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第一章 幼少期 (4歳)
第二話 きず (傷)
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ロバートが爆弾発言をした日からアレだけ夢中になっていた読書をする気にもなれずただ只管にパーティーに参加しない方法を考えたが良い案は見つからなかった。
仮病を使う事も考えたがジェームズ医師が優秀過ぎてすぐに見抜かれてしまうのでその方法は使えない。怪我をする事も考えたがそんなのは回復ポーションで一発回復するのでただ痛い思いをするだけで終わる事が容易に想像が出来た。
マナーが出来ない子を演じようにもロバートに見捨てられないように、少しでも好感度を上げようと優秀さをアピールしたばかりでそれも出来ない。
自ら退路を断ってしまった状態である。
(僕は本当に馬鹿だ)
ルベルトの誕生日を明日に控えて僕はベッドの上で頭を抱える。
無駄に魔法や魔法薬が優秀過ぎて何も出来ない。
時間だけがただいたずらに過ぎていく。
現状をなんとか打開するものがあればとボーッと天井を見ながら考える。
今の自分に何が出来るだろうか?
自分の持つ加護が悪役あるあるの闇属性なのは確定しているがその他の、何か転生特典的なものがある事を期待してしまう。
この世界で自分の生まれながらに持つ加護とスキルを確認できるのは五歳になると必ず受ける決まりになっている神殿主催で行われる鑑定式の時だ。
来年まで待たなければならないのは何とももどかしい。
「すてーしゃすおーぷんって、にゃんちゃっ……て……へ?」
ブンッと音がしたと思うと目の前に半透明なウィンドウが現れる。
嘘だろうと飛び起きてそのウィンドを凝視した。
(出るんかいッ!?マジか!?)
【名前】ルディアルカ・バーンシュタイ 【LEVEL】1
【HP】380/380 【MP】 158000/158000
【属性】闇属性・地属性・水属性
【スキル】闇の癒し 《Lv1/10》 ダークネスブラスト《Lv1/10》
デッドスクリーム《Lv1/10》 ウォーター 《Lv1/10》
ストーン 《Lv1/10》 大地の恵み 《Lv1/10》
◆固有スキル◆
◎完全鑑定 ◎アイテムBOX《∞》◎種子生成(Lv 1/20) ◎鉱物生成(Lv 1/20)
◎英知の結晶 ◎索敵 ◎隠蔽 ◎匠の神業 ◎薬神の加護
目の前に現れた自分のステータスに絶句する。
転生モノの小説や漫画あるあるのチートを期待した訳ではないが、それでも自分を守れる特別な何かが1つでもあればと願ってはいた、願ってはいたが、これはと思わず口元に手を当てて黙る。
(エグッ、なんじゃコレッ。やりすぎだよッ)
突っ込み所が多すぎる自分のステータスに今度は血の気が引く。
まずは属性。
これはゲームの設定通り【闇属性】だった、が、地属性と水属性はゲームでは持っていない筈の属性だ。
加護は一人に1つが常識で、ごく稀に複数持ちの人間もいるが判明した時点で大騒ぎになる。神により多く愛された子として盛大に崇められる。エリート街道確定と言える程、国の宝として手厚く扱われる存在となるのだ。
他にも、火属性・地属性・水属性・風属性の四属性が一般的な基本属性なのだが、特殊な属性は光属性・闇属性・聖属性・氷属性・炎属性・雷属性。
光属性は王家の血族しか持てない属性。
氷属性はローゼンハイム公爵家の血族にしか持つ者はいないと言われている属性。
火属性の最上位属性である炎属性はバーンシュタイン公爵家の血筋にしか持つ者はいないと言われている属性。
雷属性はその属性を持つ者からしか受け継げないこれまた希少な属性で、持っている者も少数だ。そんな属性よりも更に希少な属性なのが聖属性と闇属性だ。
聖属性を持つ者はこの世界には片手で数えられる程しか存在せず、それを持つ者は皆、聖女・聖人となると言われている。
イシュガリア王国は過去に聖属性を持つ者が現れた事がなく、史上初の聖属性者の誕生としてヒロインは他の聖属性者よりも手厚く王家が守る存在となる。
そして僕の持つ闇属性もその聖属性と同じ位に希少だ。
だが聖属性と違い、悪い意味で目立つ属性だ。
聖女や聖者と違い、歴史上に名を残す悪行をする者達は皆【闇属性】だ。
それ故、聖属性者と違い畏怖される。
取り換えられた子と言うだけではなく【闇属性】と言う事まで判明して余計に周囲のルディアルカに対する態度が悪くなりその性格をドンドン歪めて最終的に悪役令息となるのだが。
まあそれは分かっていた事だから別に気にしない、問題なのは【闇属性】持ちが複数属性持ちなのがマズイ。
100%神殿預かりの監視人生だ。
冗談じゃない。
悪役にはなりたくないから全力で回避する気ではいたけれど、自由のない危険人物として下手したら殺される可能性だってある神殿になんて絶対に来たくない。
この世界の神殿関係者は聖者として人々に崇められる存在である一方で裏では奴隷売買・拉致・監禁・闇取引と中々なにブラックな感じである。もちろんそんな人間ばかりではないがまともな聖者が少ないのが神殿の現状である。
どんなに頑張って犯人を突き止めてもトカゲの尻尾切りのように切り捨て真相は不明となるのがお決まりである。
