この世界で夢を見る

yuto

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【失却】7歳

第6話

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誰かの土を踏みにじる音が聞こえた。
周囲を確認するためにユウト達は一旦足を止めた。
辺りを観察してみるもユウトの目には特に異変は見受けられなかった。


【隠れろ。】


シャルに脳内で叫ばれ、ユウトは立ち眩みにも似たような現象が起きたが、
何とか近くの家屋の物陰に隠れた。


「なんだよいきなり。言うにしても、もう少し静かにしてよ。
まだ頭キンキンするし。
周りは見たけど特に何もなかったと思うけど。」


【喋るな。
聞こえたらどうする。
念じてくれれば私には伝わる。】


それなら最初に言ってくれよとユウトは念じながら悪態をついてみるが
特に伝わりはしなかった。

ユウトはしばらく物陰で辺りの様子を伺ったが、足音は近くに寄ってくるが
実体は視認出来ずにいた。
見えない不安を抱えるが、何も行動に移せずもどかしい気持ちが
胸を締め付けていた。

年齢特有の楽観的思考なのだろうか、
はたまたじっとしていられない性分なのだろうか
少しの間隠れていただけで自然と体が家屋から出ようとしたのだが
シャルに止められた。


【バカなのか、おまえは?
・・・あぁ見えてないのか。】


いきなり罵倒され、多少癇に障ったが
見る世界が変わりそれどころではなくなった。

ユウトの隠れている家屋の向こう側で
”黒い何か”が大量に歩いていた。


なに・・・あれ・・・


普通に生活する上で人が見ることの無いだろう生物が居て
衝撃であったと同時に強い畏怖を感じた。


【私も詳しい事は分からない。
けれどあれは、少なくとも世界序列モンデラング3以上、
イディウ族と同等かそれ以上の格が必要な手法よ。】


シャルの説明に分からない単語が出てきてユウトは困惑する。


【なんだよ世界序列モンデラングって、
聞いたことないよ。
とりあえずやばい奴がやばい事してるってことでいい?】


自分なりの解釈で納得し、シャルから肯定の返事をもらったユウトであったが
現状をどうにか出来るものではなく体から冷や汗が止まらなかった。


【領民を操っているのもあれの仕業だと思うわ。
さすがに今の私には対応しきれない、
精々自分の周りが限界よ。
エウがいたら分からないけど、
見つかるのも時間の問題ね】


シャルの言葉に絶望したユウトであったが
ある種の覚悟が決まり、隣にいる相棒に呼びかけた。


【お願いがあるんだ、シャル。
あいつらは何がしたいのか良く分からないけど僕を探しているんだよね?
僕が囮になるから、母上を探して連れてきてほしい。
多分領地のどこかには居ると思うんだ。】


その言葉にシャルは驚き、悩む。


【ホントに良いの?
私が予想している通りなら・・・
あなた、捕まったら死ぬかもしれないわよ?。】


正直せっかく覚悟が決まったのに不安をあおらないで欲しい。
そう思うユウトであったが、


【信じてるよシャル。】


その言葉を皮切りにユウトは飛び出し、
本来の逃げる方向に駆けて行った。


【エウ、あなたの子
強くて優しい子になってるわよ。
あの人のようにね。】


自己犠牲を厭わないのも似てるかもね。
そう思いながら、シャルは目的を遂げるために霧散していった。


あいつら予想以上に早いな。


シャルと別れ、”捕獲者”から逃げているユウトであったが
”黒い何か”が一心不乱に追いかけてくる様は、なかなか地獄絵図であった。
それも大量に。
必死に逃げるユウトであったが、相手の数が異常である。
数の隙間を探して右往左往してみるも向かう先々に奴らは居て、
捕まるのは時間の問題であった。


数刻後、必死で逃げたユウトであったが、数の暴力には勝てず
”捕獲者”達に捕まり、馴染み深い屋敷に連れ去られた。
住んでいる間に一度も通ったことがない廊下を引きずられ、
下に続く階段を進み、石壁に囲まれた無機質な部屋の一角に放り投げられた。
体を起こし顔をあげてみると、そこには見覚えのあるはずなのに
ほとんど面影が残っていないレブアディーオが居た。


「手間を掛けさせおって」


「お前、誰だよ。」


見たことのない顔色と雰囲気をしたレブアディーオに若干気圧されたが
あからさまに別人と化している父に向けてユウトは強気に言い放った。


「その強気な態度もすぐに終わる。」


その言葉とともに後ろに控えていた多数の”黒い何か”にまた捕まえられると
ユウトの力なき抵抗空しく、鎖に繋がれてしまった。
それと同時に新たに”黒い何か”が部屋に来るとその手には深紅の水晶が大切に抱えられていた。


「貴様にはこいつらが何故か見えているようだな。
どこかで別の精霊イープスに出会ったか。」


そんな事を呟いた後、
レブアディーオが何かを口ずさむと
ユウトの体から青い光が漏れ始め、
影響を受けている本人は苦痛に顔を歪め、絶叫した。
その光はユウトから抜き出ると深紅の水晶に吸い取られていく。


「さすがの魔力だ。この分だと少しは時間がかかりそうだが
まぁ、誤差の範囲内か。」


ユウトは体の力が吸い取られるようで、意識が飛びそうだった。


「どうやら抵抗しているようだが、いつまで持つかな?
お前の父も母もおらず領民も来れず、何に縋っているかは知らぬが
抵抗するだけ苦痛が続くだけだ。」


目の前のレブアディーオがそう言い放つが、
襲い来る苦痛の中、辛うじて意識を保っていたユウトは聞き逃さなかった。


今、絶対に別人のように言った。
父上は何かに操られているのか?


疑問は出来たが解決する術はなく、
ユウトはただ、襲い来る苦痛に苛まれ
飛びそうな意識を逃さぬようにすることで精いっぱいであった。
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