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【別れ】10歳
第8話
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この上には壁も天井もない広大な空間があるよ
よくシャルから聞かされた話だ。
気づけばここで暮らしていた僕からすれば途方もない話だし、
想像することも出来ない。
僕の視界に入るのはいつも茶色の天井に
鉱物が詰まった壁ばかりのこの閉鎖的な空間だ。
そんなことより鍛冶が上手くなる方法を教えてほしい。
いつもガロンの手伝いをしているとそう思う。
「おーい、ユウト!
あれとってくれ!」
・・・あれじゃ分かんないよ、ガロン。
そう思いつつ手ぬぐいとキンキンに冷えた水が入った湯呑を持って
1階の鍛冶場にいるであろうガロンの元に向かう。
到着するとやはり、ガロンは休憩していた。
思惑が当たり、内心ほくそ笑むと自慢気にガロンに差し出した。
「なんかいい事でもあったのか?」
無駄に気遣いが出来るというか、なんというか、
別に気づかなくていい事まで察してくるからなんか負けた気分になる。
「なんにもないよ。
それより今日集会の日じゃなかった?
そろそろ行かないと間に合わないんじゃない?」
この世界に時間が分かるものはなく、
それだと、たまにある集まりの日が決まらないという事で
よく鐘が鳴っている。
昔、どこかの凄い職人さんが時間の目安を決めるために作ったそうだ。
もう朝の鐘が6回鳴っているのでお昼のはずだ。
「お前、そういう事は早く言えよ!」
・・・いや、気づけよ。
と心中で悪態をつきながら忙しなく準備して出て行ったガロンを見送った。
「シャル~、出てきていいよ~。」
間延びした声でどこにいるか分からないシャルを呼ぶと
目の前で光が集まり、小動物が出来上がった。
【いつもあのおじ様は忙しそうね。
ユウトも見習ったら?】
いつ聞いてもこの頭の中で喋られるのはくすぐったくて仕方ない。
「出来ることをやるだけだよ。
それで今日は何を教えてくれるの?」
ここには、誰かが何かを教えてくれるというのは
鍛冶仕事以外何もない。
おまけに基本的には親から子に受け継ぐだけだそうだ。
・・・そうガロンに教わった。
あの面倒見の良い、いかついおじ様は顔の割には
気が利くし、僕に気を使ってくれているのも何となく分かる。
ただ、特別色んな事を知っている訳ではないので
ガロンが教えてくれる事以外はシャルから色々と教えてもらっている。
・・・というよりガロンが教えれる事と言えば
地上世界が怖い事と鍛冶仕事ぐらいである。
それ以外には基本的に酒の話のみ。
他にも知っている事があるかもしれないが、
少なくとも僕がここに来てからガロンの口からは聞いたことがなかった。
今日も楽しい授業に心躍らせながら、近くの坑道に入っていった。
フォロン族族長宅。
ここはフォロン族の各技術長が出会う会議。
基本的にフォロン族は閉鎖的で同族同士でもあまり干渉しあうことは無かった。
ただ、この生きづらい世界では致し方のないことであった。
「さて、それでは今回も始めようか。」
族長の掛け声にて始まった
この会議は、
各々の成果、
地上世界に誰が行くのか、
必要なものは何か、
の基本的に3点を話し合う。
地下世界だけでの生活はどうしても困窮を極めるものであった為、
フォロン族は作り出した調度品や武具を地上世界に売りに行き、
地下世界に食料品等の必要物資を持ち帰るという生活を行っている。
なので、繁華街の裏路地のいくつかに地上世界に繋がる通路を確保していた。
3年程前にシャルがユウトを連れて地下世界に行ったのもこの内の一つである。
会議の内容自体はほとんど変わらない為、
粛々と進行していく。
こんなものはとっとと終わらせたいと普段気が合わない全員が
思っていることなのだ。
ただ、生きていく為と誰かに利権が傾かないようする為に
仕方なく行っているだけで。
終了間近になった会議で族長がほとんど無言の本当に参加しているだけのガロンに話を振った。
「そういえばガロン、
拾ってきた魔人はどうなのだ。」
「何も怯えることはねぇよ。
その辺にいる子供らとさして変わらない。
ちょっと大きくなったぐらいだ。
お前らよりよっぽど気楽だぜ。」
その言葉に苛立ちを覚える者が数名いたが、
口に出して意を唱える者はいなかった。
「精霊様との約束ではあるが、
最近俺たちとの違いが顕著に現れてきている。
子供らが姿を目撃した例もある。
ごまかすのもそろそろ限界だ
話を通しておいてくれ。」
「分かってるよ。」
今度はガロンが苛立ちを覚える番であった。
よくシャルから聞かされた話だ。
気づけばここで暮らしていた僕からすれば途方もない話だし、
想像することも出来ない。
僕の視界に入るのはいつも茶色の天井に
鉱物が詰まった壁ばかりのこの閉鎖的な空間だ。
そんなことより鍛冶が上手くなる方法を教えてほしい。
いつもガロンの手伝いをしているとそう思う。
「おーい、ユウト!