まあ、例外で攻略対象者である神殿員の一人がヒロインと共に神殿内を粛清して漸くまともな神殿となるルートもあるが本来はブラックなままだ。
とにかくそんな神殿に連行されたらどう考えてもお先は真っ暗だ。
どうしたらと考えている時に目に入ったモノに僕は思わず叫びそうになるのを必死に堪えた。
【隠蔽】 《ステータスの情報を改ざん、非公開にする事が可能》
最高のスキルがそこにあったのだ。
すぐにでも隠したいとウィンドに触れれば主属性である【闇属性】は隠したり非表示には出来なかったが地属性と水属性は非表示に出来た。
本当に出来たと心から安堵する。
次にスキル。
地属性と水属性に関するスキルは非表示変更した。
ただ、現状使える闇属性のスキルであるダークネスブラスト《Lv1》とデッドスクリーム《Lv1》が問題である。
どちらも【闇属性】の必殺技である。
単体か範囲かの違いで威力は引くぐらい強い。《Lv1》が罠である。
低いから大丈夫だと思って使ったら隕石落下くらいのクレーターが出来たなんて笑えない。
これは絶対使わないとすぐに非表示にした。
残ったのは【闇の癒し】これが別の意味でヤバイ。
【闇の癒し】《瘴気の消滅。聖なる存在を癒す力》
こんなスキルはゲームには存在していない筈の力である。
ルディアルカの使用可能スキルにそんなスキルはなかった。
更に問題なのがその効果だ。
ヒロインの使う【聖なる癒し】《瘴気を浄化》それと似ている効果だ、否、それ以上の効果がある。
一体どう言う事だと焦る。
聖属性で癒せるのは人間だけだ。
最終決戦で覚醒して神の力を借りる事が出来たヒロインが一度きりの奇跡で精霊達を癒す事は出来たが本来は浄化は出来ても癒す事は出来ない筈だ。
だから、ヒロインや攻略対象者達は親しくなった聖なる存在の消滅していくのを見守る事しか出来ないのだから。
「私にもっと力があればッ」
そう言って自分の無力さに泣くヒロインを攻略対象者達が仕方がない事だと、人に出来ることにも限界があると慰めるシーンは胸キュンイベント最大の見せ場の1つだ。
これは余り良くない気がした。
そっと非表示にする。
修練もしていないのにスキル所持なんて天才でもあるまいしと言い訳をして見なかった事にした。
ルディアルカが使えたスキルは把握済だ。だから、人に比較的に害にならないスキルをこれから覚えて行こうと硬く誓う。
最後に固有スキル。
これは修練して会得していく通常のスキルと違い、人が加護と同様に生まれ持つ特殊なスキルの事だ。
種類は様々だが、この固有スキルによって将来が変わると言っても過言ではない重要なものだ。
固有スキルは加護と違い全ての者が持っているものではない。
持っているだけで特別なのだが、固有スキルにも当たりとハズレが存在する。
1つ持つ者もいれば複数持つ者もいる。
固有スキルが勝敗を分けたなんて事はザラにあることだ。
この世界でも複数持ちはいるがそれでも最高5つだった筈だ。
それなのに9つもあるなんて絶対にマズイ。
だからアイテムBOXだけを表示して他は非表示とした。
本当なら鑑定も公開したいが【完全】ってのが駄目な気がした。
ゲームの中で見た固有スキルもただの普通の鑑定しかなかったから、絶対に問題になるヤツだ。
アイテムBOXだけでも優れた固有スキルだから十分だ。
そして、ずっと気になっていた異常なMPも改ざんした。
158000って異常すぎる。
魔王にでもする気かよと愚痴りたくなった。
「よ、よし」
改めて改ざんした自分のステータスを見る。
【名前】ルディアルカ・バーンシュタイ 【LEVEL】1
【HP】380/380
【MP】2800(★158000)/2800(★158000)
【属性】闇属性・地属性(非表示)・水属性(非表示)
【スキル】闇の癒し 《Lv1》(非表示)
ダークネスブラスト 《Lv1》(非表示)
デッドスクリーム 《Lv1》(非表示)
ウォーター 《Lv1》(非表示)
ストーン 《Lv1》(非表示)
大地の恵み 《Lv1》(非表示)
◆固有スキル◆
◎完全鑑定 (非表示) ◎アイテムBOX《中(★∞)》
◎種子生成 (非表示) ◎鉱物生成 (非表示)
◎英知の結晶(非表示) ◎索敵 (非表示)
◎隠蔽 (非表示) ◎匠の神業 (非表示)
■薬神の加護(非表示)
※改ざん部分には★マークが付いている。
これなら大丈夫だろう。
MPはゲームでも高かったから問題無い、と言うかある程度特別でないと見限られて捨てられても困る。
ロバートの様子からその心配はないが他の人達から難癖付けられる事がないようにするのも身を守る為には必要だ。
戦闘に特化したような特別に強いチート能力は無いが、自分が兼ねてから考えていた物作りに関しては間違いなくチート能力だ。
自分で素材を作ってそれで物を作り出す事が可能な素晴らしい能力だ。
これで悪役なんて役割を放棄して逃げても生きている。
悪い事なんてせずに普通に目立たずに生きていけば問題無しだ。
そうと分かれば眼前の問題であるルベルトの誕生日パーティーをどう回避するかだ。
ゲーム同様に何れは知られる事、ならば四の五の言わずにさっさと挨拶してさっさと退散する、それくらいしか今の自分には手がない。
目立つ必要はない、王族に媚びを売る必要もないんだ。
