本当はあなたを愛してました

涙乃(るの)

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第三部

お茶

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翌朝、身支度を整え終えてもマリの姿が見えない

いつもならとっくに来ている時間なのに

呼び鈴を鳴らそうとした手を止めて、マリの様子を見に行くことにした

疲れて眠っていたら休ませておこう

そっと扉を開け中の様子を伺う

「マリ?起きてる?」

静かに室内へと入ってみる

布団の膨らみからマリが寝ていることが窺える
不規則な寝息が聞こえる
妙な胸騒ぎがした

ベッドの側まで近付いて、マリの寝顔を見なければ安心できない

「マリ?大丈夫?」

マリの様子がおかしい

顔面蒼白で呼吸も荒い


「マリ!マリ!大変、待ってて」


すぐにお医者さまを呼びにいこうとしたものの、がしっと手首を掴まれた

冷たい感触に驚きつつもマリに向き直る

「マリ、お医者様を呼んでくるわ」

マリは必死にふるふると首を振る

「え?なんて言ってるの?」


マリの口元に耳を近づけて聞き取ろうとする

「けて……口をつけ……
だめ……見たこ…ない…お…」

「マリ!マリ!誰か来て!早く!」


騒ぎを聞きつけたデボラが医師を連れてきてくれた

診察の結果は、軽い貧血


軽い貧血?

本当に?

何度もしつこくお願いしたけれど、結局他に異常は見当たらないとのことだった

昨日まではあんなに元気だったのに
今まで貧血になったことなんてなかったわ


マリのつぶやいた言葉
あれは私に何か伝えたかったに違いないわ

必死に思い出そうとするも、よく言葉が聞き取れなかった

見たことないお…お茶…だったかしら

はたとそこで昨夜のことが脳裏をよぎる

そういえばフェリクス様がマリをお茶に誘っていた

もしかしてお茶に何か?

いいえ、まさかそんなことはあるはずがない

本当に?

何度も自問自答を繰り返すも答えが出るはずもなく

モヤモヤとした気持ちのままマリの容態が回復するのを祈っていた

「サラ嬢、あなたまで心労で倒れてしまいますよ。さぁ少し気分転換にお茶をご一緒しませんか?」

昨夜のことを考えている時、タイミングよくフェリクス様からお茶のお誘いを受けた

お茶?
先程の疑いが頭の中を占める
確かめるには絶好の機会かもしれない

証拠もなく疑うなんて失礼なのだけど

どうしようもなく怪しく思えてしまう

動揺を悟られないように誘いに応じる


あの後マリと何を話したのかも気になる

フェリクス様と一緒にティールームへとむかった


部屋に入るとフェリクス様と2人きり

扉は開けられたままとはいえ妙に緊張する

考え方は個性的というのかしら、ちょっと理解に苦しむところだけど、容姿には惹かれるものがあった

フェリクス様はコンプレックスとおっしゃっていたけれど、シルバーの髪色は綺麗で整った顔立ちを引き立てており、人の目を惹きつける

サファイアのような瞳にみつめられると、何も考えられなくなる

こんな時に不謹慎だと気持ちを切り替える

マリに注意されるわね


カチカチカチと置き時計の音が響いている

「珍しいお茶を手に入れましてね、さぁどうぞ」


向かい合わせのソファーに腰掛けて、フェリクス様手ずからお茶を注ぐ


差し出された飲み物を見て息をのむ

「こ…これは」



























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