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【失却】7歳
第4話
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それから1年の時が過ぎました。
特に変わったことはないが強いて言えばユウトの身長が少し伸びたことだろうか?
今日も代り映えのない日常を過ごしたユウトであったが、
数日前に手紙が来ていた。
実物を見ていないが、家の執事からは伝えられていた。
今日のユウトはウキウキであった。
そういえば今日は父上と母上が帰ってくる日か・・・
ユウトの両親は一か月程前から領地拡大目的での周辺地区偵察という名のデートを
敢行していた。
今回もまた、日が暮れ始めた頃
従者達とともに帰宅を待っていたユウトの耳に
せっせと駆けてくる馬の足音が入ってきた。
音が大きくなるにつれ、ユウトの表情が周囲の景色に反するように明るくなり
年相応の顔色が惜しげもなく周囲に披露され、
周りも釣られてか歓声が上がり始めた。
「今戻った。」
自身が乗っていた馬車を降り暗く地を這うような声色で
自身を待ち望んでいた者達に向かって放たれた一言は、周囲を静寂に誘った。
「父上、母上はいないの?」
いつもならレブアディーオが降りた馬車から顔を出す
エウの姿が見られなかったユウトは、頭に疑問符を浮かべながら
レブアディーオに聞いてみるも、返答はなかった。
父はユウトを抱きかかえる事無く、そのまま屋敷に戻っていった。
何かあったのだろうか?
いつもの快活な父と柔らかな母はおらず、
ユウトは不思議に思ったが答えも返ってきそうにない為、
思考を止め、屋敷に戻るしかなかった。
父レブアディーオの姿はその後、屋敷内に有識者を集めて会議を始めてしまったので
自宅内でも見ることが叶わず、
ユウトは一抹の不安を覚えながらも自室で暇を持て余していた。
小一時間程たっただろうか、部屋の外から誰かが駆けてくる音が聞こえてきた
部屋のドアを勢いよく開くとそこには息を切らしたメイが居り、
手には封が切られた手紙を携えていた。
ユウトが抑制の言葉を投げかけるもメイに名前を唐突に呼ばれ、途中で切られてしまった。
この子はよく焦っているが、言葉を遮ることなど記憶を辿る限り無く
異様な様子からか押し黙る他無かった。
「突然の失礼、申し訳ございません。
こちらを拝見していただけませんか?」
その言葉とともに携えていた手紙をこちらに向けてきた。
手元を見るとうっすらとではあるが手紙に青白い文字で
”至急”と書かれている。
改めて開いて内容を一読するとそこにはレブアディーオの筆跡で
今回の帰宅の旨が書かれている。
どこが”至急”の要件なのだろうか?
そんなことを考えながら読んでいたユウトであったが
レブアディーオの筆跡が終わったあと、
少しの空白を開けて古代語で
ユウト、逃げて
と書かれていた。
メイを見てみるが、どうやら内容が気になっているらしい。
渡してみたが、ユウトの手元から手紙が離れると文末にあった古代語は消えた。
嫌な予感がしてメイから受け取った”手紙の封”を見てみると
先刻確かに見たはずの”至急”の文字も消えている。
・・・僕がメイから手紙を受け取る前提か
そんなことを知っているのは限られた人物、
というより屋敷にいる者のみだが、なによりも
先程の青白い文字”魔法文字”も”古代語”も
教会で習った訳ではなく、
【それはエウの魔法よ】
頭に直接語り掛けるように聞こえた言葉に驚き
周りを見渡してみるが、部屋にはメイとシャルしかいない。
別に全てを知っているわけではないが、メイがこのような事が出来るとは思えない。
なによりもこれは先日教会で聞いたばかりだから覚えている。
精霊特有の技法であった。
まさかと思ってシャルを見ると
【これぐらいは簡単よ?】
常々不思議な小動物だとは思っていたが、
まさか精霊だとは思わなかった。
他にもおかしいと思う節はたくさんあった訳だが
衝撃だったのは
「シャル、メスなんだな。」
シャルに向かって独り言のようにしゃべるユウトを
傍からみていたメイにはおかしな光景である。
【私の事よりも優先することがあるでしょう?】
そうなのだ。
”そんなこと”という次元ではないのだが、今は”そんなこと”である。
人の目があるところでは分からぬが
普段自分といるときの母は比較的おっとりしている。
そんな母がこのように誰の目にも入らぬような細工をしてまで
”逃げて”と伝えてきている。
しかし、どこから逃げればいいのだろう
衝撃的な事はいくつかあったが特段、切羽詰まった状態だとは思えなかった。
変わった事・・・か・・・
一番の変化であった隣のシャルを見てみるが
先程からしきりに自分の服を引っ張ってくる。
・・・父か
特に変わったことはないが強いて言えばユウトの身長が少し伸びたことだろうか?