ロバートが望む公表さえしてしまえば後はその場に残らなくても問題ないだろう。
必要以上に目立たなければ問題も大きくはならない。
ジュリアとルベルトとの関係はもう諦めよう。
好かれるまでは行かずも普通くらいまでなら改善できるかとも考えたが、結局はこうなる運命なんだ。
出来るだけ人には関わらず挨拶をしたら俯いて印象を薄くしてそのまま退席、この作戦で行くことを決めて僕は明日に備えて早めに床に就いた。
翌日、部屋の外が何やら騒々しいとまだ朝早い時間に目が覚めた。
バタバタと廊下を走る足音がするなんてよっぽどだと大きな欠伸を1つついた。
ベッドから降りてカーテンを開ければまだ外は少し暗い。
何時もより早く目が覚めたようでもう一度寝ようと思ってベッドに戻った時、今日がルベルトの誕生日だった事を思い出す。
「はぁー……ゆうちゅ(憂鬱)……」
どうりで騒がしい訳だと溜息をつく。
三階の角部屋である僕の部屋、窓の外の下へと緯線を向ければ使用人達が本日のパーティー会場となる中庭で準備に忙しそうに動き回っている姿が見えた。
カーテンをそっと閉めて再びベッドの上に戻る。
ロバートには昼食の時間に行く事を告げてある。
最初から参加して欲しいとは言われたけれどそれだけは嫌だと全力で拒否した。
人々の意識が集中しているパーティー開催の挨拶に参加したら間違いなくその時の記憶は残っていしまう、それだけは絶対に避けたい。
狙うべき時は、人々の意識が空腹から食事へと向かっている時だ。
手早く挨拶して即退席。
どれだけ優秀な王族だろうときっと印象は浮くなる筈だ。
ロバートが用意した豪華な礼服にロバートの命を受けたメイド達がやってきて着替えさせてくれた。
凝った礼服の着方が分からなくて苦戦していたから助かった。
着替えを済ませてメイドに案内されて向かったパーティー会場となる中庭。
王族参加と言う事もあって何時も以上に多くの貴族達が参加しているようだ。
どうしてこのタイミングで参加するんだ王族と恨み言の1つも言いたい気持ちになりながらも気が進まないながらも覚悟を決めてロバートの元へと向かった。
周囲が僕の存在に気が付いてザワザワとし始めた。
僕の登場にジュリアとルベルトの表情が硬い。
ロバートが二人に話を通していなかったのだろう。
そう言うのが駄目なんだ何だよと内心苛々しながらも出来るだけ俯きなが前へと進む。
「ルカ、とてもよく似合ってるよ」
「あ、ありがとでしゅ」
「殿下、紹介します。末の子のルディアルカです」
ロバートにそっと背を押されて一歩前に出る。
視線ゆっくりと上げれば金髪の金目の綺麗な顔をした二人の王子がそこにいた。
「お、おはちゅにおめにかかりましゅ、………る るでぃあるか・ばーんしゅたいんでしゅ」
「君が……」
第一王子レオンハルトの表情がスッと変わったのが分かる。
見定めるような視線が居心地が悪い。
挨拶もしたしすぐに立ち去りたいが会話はまだ終わっていないようで動けない。
「すまない、私は第一王子レオンハルトだ。これ程見目麗しいとは思わず驚いた」
「へ?」
服装から僕が男がたと分かっているだろうに見目麗しいとは?である。
セリフ間違いだろうかと思いながらも視線を横にズラせば第二王子アルフレッドがこちらをジッと見ていた。
見過ぎだよ王族である。
本当に極力関わりたくないのだからさっさと解放して欲しい。
「アル」
「あ、……すみません兄上。第二王子アルフレッドだ……宜しく」
「は、はい」
レオンハルトに急かれて挨拶したアルフレッドに握手を求められて仕方なく握手を交わして不敬にならない程度にすぐ手を放す。
こちらを驚いたように見ている気がするが気のせいだと思う。
「すみません、ルディアルカはこう言ったものに参加するのが今回が初めてですから緊張しているようで」
「構わない、確か身体が弱いのだったな、今日は大丈夫そうで良かった」
「勿体ないお言葉に感謝申し上げます」
ロバートが頭を下げたのを見て僕も慌てて頭を下げる。
どうやら無事に挨拶を終えたようでホッと安堵してその場を早々に離れようとしたのにレオンハルトはとんでもない事を口にした。
「アルフレッド、まだ困惑している彼をエスコートしてやれ」
「え?あ、兄上?」
「いいだろう?」
「………はい」
「!?」
(いや、いやいやいや、いや!!!何言ってんの?エスコートなんて必要ないって)
よりにもよって一番近づきたくない相手にエスコートされるなんて冗談じゃないと回避したいのにこの場で一番の権力者である人間の言葉に逆らう事も出来ず僕は渋々、アルフレッド王子の後ろについて行くのだった。
アルフレッドが向かった先は更に最悪な場であるルベルトやその友人達がいる場所だった。
「アルフレッド殿下…………」
「久しぶりだなルベルト」
「ええ………どうしてソレと一緒なのですか?」
「兄上にエスコートを頼まれてな」
仕方なくと言う言葉が何となく口に出してはいないが聞こえた気がした。
こちらを値踏みするような視線。
エスコートするなんて言いながら既に僕の存在を忘れた様にルベルト達は会話している。
何時までココにいないといけないのだろうかと考える。
出来るだけ早くに隙を見て逃げ出そうとその時を待っている時、ふとルベルトを見てある事に気が付いた。
