この世界で夢を見る

yuto

文字の大きさ
4 / 11
【失却】7歳

第4話

しおりを挟む
それから1年の時が過ぎました。
特に変わったことはないが強いて言えばユウトの身長が少し伸びたことだろうか?

今日も代り映えのない日常を過ごしたユウトであったが、
数日前に手紙が来ていた。
実物を見ていないが、家の執事からは伝えられていた。
今日のユウトはウキウキであった。


そういえば今日は父上と母上が帰ってくる日か・・・


ユウトの両親は一か月程前から領地拡大目的での周辺地区偵察という名のデートを
敢行していた。


今回もまた、日が暮れ始めた頃
従者達とともに帰宅を待っていたユウトの耳に
せっせと駆けてくる馬の足音が入ってきた。
音が大きくなるにつれ、ユウトの表情が周囲の景色に反するように明るくなり
年相応の顔色が惜しげもなく周囲に披露され、
周りも釣られてか歓声が上がり始めた。


「今戻った。」


自身が乗っていた馬車を降り暗く地を這うような声色で
自身を待ち望んでいた者達に向かって放たれた一言は、周囲を静寂に誘った。


「父上、母上はいないの?」


いつもならレブアディーオが降りた馬車から顔を出す
エウの姿が見られなかったユウトは、頭に疑問符を浮かべながら
レブアディーオに聞いてみるも、返答はなかった。
父はユウトを抱きかかえる事無く、そのまま屋敷に戻っていった。


何かあったのだろうか?


いつもの快活な父と柔らかな母はおらず、
ユウトは不思議に思ったが答えも返ってきそうにない為、
思考を止め、屋敷に戻るしかなかった。



父レブアディーオの姿はその後、屋敷内に有識者を集めて会議を始めてしまったので
自宅内でも見ることが叶わず、
ユウトは一抹の不安を覚えながらも自室で暇を持て余していた。
小一時間程たっただろうか、部屋の外から誰かが駆けてくる音が聞こえてきた
部屋のドアを勢いよく開くとそこには息を切らしたメイが居り、
手には封が切られた手紙を携えていた。


ユウトが抑制の言葉を投げかけるもメイに名前を唐突に呼ばれ、途中で切られてしまった。
この子はよく焦っているが、言葉を遮ることなど記憶を辿る限り無く
異様な様子からか押し黙る他無かった。


「突然の失礼、申し訳ございません。
こちらを拝見していただけませんか?」


その言葉とともに携えていた手紙をこちらに向けてきた。
手元を見るとうっすらとではあるが手紙に青白い文字で
至急アスプ”と書かれている。
改めて開いて内容を一読するとそこにはレブアディーオの筆跡で
今回の帰宅の旨が書かれている。


どこが”至急アスプ”の要件なのだろうか?


そんなことを考えながら読んでいたユウトであったが
レブアディーオの筆跡が終わったあと、
少しの空白を開けて古代語アンシエモティ


ユウト、逃げて


と書かれていた。
メイを見てみるが、どうやら内容が気になっているらしい。
渡してみたが、ユウトの手元から手紙が離れると文末にあった古代語アンシエモティは消えた。
嫌な予感がしてメイから受け取った”手紙の封”を見てみると
先刻確かに見たはずの”至急アスプ”の文字も消えている。


・・・僕がメイから手紙を受け取る前提か


そんなことを知っているのは限られた人物、
というより屋敷にいる者のみだが、なによりも
先程の青白い文字”魔法文字マギパーソナ”も”古代語アンシエモティ”も
教会で習った訳ではなく、


【それはエウの魔法よ】


頭に直接語り掛けるように聞こえた言葉に驚き
周りを見渡してみるが、部屋にはメイとシャルしかいない。
別に全てを知っているわけではないが、メイがこのような事が出来るとは思えない。
なによりもこれは先日教会で聞いたばかりだから覚えている。
精霊イープス特有の技法であった。
まさかと思ってシャルを見ると


【これぐらいは簡単よ?】


常々不思議な小動物だとは思っていたが、
まさか精霊イープスだとは思わなかった。
他にもおかしいと思う節はたくさんあった訳だが
衝撃だったのは


「シャル、メスなんだな。」


シャルに向かって独り言のようにしゃべるユウトを
傍からみていたメイにはおかしな光景である。


【私の事よりも優先することがあるでしょう?】


そうなのだ。
”そんなこと”という次元ではないのだが、今は”そんなこと”である。
人の目があるところでは分からぬが
普段自分といるときの母は比較的おっとりしている。
そんな母がこのように誰の目にも入らぬような細工をしてまで
”逃げて”と伝えてきている。


しかし、どこから逃げればいいのだろう


衝撃的な事はいくつかあったが特段、切羽詰まった状態だとは思えなかった。


変わった事・・・か・・・


一番の変化であった隣のシャルを見てみるが
先程からしきりに自分の服を引っ張ってくる。


・・・父か

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

思いを込めてあなたに贈る

あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

処理中です...