
「お前たちが世話している木の実を、少し分けてほしいのだ」
「なに! 我々の生活を支える木の恵みを奪いに来たというのか!」
「いえ、違います! この実が泡を出すと聞いて、その確認に来たんです!」
慌てて二匹の間に割って入った。
「泡? たしかに泡立つ汁は出るが、それがなんだというのだ」
「その泡が汚れを落とせるかもしれなくて。試してみたいんです。決して根こそぎ奪いに来たわけじゃありません!」
「ふむ……清めに使うのか。我々が育てたものが、そのような用途に……」
「我々は種しか食べない。木の世話と引き換えにそれを得て生きている。ならば試しに持って行くといい。だが、種は必ず置いていけ」
「ありがとうございます!」
試しに近くの沢の水を使い、実にコメちゃんズが軽く傷をつけて泡立ちを確認する。
バシャバシャ……アワワワ。
「あ! 泡立ってるよ! まるで石鹸みたい!」
「メグミよ、“石鹸”とは何だ?」
「あ、うーんとね……泡が出る塊だよ!」
「泡が出るものはいろいろあるんだな……」
「でもちょっと泡立ちは弱いかも? 自然のものだからかな」
「あ、でもなんか手がしっとりパリッとした感じ……!」
「カクレサワガニさん、もう少し実を分けていただけませんか?」
「種を置いていくなら構わんぞ」
「ありがとうございます!」
さっそく、少し汚れたワンピースを取り出して洗ってみる。
ゴシゴシ……。
「あーっ! 汚れがちょっと落ちた! これ、付いた直後だったらきれいに落ちてたかも!」
「不思議ですぞ!」
「不思議っすねー」
「ふしぎだねー!」
これは間違いなく天然の洗剤だ!
「カクレサワガニさん、この実は私たちが探していたもののようです。浜辺で使う量を、分けていただくわけにはいきませんか?」
「見ての通り、この実がなる木はたくさんある。我々はその木を育てて種だけを使う。実には用はない。ただし根こそぎ取らなければ文句は言わん。生活に必要な分の種が確保できるなら構わん。だが、必ず種は置いていけ」
「分かりました! それと……もしまた足りなくなったら、もらいに来てもいいですか?」
「我々の暮らしに影響しないなら好きにするがいい。ただし次からは、取りすぎなければ我々に関わるな。お前たちは賑やかすぎて落ち着かん」
「はい……本当にありがとうございました!」
泡の実の木は結構高さがあり落ちている実以外を取るのは大変そうだった。
「木登りなら得意っすよー!実を落とすっすねー!」
「取りすぎないでねー!」
「了解っすー!」
ヤッシーに落としてもらった泡の実と種を器用に分離し、持ってきた瓶に詰めていく。
コメちゃんズが温度の魔法で乾燥させ、長持ちするようにしてくれた。
帰りは仮拠点でもう一晩休み、特に危険もなく無事に浜辺へと帰還することができた。
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