記憶が戻ってからずっと感じていた違和感。
それが何なのかまったくわからなかったけど、今思い出した。
顔だ。ゲームの開始時ではルベルトは左の眼付近に酷い火傷の痕があった。
イケメンは傷があろうが火傷の痕があろうが全てオプション効果となって更にイケメンに見えるとプレイしながら思ったけれど、その火傷の痕が今のルベルトにはないのだ。
何時ソレが出来るんだったか考えた瞬間、ゾッとするような感覚がした。
妙な気配がした。
周囲の様子を伺っていると使用人がプレゼントを抱えてルベルトの元へと運んだ。
何がどうなんて説明が付かない、だけど確実にそれがヤバイものな気がした。
そっと人気の無い場所からソレを鑑定する。
【⚠炎の魔石⚠】 [使用者の能力を底上げする]※呪われている
箱から現れた大きな炎の魔石に周囲がざわつく。
拳大の魔石なんてとても珍しく高価なものだ。
流石バーンシュタイン家だと周囲が騒ぐ中、僕はそれを手に取ろうとしたルベルトの元へと急ぐ。
「しょれにさわちゃらめッ!!」
「は?」
寸前の所でその手が止まる。
思ったより大きな声を出してしまったがそんな事を気にしている場合ではない。
周囲が静まり返った。
「しょれらめッ!」
何とかルベルトからそれを離そう更に近づく。
とにかくこの場から離さないととその箱に手を伸ばすと身体を強く突き飛ばされた。
「どう言うつもりだ」
「ッ」
冷たい声に動きを止める。
視線を上げてルベルトを見れば珍しいその表情を怒りに染めていた。
ヤバイ、マジキレしてる。
自分の誕生日プレゼントを奪おうとしているように見えたのかもしれない。
何とか弁解しようにもどう説明したらいいのか分からない。
「しょ、しょれらめ、らめッ」
「意味が分からないッ」
「……不快だね、これは兄上がルベルトへと選んだプレゼントなんだが?」
よりにもよって王子からのプレゼントだと分かり困惑する。
何故レオンハルトがこんなものを?と考えるがそんな事はゲームにも設定にも説明はされなかった。
ただ、アルフレッドがルベルトの傷を気に病んでいた様子はあった。
理由はコレなのかと、ならばルベルトが火傷を負うの今なのかと余計に焦る。
「しょれらめ、らめッ」
「放せッ」
とにかく今は何とかソレをルペルトからは離さなければと必死にルペルトの足にしがみつく。
良い手が浮かばない。
王族からのプレゼントに対して余計な事を言えない。
どうしたらと思っているとバシンッと強く頬を叩かれ身体がふら付きその場に倒れる。
「こんな騒ぎを起こして何のつもりなのッ!?」
「あ……」
どれだけ容赦なく叩いたのか少し視線がぶれた。
怒りに震えるジュリアがこちらを睨みつけていた。
ジュリアに殴られたのかと理解すると頬が余計に痛く感じた。
「偽者の癖にッ!!!!」
ジュリアの言葉が大きくその場に響いた。
冷たい視線。
身体が震える。
大丈夫、こんなのは平気だと今はそれどころではないと頭では分かっているのに身体が固まったように動かない。
「ジュリアッ!何をしてッ」
「もう耐えられないわッ、やっぱり私には無理よッ、あんな子を受け入れるなんてッ」
「君はッ」
言い争うロバートとジュリアを見て胸が更に痛む。
ルベルトが酷く憎悪した顔でこちらを見ていた。
せっかくの誕生日を出しなしにしてしまったからだと分かる。
もう仕方ないのかもしれない。
僕が余計な事をする意味なんてないのかもみしれないと思った。
別に死ぬわけじゃない。
そう思った、だからその場を離れようとした時だった。
ルベルトが魔石を手にした瞬間、モワッとした嫌な雰囲気が広がる。
それには誰もが気が付いたようだ。
「ルベルトッ、今すぐそれから手を放すんだッ」
ロバートが焦った様子で叫び、それにハッとした様子でルベルトから手からそれを離そうとしたがまるで引っ付いたように魔石はルベルトから離れない。
魔石に亀裂が入るのが見えた瞬間、僕の身体は無意識に走り出す。
ルベルトを突き飛ばしてバランスを崩し倒れたルベルトの顔を抱え込んだと粗、同時に膨大な炎が爆発したようにな弾けた。
「あぐぅッ!!!」
「!?」
背中が無茶苦茶痛い。
肉の焦げる匂いがした。
「ルカ!!!!!!水系の魔法を使える者!!手を貸してくれッ」
ロバートの叫ぶ声や周囲が騒がしい声が五月蠅く聞こえるのに意識が遠のく。
(ちょっと無理したかも)
自分の行動に後悔しながら薄れ行く意識の中、顔面蒼白なロバートが泣きながら何かを言っていたけれどそれに答える事は出来ず僕は意識を手放したのだった。
仮病を使う事も考えたがジェームズ医師が優秀過ぎてすぐに見抜かれてしまうのでその方法は使えない。怪我をする事も考えたがそんなのは回復ポーションで一発回復するのでただ痛い思いをするだけで終わる事が容易に想像が出来た。
マナーが出来ない子を演じようにもロバートに見捨てられないように、少しでも好感度を上げようと優秀さをアピールしたばかりでそれも出来ない。
自ら退路を断ってしまった状態である。
(僕は本当に馬鹿だ)
ルベルトの誕生日を明日に控えて僕はベッドの上で頭を抱える。
無駄に魔法や魔法薬が優秀過ぎて何も出来ない。
時間だけがただいたずらに過ぎていく。
現状をなんとか打開するものがあればとボーッと天井を見ながら考える。
今の自分に何が出来るだろうか?
