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第1章
気持ちイイこと、好き?
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膚から立ち上る水蒸気が目に見える季節になってきた頃。あまり馴染みのなかったヤツがオレの周りにチラチラと姿を見せるようになった。
どうしてこうなったかは分からないけど、近づくきっかけは間違いなくあの日の出来事が原因だと思われる。
どこをどうしたって、あんな風に……あんな事になったのはちょっとビックリするくらい初めての事で。
まぁ、いつもと違う刺激で良かったっちゃ、ヨカッタんだけど。
「司くん、どこでやってたの?
バスケ、メチャメチャ上手いじゃん」
犬だったらきっと尻尾振って、クンクン喉も鼻も鳴らしてそうな
ドーベルマン。
ドーベルマンがオレの周りをクルクルと跳ぶように駆け回る。
「ただの田舎の高校だよ」
ドーベルマンが差し出してきたタオルを受け取り汗にまみれた顔を覆った。
フワリ、と漂ってきたのは甘い香り。なにかの柔軟剤だろうか。
それは鼻腔を軽く擽り、今までの激しい当たりからくる呼吸の荒さを忘れさせてしまう程、甘かった。
「……これ、なんの匂い?」
長くウェーブのかかる前髪をピンクの蛍光ゴムで括った精悍な顔立ちが見事に緩んで、くしゃりと笑った。
「あ、これねぇ?
こないだ出たばっかりの柔軟剤
ラグジュアリーなアロマの香りなんだってぇ」
姿形とは180度反転させたユルユルな振る舞いには、もう慣れた。
つっても、親しくなってまだ半年も経たないのにどうしていきなりこうもなつかれたんだろうか。
やっぱりアレからだろうな、と溜め息を吐き出し、それと一緒に興味なく返事をした。
「ね、イイ匂いでしょ?
司くんにピッタリ」
決してオネエな訳じゃないんだ。本人も女好きでしかも、あんな……
あんな激しいセックスをするんだ。
ドーベルマンは楽しそうにその柔軟剤について一生懸命話している。オレがそれを聞いていなくてもいいのか?
いや、オレ自身は全く興味が無いんだ。
どーでもいーし、マジで柔軟剤。
「もー、うるせぇよ、丈治
ってか柔軟剤に命賭けすぎ」
「えーーーーーっ」
そんな風に言いながらもオレが使った後のタオルで自分の汗を拭い、そしてそこに顔を埋めた。
「あー、イイ匂い!」
そんなに柔軟剤が好きなら誕生日にバカほど贈ってやるよ。
心の中でそう呟きながらペットボトルを煽った。
「三城くん、今日さ、わたし、バイトないんだけど?」
サークル女子部日高杏子が突然降って湧いたようにオレと丈二の間に割って入ってきた。
「あー、オレ今日ダメだわ」
別にダメな理由なんてなかったけど、ちょっとウザイ女からの誘いは断っている。
「えーー」
なんて言ってる割にはちっとも残念そうじゃないんだな。
そりゃ、そうか。
お前、丈二に突っ込まれてめちゃめちゃヨガリまくってたしな。
そうだ。
こいつ、杏子をシェアしたんだ。
コロコロと笑っている丈二と。
最近の女子は貞操観念が低くて、薄くてどーしようもねぇな。
まぁ、それに乗っかるオレが言うのもなんなんだけど?
「じゃ、ジョーくんは?」
ジョーくん、これがこのドーベルマンの愛称だ。
丈二は背はデカイし、ちょっとナヨナヨしてるけど、見た目も悪くない。
もっさい前髪とダボダボのトレーナー以外はそんなに悪くない。
しかも杏子は丈二の並外れたブツに夢中だった。
女子部の間ではどう噂されているか知らねぇけど
とにかく、杏子が丈二をちょっとしたイロ目で見ているのは間違いない。
そうだ、丈二のブツはぶっ飛ぶくらいデカイ。
オレだって身体の割には小さくないと言われ続けてきたが……
丈二の並外れた規格には驚いた。
「ごめんね?僕もちょっと都合悪いかな」
なんて、全滅を食らった杏子はプー、っと頬を膨らませて離れていった。
「かわいくねぇ」
ボソリ、と呟いたオレに珍しく丈二が食い付いてくる。
「じゃあ、なんであんな女とヤッてたんだよ、司くん!」
こっちもほっぺた膨らましてやがる。
なんだよ、お前まで。
「仲良くなるためにとりあえずヤるだろ?違う?
