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裏事情と葛藤

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「だって、相手は聖女様なんだよ!いくらなんでもそんなこと罰当たりが過ぎるじゃないか!」
「でもこれを入れないとここの村の者は連帯責任で皆殺しじゃないか。お前も分かっとくれ」
「そりゃあそうだけどさぁ、父さんも見ただろう?あの子はそんな悪い子じゃあないよ」
「アリス、あまり情をかけるでない。お前も苦しむことになるといつも言っているだろう」

最果ての小屋への中継地点のこの村は、そこへ向かう罪人に毒を盛るための場所でもあった。
浴槽は薬湯でじわじわと、食事は毒草をこの村の名物の山菜として盛り込み、寝床には枯れてもなお効果のある薬草を仕込んである。

全ては罪人が最果ての小屋を求めて森の中にいるうちに行き倒れ、命を亡くすために。

もちろん最果ての小屋は存在するが、毒を盛られ、万全でない状態ではおおよそ体力の続かない場所にある。
常人では国境を超える以前に、その中継地点であるその小屋にすらたどり着けないだろう。
それにこの村を囲む森は強力な魔物が跋扈ばっこする魔の森だ。
魔物にとって人間も木の実や草花と同じただの食糧らしい。

この森を越えて国外に行くことは不可能なのだ。
それゆえ、最高刑になっているわけだけれど。

アリスと村長も、明日リリィに持たせる水筒に毒を仕込む最中だった。
飲めば飲むほど喉が渇き、身体が重くなる毒。

「魔物の恰好の獲物になるためのそれは、リリィには辛すぎる」
「お前がやらぬなら私がやる。もう寝なさい」

それから空が白むまで、2人の思いはずっと相容れることは無かった。
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