自分の持つ加護が悪役あるあるの闇属性なのは確定しているがその他の、何か転生特典的なものがある事を期待してしまう。
この世界で自分の生まれながらに持つ加護とスキルを確認できるのは五歳になると必ず受ける決まりになっている神殿主催で行われる鑑定式の時だ。
来年まで待たなければならないのは何とももどかしい。
「すてーしゃすおーぷんって、にゃんちゃっ……て……へ?」
ブンッと音がしたと思うと目の前に半透明なウィンドウが現れる。
嘘だろうと飛び起きてそのウィンドを凝視した。
(出るんかいッ!?マジか!?)
【名前】ルディアルカ・バーンシュタイ 【LEVEL】1
【HP】380/380 【MP】 158000/158000
【属性】闇属性・地属性・水属性
【スキル】闇の癒し 《Lv1/10》 ダークネスブラスト《Lv1/10》
デッドスクリーム《Lv1/10》 ウォーター 《Lv1/10》
ストーン 《Lv1/10》 大地の恵み 《Lv1/10》
◆固有スキル◆
◎完全鑑定 ◎アイテムBOX《∞》◎種子生成(Lv 1/20) ◎鉱物生成(Lv 1/20)
◎英知の結晶 ◎索敵 ◎隠蔽 ◎匠の神業 ◎薬神の加護
目の前に現れた自分のステータスに絶句する。
転生モノの小説や漫画あるあるのチートを期待した訳ではないが、それでも自分を守れる特別な何かが1つでもあればと願ってはいた、願ってはいたが、これはと思わず口元に手を当てて黙る。
(エグッ、なんじゃコレッ。やりすぎだよッ)
突っ込み所が多すぎる自分のステータスに今度は血の気が引く。
まずは属性。
これはゲームの設定通り【闇属性】だった、が、地属性と水属性はゲームでは持っていない筈の属性だ。
加護は一人に1つが常識で、ごく稀に複数持ちの人間もいるが判明した時点で大騒ぎになる。神により多く愛された子として盛大に崇められる。エリート街道確定と言える程、国の宝として手厚く扱われる存在となるのだ。
他にも、火属性・地属性・水属性・風属性の四属性が一般的な基本属性なのだが、特殊な属性は光属性・闇属性・聖属性・氷属性・炎属性・雷属性。
光属性は王家の血族しか持てない属性。
氷属性はローゼンハイム公爵家の血族にしか持つ者はいないと言われている属性。
火属性の最上位属性である炎属性はバーンシュタイン公爵家の血筋にしか持つ者はいないと言われている属性。
雷属性はその属性を持つ者からしか受け継げないこれまた希少な属性で、持っている者も少数だ。そんな属性よりも更に希少な属性なのが聖属性と闇属性だ。
聖属性を持つ者はこの世界には片手で数えられる程しか存在せず、それを持つ者は皆、聖女・聖人となると言われている。
イシュガリア王国は過去に聖属性を持つ者が現れた事がなく、史上初の聖属性者の誕生としてヒロインは他の聖属性者よりも手厚く王家が守る存在となる。
そして僕の持つ闇属性もその聖属性と同じ位に希少だ。
だが聖属性と違い、悪い意味で目立つ属性だ。
聖女や聖者と違い、歴史上に名を残す悪行をする者達は皆【闇属性】だ。
それ故、聖属性者と違い畏怖される。
取り換えられた子と言うだけではなく【闇属性】と言う事まで判明して余計に周囲のルディアルカに対する態度が悪くなりその性格をドンドン歪めて最終的に悪役令息となるのだが。
まあそれは分かっていた事だから別に気にしない、問題なのは【闇属性】持ちが複数属性持ちなのがマズイ。
100%神殿預かりの監視人生だ。
冗談じゃない。
悪役にはなりたくないから全力で回避する気ではいたけれど、自由のない危険人物として下手したら殺される可能性だってある神殿になんて絶対に来たくない。
この世界の神殿関係者は聖者として人々に崇められる存在である一方で裏では奴隷売買・拉致・監禁・闇取引と中々なにブラックな感じである。もちろんそんな人間ばかりではないがまともな聖者が少ないのが神殿の現状である。
どんなに頑張って犯人を突き止めてもトカゲの尻尾切りのように切り捨て真相は不明となるのがお決まりである。
まあ、例外で攻略対象者である神殿員の一人がヒロインと共に神殿内を粛清して漸くまともな神殿となるルートもあるが本来はブラックなままだ。
とにかくそんな神殿に連行されたらどう考えてもお先は真っ暗だ。
どうしたらと考えている時に目に入ったモノに僕は思わず叫びそうになるのを必死に堪えた。
【隠蔽】 《ステータスの情報を改ざん、非公開にする事が可能》
最高のスキルがそこにあったのだ。
すぐにでも隠したいとウィンドに触れれば主属性である【闇属性】は隠したり非表示には出来なかったが地属性と水属性は非表示に出来た。
本当に出来たと心から安堵する。
次にスキル。
地属性と水属性に関するスキルは非表示変更した。
ただ、現状使える闇属性のスキルであるダークネスブラスト《Lv1》とデッドスクリーム《Lv1》が問題である。