お前もヤッてたじゃん、えーと、なんつったっけ、あの……」
「あー、あれはただの口実だよ」
「は?」
面白い事を言うじゃねぇか。
何が口実だよ、ヤる為の口実だろが、変わらねーつの。
「口実でもなんでもヤったらおんなじだよ」
またペットボトルを煽ってコートに戻る。
バスケをしている時はめんどくさい事を考えずに済んだ。
「待ってよ、司くん!」
バサリバサリと大きな音がして丈二も続いてコートに戻ってくる。
こいつがディフェンスとか、マジ厄介なんだよな、と色違いのビブスを見て思っていた。
思った通り丈二の当たりは半端ない。
マンツでつかれたらたまったもんじゃない。
ガタイがデカい上にもかかわらず
横の動きも素早い。
「おい、丈二、あんま本気になんなよ」
「え、どうして」
オレにボールが回ってきて
「お前相手だと疲れんだよ」
ドリブルをゆっくり始めながら呟いた。
身体を斜めに入れ
ボールを丈二から隠すように腰を落とす。
「だって、司くん、ウマイんだもん
頑張らないと、取れないよー」
ヘラヘラっと笑いながら、気の抜けたことを言うのに
こいつ…
ほんとにバスケ、やったことねぇの?って。
この半年だけ?って。
オレに近づき
触れるか触れないかくらいの掌が腰の辺りをしっかりとガードする。
「でっけー手だな…」
クソ、と口の中でさらに呟いて
まだヘラヘラと笑う丈二を見て大きく息を吐き出した。
膚から立ち上る水蒸気が目に見える季節になってきた頃。あまり馴染みのなかったヤツがオレの周りにチラチラと姿を見せるようになった。
どうしてこうなったかは分からないけど、近づくきっかけは間違いなくあの日の出来事が原因だと思われる。
どこをどうしたって、あんな風に……あんな事になったのはちょっとビックリするくらい初めての事で。
まぁ、いつもと違う刺激で良かったっちゃ、ヨカッタんだけど。
「司くん、どこでやってたの?
バスケ、メチャメチャ上手いじゃん」
犬だったらきっと尻尾振って、クンクン喉も鼻も鳴らしてそうな
ドーベルマン。
ドーベルマンがオレの周りをクルクルと跳ぶように駆け回る。
「ただの田舎の高校だよ」
ドーベルマンが差し出してきたタオルを受け取り汗にまみれた顔を覆った。
フワリ、と漂ってきたのは甘い香り。なにかの柔軟剤だろうか。
それは鼻腔を軽く擽り、今までの激しい当たりからくる呼吸の荒さを忘れさせてしまう程、甘かった。
「……これ、なんの匂い?」
長くウェーブのかかる前髪をピンクの蛍光ゴムで括った精悍な顔立ちが見事に緩んで、くしゃりと笑った。
「あ、これねぇ?
こないだ出たばっかりの柔軟剤
ラグジュアリーなアロマの香りなんだってぇ」
姿形とは180度反転させたユルユルな振る舞いには、もう慣れた。
つっても、親しくなってまだ半年も経たないのにどうしていきなりこうもなつかれたんだろうか。
やっぱりアレからだろうな、と溜め息を吐き出し、それと一緒に興味なく返事をした。
「ね、イイ匂いでしょ?
司くんにピッタリ」
決してオネエな訳じゃないんだ。本人も女好きでしかも、あんな……
あんな激しいセックスをするんだ。
ドーベルマンは楽しそうにその柔軟剤について一生懸命話している。オレがそれを聞いていなくてもいいのか?