あれとってくれ!」
・・・あれじゃ分かんないよ、ガロン。
そう思いつつ手ぬぐいとキンキンに冷えた水が入った湯呑を持って
1階の鍛冶場にいるであろうガロンの元に向かう。
到着するとやはり、ガロンは休憩していた。
思惑が当たり、内心ほくそ笑むと自慢気にガロンに差し出した。
「なんかいい事でもあったのか?」
無駄に気遣いが出来るというか、なんというか、
別に気づかなくていい事まで察してくるからなんか負けた気分になる。
「なんにもないよ。
それより今日集会の日じゃなかった?
そろそろ行かないと間に合わないんじゃない?」
この世界に時間が分かるものはなく、
それだと、たまにある集まりの日が決まらないという事で
よく鐘が鳴っている。
昔、どこかの凄い職人さんが時間の目安を決めるために作ったそうだ。
もう朝の鐘が6回鳴っているのでお昼のはずだ。
「お前、そういう事は早く言えよ!」
・・・いや、気づけよ。
と心中で悪態をつきながら忙しなく準備して出て行ったガロンを見送った。
「シャル~、出てきていいよ~。」
間延びした声でどこにいるか分からないシャルを呼ぶと
目の前で光が集まり、小動物が出来上がった。
【いつもあのおじ様は忙しそうね。
ユウトも見習ったら?】
いつ聞いてもこの頭の中で喋られるのはくすぐったくて仕方ない。
「出来ることをやるだけだよ。
それで今日は何を教えてくれるの?」
ここには、誰かが何かを教えてくれるというのは
鍛冶仕事以外何もない。
おまけに基本的には親から子に受け継ぐだけだそうだ。
・・・そうガロンに教わった。
あの面倒見の良い、いかついおじ様は顔の割には
気が利くし、僕に気を使ってくれているのも何となく分かる。
ただ、特別色んな事を知っている訳ではないので
ガロンが教えてくれる事以外はシャルから色々と教えてもらっている。
・・・というよりガロンが教えれる事と言えば
地上世界が怖い事と鍛冶仕事ぐらいである。
それ以外には基本的に酒の話のみ。
他にも知っている事があるかもしれないが、
少なくとも僕がここに来てからガロンの口からは聞いたことがなかった。
今日も楽しい授業に心躍らせながら、近くの坑道に入っていった。
フォロン族族長宅。
ここはフォロン族の各技術長が出会う会議。
基本的にフォロン族は閉鎖的で同族同士でもあまり干渉しあうことは無かった。
ただ、この生きづらい世界では致し方のないことであった。
「さて、それでは今回も始めようか。」
族長の掛け声にて始まった
この会議は、
各々の成果、
地上世界に誰が行くのか、
必要なものは何か、
の基本的に3点を話し合う。
地下世界だけでの生活はどうしても困窮を極めるものであった為、
フォロン族は作り出した調度品や武具を地上世界に売りに行き、
地下世界に食料品等の必要物資を持ち帰るという生活を行っている。
なので、繁華街の裏路地のいくつかに地上世界に繋がる通路を確保していた。
3年程前にシャルがユウトを連れて地下世界に行ったのもこの内の一つである。
会議の内容自体はほとんど変わらない為、
粛々と進行していく。
こんなものはとっとと終わらせたいと普段気が合わない全員が
思っていることなのだ。
ただ、生きていく為と誰かに利権が傾かないようする為に
仕方なく行っているだけで。
終了間近になった会議で族長がほとんど無言の本当に参加しているだけのガロンに話を振った。
「そういえばガロン、
拾ってきた魔人はどうなのだ。」
「何も怯えることはねぇよ。
その辺にいる子供らとさして変わらない。
ちょっと大きくなったぐらいだ。
お前らよりよっぽど気楽だぜ。」
その言葉に苛立ちを覚える者が数名いたが、
口に出して意を唱える者はいなかった。
「精霊様との約束ではあるが、
最近俺たちとの違いが顕著に現れてきている。
子供らが姿を目撃した例もある。
ごまかすのもそろそろ限界だ
話を通しておいてくれ。」
「分かってるよ。」
今度はガロンが苛立ちを覚える番であった。
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