どちらも【闇属性】の必殺技である。
単体か範囲かの違いで威力は引くぐらい強い。《Lv1》が罠である。
低いから大丈夫だと思って使ったら隕石落下くらいのクレーターが出来たなんて笑えない。
これは絶対使わないとすぐに非表示にした。
残ったのは【闇の癒し】これが別の意味でヤバイ。
【闇の癒し】《瘴気の消滅。聖なる存在を癒す力》
こんなスキルはゲームには存在していない筈の力である。
ルディアルカの使用可能スキルにそんなスキルはなかった。
更に問題なのがその効果だ。
ヒロインの使う【聖なる癒し】《瘴気を浄化》それと似ている効果だ、否、それ以上の効果がある。
一体どう言う事だと焦る。
聖属性で癒せるのは人間だけだ。
最終決戦で覚醒して神の力を借りる事が出来たヒロインが一度きりの奇跡で精霊達を癒す事は出来たが本来は浄化は出来ても癒す事は出来ない筈だ。
だから、ヒロインや攻略対象者達は親しくなった聖なる存在の消滅していくのを見守る事しか出来ないのだから。
「私にもっと力があればッ」
そう言って自分の無力さに泣くヒロインを攻略対象者達が仕方がない事だと、人に出来ることにも限界があると慰めるシーンは胸キュンイベント最大の見せ場の1つだ。
これは余り良くない気がした。
そっと非表示にする。
修練もしていないのにスキル所持なんて天才でもあるまいしと言い訳をして見なかった事にした。
ルディアルカが使えたスキルは把握済だ。だから、人に比較的に害にならないスキルをこれから覚えて行こうと硬く誓う。
最後に固有スキル。
これは修練して会得していく通常のスキルと違い、人が加護と同様に生まれ持つ特殊なスキルの事だ。
種類は様々だが、この固有スキルによって将来が変わると言っても過言ではない重要なものだ。
固有スキルは加護と違い全ての者が持っているものではない。
持っているだけで特別なのだが、固有スキルにも当たりとハズレが存在する。
1つ持つ者もいれば複数持つ者もいる。
固有スキルが勝敗を分けたなんて事はザラにあることだ。
この世界でも複数持ちはいるがそれでも最高5つだった筈だ。
それなのに9つもあるなんて絶対にマズイ。
だからアイテムBOXだけを表示して他は非表示とした。
本当なら鑑定も公開したいが【完全】ってのが駄目な気がした。
ゲームの中で見た固有スキルもただの普通の鑑定しかなかったから、絶対に問題になるヤツだ。
アイテムBOXだけでも優れた固有スキルだから十分だ。
そして、ずっと気になっていた異常なMPも改ざんした。
158000って異常すぎる。
魔王にでもする気かよと愚痴りたくなった。
「よ、よし」
改めて改ざんした自分のステータスを見る。
【名前】ルディアルカ・バーンシュタイ 【LEVEL】1
【HP】380/380
【MP】2800(★158000)/2800(★158000)
【属性】闇属性・地属性(非表示)・水属性(非表示)
【スキル】闇の癒し 《Lv1》(非表示)
ダークネスブラスト 《Lv1》(非表示)
デッドスクリーム 《Lv1》(非表示)
ウォーター 《Lv1》(非表示)
ストーン 《Lv1》(非表示)
大地の恵み 《Lv1》(非表示)
◆固有スキル◆
◎完全鑑定 (非表示) ◎アイテムBOX《中(★∞)》
◎種子生成 (非表示) ◎鉱物生成 (非表示)
◎英知の結晶(非表示) ◎索敵 (非表示)
◎隠蔽 (非表示) ◎匠の神業 (非表示)
■薬神の加護(非表示)
※改ざん部分には★マークが付いている。
これなら大丈夫だろう。
MPはゲームでも高かったから問題無い、と言うかある程度特別でないと見限られて捨てられても困る。
ロバートの様子からその心配はないが他の人達から難癖付けられる事がないようにするのも身を守る為には必要だ。
戦闘に特化したような特別に強いチート能力は無いが、自分が兼ねてから考えていた物作りに関しては間違いなくチート能力だ。
自分で素材を作ってそれで物を作り出す事が可能な素晴らしい能力だ。
これで悪役なんて役割を放棄して逃げても生きている。
悪い事なんてせずに普通に目立たずに生きていけば問題無しだ。
そうと分かれば眼前の問題であるルベルトの誕生日パーティーをどう回避するかだ。
ゲーム同様に何れは知られる事、ならば四の五の言わずにさっさと挨拶してさっさと退散する、それくらいしか今の自分には手がない。
目立つ必要はない、王族に媚びを売る必要もないんだ。
ロバートが望む公表さえしてしまえば後はその場に残らなくても問題ないだろう。
必要以上に目立たなければ問題も大きくはならない。
ジュリアとルベルトとの関係はもう諦めよう。
好かれるまでは行かずも普通くらいまでなら改善できるかとも考えたが、結局はこうなる運命なんだ。