今日も代り映えのない日常を過ごしたユウトであったが、
数日前に手紙が来ていた。
実物を見ていないが、家の執事からは伝えられていた。
今日のユウトはウキウキであった。
そういえば今日は父上と母上が帰ってくる日か・・・
ユウトの両親は一か月程前から領地拡大目的での周辺地区偵察という名のデートを
敢行していた。
今回もまた、日が暮れ始めた頃
従者達とともに帰宅を待っていたユウトの耳に
せっせと駆けてくる馬の足音が入ってきた。
音が大きくなるにつれ、ユウトの表情が周囲の景色に反するように明るくなり
年相応の顔色が惜しげもなく周囲に披露され、
周りも釣られてか歓声が上がり始めた。
「今戻った。」
自身が乗っていた馬車を降り暗く地を這うような声色で
自身を待ち望んでいた者達に向かって放たれた一言は、周囲を静寂に誘った。
「父上、母上はいないの?」
いつもならレブアディーオが降りた馬車から顔を出す
エウの姿が見られなかったユウトは、頭に疑問符を浮かべながら
レブアディーオに聞いてみるも、返答はなかった。
父はユウトを抱きかかえる事無く、そのまま屋敷に戻っていった。
何かあったのだろうか?
いつもの快活な父と柔らかな母はおらず、
ユウトは不思議に思ったが答えも返ってきそうにない為、
思考を止め、屋敷に戻るしかなかった。
父レブアディーオの姿はその後、屋敷内に有識者を集めて会議を始めてしまったので
自宅内でも見ることが叶わず、
ユウトは一抹の不安を覚えながらも自室で暇を持て余していた。
小一時間程たっただろうか、部屋の外から誰かが駆けてくる音が聞こえてきた
部屋のドアを勢いよく開くとそこには息を切らしたメイが居り、
手には封が切られた手紙を携えていた。
ユウトが抑制の言葉を投げかけるもメイに名前を唐突に呼ばれ、途中で切られてしまった。
この子はよく焦っているが、言葉を遮ることなど記憶を辿る限り無く
異様な様子からか押し黙る他無かった。
「突然の失礼、申し訳ございません。
こちらを拝見していただけませんか?」
その言葉とともに携えていた手紙をこちらに向けてきた。
手元を見るとうっすらとではあるが手紙に青白い文字で
”至急”と書かれている。
改めて開いて内容を一読するとそこにはレブアディーオの筆跡で
今回の帰宅の旨が書かれている。
どこが”至急”の要件なのだろうか?
そんなことを考えながら読んでいたユウトであったが
レブアディーオの筆跡が終わったあと、
少しの空白を開けて古代語で
ユウト、逃げて
と書かれていた。
メイを見てみるが、どうやら内容が気になっているらしい。
渡してみたが、ユウトの手元から手紙が離れると文末にあった古代語は消えた。
嫌な予感がしてメイから受け取った”手紙の封”を見てみると
先刻確かに見たはずの”至急”の文字も消えている。
・・・僕がメイから手紙を受け取る前提か
そんなことを知っているのは限られた人物、
というより屋敷にいる者のみだが、なによりも
先程の青白い文字”魔法文字”も”古代語”も
教会で習った訳ではなく、
【それはエウの魔法よ】
頭に直接語り掛けるように聞こえた言葉に驚き
周りを見渡してみるが、部屋にはメイとシャルしかいない。
別に全てを知っているわけではないが、メイがこのような事が出来るとは思えない。
なによりもこれは先日教会で聞いたばかりだから覚えている。
精霊特有の技法であった。
まさかと思ってシャルを見ると
【これぐらいは簡単よ?】
常々不思議な小動物だとは思っていたが、
まさか精霊だとは思わなかった。
他にもおかしいと思う節はたくさんあった訳だが
衝撃だったのは
「シャル、メスなんだな。」
シャルに向かって独り言のようにしゃべるユウトを
傍からみていたメイにはおかしな光景である。
【私の事よりも優先することがあるでしょう?】
そうなのだ。
”そんなこと”という次元ではないのだが、今は”そんなこと”である。
人の目があるところでは分からぬが
普段自分といるときの母は比較的おっとりしている。
そんな母がこのように誰の目にも入らぬような細工をしてまで
”逃げて”と伝えてきている。
しかし、どこから逃げればいいのだろう
衝撃的な事はいくつかあったが特段、切羽詰まった状態だとは思えなかった。
変わった事・・・か・・・
一番の変化であった隣のシャルを見てみるが
先程からしきりに自分の服を引っ張ってくる。
・・・父か
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