いや、オレ自身は全く興味が無いんだ。
どーでもいーし、マジで柔軟剤。
「もー、うるせぇよ、丈治
ってか柔軟剤に命賭けすぎ」
「えーーーーーっ」
そんな風に言いながらもオレが使った後のタオルで自分の汗を拭い、そしてそこに顔を埋めた。
「あー、イイ匂い!」
そんなに柔軟剤が好きなら誕生日にバカほど贈ってやるよ。
心の中でそう呟きながらペットボトルを煽った。
「三城くん、今日さ、わたし、バイトないんだけど?」
サークル女子部日高杏子が突然降って湧いたようにオレと丈二の間に割って入ってきた。
「あー、オレ今日ダメだわ」
別にダメな理由なんてなかったけど、ちょっとウザイ女からの誘いは断っている。
「えーー」
なんて言ってる割にはちっとも残念そうじゃないんだな。
そりゃ、そうか。
お前、丈二に突っ込まれてめちゃめちゃヨガリまくってたしな。
そうだ。
こいつ、杏子をシェアしたんだ。
コロコロと笑っている丈二と。
最近の女子は貞操観念が低くて、薄くてどーしようもねぇな。
まぁ、それに乗っかるオレが言うのもなんなんだけど?
「じゃ、ジョーくんは?」
ジョーくん、これがこのドーベルマンの愛称だ。
丈二は背はデカイし、ちょっとナヨナヨしてるけど、見た目も悪くない。
もっさい前髪とダボダボのトレーナー以外はそんなに悪くない。
しかも杏子は丈二の並外れたブツに夢中だった。
女子部の間ではどう噂されているか知らねぇけど
とにかく、杏子が丈二をちょっとしたイロ目で見ているのは間違いない。
そうだ、丈二のブツはぶっ飛ぶくらいデカイ。
オレだって身体の割には小さくないと言われ続けてきたが……
丈二の並外れた規格には驚いた。
「ごめんね?僕もちょっと都合悪いかな」
なんて、全滅を食らった杏子はプー、っと頬を膨らませて離れていった。
「かわいくねぇ」
ボソリ、と呟いたオレに珍しく丈二が食い付いてくる。
「じゃあ、なんであんな女とヤッてたんだよ、司くん!」
こっちもほっぺた膨らましてやがる。
なんだよ、お前まで。
「仲良くなるためにとりあえずヤるだろ?違う?
お前もヤッてたじゃん、えーと、なんつったっけ、あの……」
「あー、あれはただの口実だよ」
「は?」
面白い事を言うじゃねぇか。
何が口実だよ、ヤる為の口実だろが、変わらねーつの。
「口実でもなんでもヤったらおんなじだよ」
またペットボトルを煽ってコートに戻る。
バスケをしている時はめんどくさい事を考えずに済んだ。
「待ってよ、司くん!」
バサリバサリと大きな音がして丈二も続いてコートに戻ってくる。
こいつがディフェンスとか、マジ厄介なんだよな、と色違いのビブスを見て思っていた。
思った通り丈二の当たりは半端ない。
マンツでつかれたらたまったもんじゃない。
ガタイがデカい上にもかかわらず
横の動きも素早い。
「おい、丈二、あんま本気になんなよ」
「え、どうして」
オレにボールが回ってきて
「お前相手だと疲れんだよ」
ドリブルをゆっくり始めながら呟いた。
身体を斜めに入れ
ボールを丈二から隠すように腰を落とす。
「だって、司くん、ウマイんだもん
頑張らないと、取れないよー」
ヘラヘラっと笑いながら、気の抜けたことを言うのに
こいつ…
ほんとにバスケ、やったことねぇの?って。
この半年だけ?って。
オレに近づき
触れるか触れないかくらいの掌が腰の辺りをしっかりとガードする。
「でっけー手だな…」
クソ、と口の中でさらに呟いて
まだヘラヘラと笑う丈二を見て大きく息を吐き出した。
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