出来るだけ人には関わらず挨拶をしたら俯いて印象を薄くしてそのまま退席、この作戦で行くことを決めて僕は明日に備えて早めに床に就いた。
翌日、部屋の外が何やら騒々しいとまだ朝早い時間に目が覚めた。
バタバタと廊下を走る足音がするなんてよっぽどだと大きな欠伸を1つついた。
ベッドから降りてカーテンを開ければまだ外は少し暗い。
何時もより早く目が覚めたようでもう一度寝ようと思ってベッドに戻った時、今日がルベルトの誕生日だった事を思い出す。
「はぁー……ゆうちゅ(憂鬱)……」
どうりで騒がしい訳だと溜息をつく。
三階の角部屋である僕の部屋、窓の外の下へと緯線を向ければ使用人達が本日のパーティー会場となる中庭で準備に忙しそうに動き回っている姿が見えた。
カーテンをそっと閉めて再びベッドの上に戻る。
ロバートには昼食の時間に行く事を告げてある。
最初から参加して欲しいとは言われたけれどそれだけは嫌だと全力で拒否した。
人々の意識が集中しているパーティー開催の挨拶に参加したら間違いなくその時の記憶は残っていしまう、それだけは絶対に避けたい。
狙うべき時は、人々の意識が空腹から食事へと向かっている時だ。
手早く挨拶して即退席。
どれだけ優秀な王族だろうときっと印象は浮くなる筈だ。
ロバートが用意した豪華な礼服にロバートの命を受けたメイド達がやってきて着替えさせてくれた。
凝った礼服の着方が分からなくて苦戦していたから助かった。
着替えを済ませてメイドに案内されて向かったパーティー会場となる中庭。
王族参加と言う事もあって何時も以上に多くの貴族達が参加しているようだ。
どうしてこのタイミングで参加するんだ王族と恨み言の1つも言いたい気持ちになりながらも気が進まないながらも覚悟を決めてロバートの元へと向かった。
周囲が僕の存在に気が付いてザワザワとし始めた。
僕の登場にジュリアとルベルトの表情が硬い。
ロバートが二人に話を通していなかったのだろう。
そう言うのが駄目なんだ何だよと内心苛々しながらも出来るだけ俯きなが前へと進む。
「ルカ、とてもよく似合ってるよ」
「あ、ありがとでしゅ」
「殿下、紹介します。末の子のルディアルカです」
ロバートにそっと背を押されて一歩前に出る。
視線ゆっくりと上げれば金髪の金目の綺麗な顔をした二人の王子がそこにいた。
「お、おはちゅにおめにかかりましゅ、………る るでぃあるか・ばーんしゅたいんでしゅ」
「君が……」
第一王子レオンハルトの表情がスッと変わったのが分かる。
見定めるような視線が居心地が悪い。
挨拶もしたしすぐに立ち去りたいが会話はまだ終わっていないようで動けない。
「すまない、私は第一王子レオンハルトだ。これ程見目麗しいとは思わず驚いた」
「へ?」
服装から僕が男がたと分かっているだろうに見目麗しいとは?である。
セリフ間違いだろうかと思いながらも視線を横にズラせば第二王子アルフレッドがこちらをジッと見ていた。
見過ぎだよ王族である。
本当に極力関わりたくないのだからさっさと解放して欲しい。
「アル」
「あ、……すみません兄上。第二王子アルフレッドだ……宜しく」
「は、はい」
レオンハルトに急かれて挨拶したアルフレッドに握手を求められて仕方なく握手を交わして不敬にならない程度にすぐ手を放す。
こちらを驚いたように見ている気がするが気のせいだと思う。
「すみません、ルディアルカはこう言ったものに参加するのが今回が初めてですから緊張しているようで」
「構わない、確か身体が弱いのだったな、今日は大丈夫そうで良かった」
「勿体ないお言葉に感謝申し上げます」
ロバートが頭を下げたのを見て僕も慌てて頭を下げる。
どうやら無事に挨拶を終えたようでホッと安堵してその場を早々に離れようとしたのにレオンハルトはとんでもない事を口にした。
「アルフレッド、まだ困惑している彼をエスコートしてやれ」
「え?あ、兄上?」
「いいだろう?」
「………はい」
「!?」
(いや、いやいやいや、いや!!!何言ってんの?エスコートなんて必要ないって)
よりにもよって一番近づきたくない相手にエスコートされるなんて冗談じゃないと回避したいのにこの場で一番の権力者である人間の言葉に逆らう事も出来ず僕は渋々、アルフレッド王子の後ろについて行くのだった。
アルフレッドが向かった先は更に最悪な場であるルベルトやその友人達がいる場所だった。
「アルフレッド殿下…………」
「久しぶりだなルベルト」
「ええ………どうしてソレと一緒なのですか?」
「兄上にエスコートを頼まれてな」
仕方なくと言う言葉が何となく口に出してはいないが聞こえた気がした。
こちらを値踏みするような視線。
エスコートするなんて言いながら既に僕の存在を忘れた様にルベルト達は会話している。
何時までココにいないといけないのだろうかと考える。
出来るだけ早くに隙を見て逃げ出そうとその時を待っている時、ふとルベルトを見てある事に気が付いた。
記憶が戻ってからずっと感じていた違和感。
それが何なのかまったくわからなかったけど、今思い出した。
顔だ。ゲームの開始時ではルベルトは左の眼付近に酷い火傷の痕があった。
イケメンは傷があろうが火傷の痕があろうが全てオプション効果となって更にイケメンに見えるとプレイしながら思ったけれど、その火傷の痕が今のルベルトにはないのだ。
何時ソレが出来るんだったか考えた瞬間、ゾッとするような感覚がした。
妙な気配がした。
周囲の様子を伺っていると使用人がプレゼントを抱えてルベルトの元へと運んだ。
何がどうなんて説明が付かない、だけど確実にそれがヤバイものな気がした。
そっと人気の無い場所からソレを鑑定する。
【⚠炎の魔石⚠】 [使用者の能力を底上げする]※呪われている
箱から現れた大きな炎の魔石に周囲がざわつく。
拳大の魔石なんてとても珍しく高価なものだ。
流石バーンシュタイン家だと周囲が騒ぐ中、僕はそれを手に取ろうとしたルベルトの元へと急ぐ。
「しょれにさわちゃらめッ!!」
「は?」
寸前の所でその手が止まる。
思ったより大きな声を出してしまったがそんな事を気にしている場合ではない。
周囲が静まり返った。
「しょれらめッ!」
何とかルベルトからそれを離そう更に近づく。
とにかくこの場から離さないととその箱に手を伸ばすと身体を強く突き飛ばされた。
「どう言うつもりだ」
「ッ」
冷たい声に動きを止める。
視線を上げてルベルトを見れば珍しいその表情を怒りに染めていた。
ヤバイ、マジキレしてる。
自分の誕生日プレゼントを奪おうとしているように見えたのかもしれない。
何とか弁解しようにもどう説明したらいいのか分からない。
「しょ、しょれらめ、らめッ」
「意味が分からないッ」
「……不快だね、これは兄上がルベルトへと選んだプレゼントなんだが?」
よりにもよって王子からのプレゼントだと分かり困惑する。
何故レオンハルトがこんなものを?と考えるがそんな事はゲームにも設定にも説明はされなかった。
ただ、アルフレッドがルベルトの傷を気に病んでいた様子はあった。
理由はコレなのかと、ならばルベルトが火傷を負うの今なのかと余計に焦る。
「しょれらめ、らめッ」
「放せッ」
とにかく今は何とかソレをルペルトからは離さなければと必死にルペルトの足にしがみつく。
良い手が浮かばない。
王族からのプレゼントに対して余計な事を言えない。
どうしたらと思っているとバシンッと強く頬を叩かれ身体がふら付きその場に倒れる。
「こんな騒ぎを起こして何のつもりなのッ!?」
「あ……」
どれだけ容赦なく叩いたのか少し視線がぶれた。
怒りに震えるジュリアがこちらを睨みつけていた。
ジュリアに殴られたのかと理解すると頬が余計に痛く感じた。
「偽者の癖にッ!!!!」
ジュリアの言葉が大きくその場に響いた。
冷たい視線。
身体が震える。
大丈夫、こんなのは平気だと今はそれどころではないと頭では分かっているのに身体が固まったように動かない。
「ジュリアッ!何をしてッ」
「もう耐えられないわッ、やっぱり私には無理よッ、あんな子を受け入れるなんてッ」
「君はッ」
言い争うロバートとジュリアを見て胸が更に痛む。
ルベルトが酷く憎悪した顔でこちらを見ていた。
せっかくの誕生日を出しなしにしてしまったからだと分かる。
もう仕方ないのかもしれない。
僕が余計な事をする意味なんてないのかもみしれないと思った。
別に死ぬわけじゃない。
そう思った、だからその場を離れようとした時だった。
ルベルトが魔石を手にした瞬間、モワッとした嫌な雰囲気が広がる。
それには誰もが気が付いたようだ。
「ルベルトッ、今すぐそれから手を放すんだッ」
ロバートが焦った様子で叫び、それにハッとした様子でルベルトから手からそれを離そうとしたがまるで引っ付いたように魔石はルベルトから離れない。
魔石に亀裂が入るのが見えた瞬間、僕の身体は無意識に走り出す。
ルベルトを突き飛ばしてバランスを崩し倒れたルベルトの顔を抱え込んだと粗、同時に膨大な炎が爆発したようにな弾けた。
「あぐぅッ!!!」
「!?」
背中が無茶苦茶痛い。
肉の焦げる匂いがした。
「ルカ!!!!!!水系の魔法を使える者!!手を貸してくれッ」
ロバートの叫ぶ声や周囲が騒がしい声が五月蠅く聞こえるのに意識が遠のく。
(ちょっと無理したかも)
自分の行動に後悔しながら薄れ行く意識の中、顔面蒼白なロバートが泣きながら何かを言っていたけれどそれに答える事は出来ず僕は意識を手放したのだった。
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