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第七話 #うそつき
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「はぁ!? なんだよそれ!」
「まあまあ落ち着こうよ、クロ」
「これが落ち着いていられるかぁ!」
初配信を終えた俺は五十六階層の転移遺跡から一階層に転移し、ダンジョンから帰ってきた。
帰ってきての目的もちろんあれだ。
フードコートのお姉さんに俺の配信はどうだったかと感想を聞くのだと俺は息巻いていた。
だがしかし。
「なんでお姉さん今日に限って休みなんだよ!」
お姉さんは今日フードコートには居なかった。
どうやら、おばちゃんによると、お姉さんは用事があってお休みをしたらしい。
つまりは、だ。
今日流すはずだった俺の配信はフードコートのTVに流れていないし、何よりお姉さんは俺の配信を見ていないことになる。
俺がなんのためにダンジョン配信を始めたというのか。
全てはお姉さんを振り向かせるためにだ。
そのお姉さんが見ていないとなれば。
「うわあああ!!!!!!」
「落ち着こう、クロ」
「ぶわああああ!!!」
俺は一体何のために今日配信を行ったというのだろうか。
「とりあえずご飯食べようか、クロ。お腹すいただろ。今日は僕が奢るからさ。カツ丼、食べるでしょ?」
「うん食べる……」
「おばちゃん! カツ丼二つね! ほら、いつもの席いこ」
「いく……」
マジノコに落ち着かせられた俺はいつもの定位置のテーブルまで連れてかれた。
手を引かれているわけではなく、なんなら両手にカツ丼を抱えているマジノコに着いていった形だが。
珍しく優しいマジノコの言葉にはなんか知らないが逆らえなかった。
席に座ると、ちょっとまっててと言ったマジノコがセルフサービスのドリンクバーへいき、コーラを二つ持ってきた。
「今日はタイミングが悪かったんだよ! 用事があったなら仕方ない仕方ない!」
「タイミングですか……そうですか………そうですよね………………」
「そうそう!」
「俺がお姉さんと出会うタイミングが悪かったんですよね……アンタレスよりももっと早く出会っていたら……」
「そうくるか~」
そうくるか~ってなんですか。
「まあしょげてても意味ないじゃん? だからカツ丼食べてコーラ飲んでそんなこと忘れようよ!」
「マジノコ…………」
「チャンネル登録者様だってほら、見てみ? もう1万人を超えているよ! 一万人だよ、一万人!」
「いちまんにん……」
「学校の一クラスを四十人としたら、250クラス分がクロに興味を持ってチャンネル登録してくれた計算になるんだよ! 250クラス分だよ!」
「俺、人気者?」
「そうさ! クロは人気者だよ!」
適当に返答しかしないのに、必死に励まそうといいところを上げるコイツはいい奴だ。
そうさ、お姉さんなんてどうでもいい。
俺のことが好きなこの一万人さえいれば俺はいいの!
もう、いいんだよ!
飯食べるし!
割り箸を割り、いただきますをする。
さっそくカツ丼に一手を入れる前に、備え付けのスープから飲むのが俺の流儀。
ワカメスープが程よい塩加減で上手いのだ。
「美味しい? 美味しいよなクロ!」
「ああ、うめえよ、このスープまじうめえ!」
「そいつはよかった! 元気出たろうしカツ丼を実食と洒落込もうじゃ………………」
「もぐもぐ。ん、どうした?」
これからいざ飯を食おうだってのに、何急に引き攣った顔して固まって。
どうしたんだよマジノコ、俺の後ろに目線向けてるか何かいたんか?
ん?
あ!
「お姉さん!」
マジノコの目線の先を追うとお姉さんがフードコートのスタッフオンリーと書かれた扉に向かって歩いていた。
しかも私服じゃないか! 身体のLINEが分かるギチギチのジーンズがなんとも言えない美しさをしている。
オーバーサイズのパーカーを来ており、萌え袖がかわいいっす。
ちょこっとでた指たちからしか摂れない栄養素がそこにはある。いいね。
「あ、クロちゃん、それにマジノコさんまで! ダンジョン上がり?」
「そうなんですよお姉さん! マジノコから聞かされたと思うけど、俺たちさっきまでダンジョンに潜ってて配信してたんですよ。でもお姉さんは用事で今日はいないみたいで見てないと思うけど。そうだよな、マジノコ」
そうだよな! とマジノコに目配せすると、表情は固まったまますごい目を見開いた状態でさっきと変わらなかった。
お前すごいもの見たみたいにお姉さんみて固まってるがどうしたんだよ。
汗が尋常じゃない量流れてるぞ?
滝みてえに。
「マジノコさんから聞かされたって何が?」
「俺がダンジョン配信することについてですよ! そこのでっかいテレビで俺の配信を流してくれるんですよね?」
「え、なんのこと?」
「ん?」
?マークを浮かべそんなの知らないよーって感じに首をかしげるお姉さん。
なぜかは分からないが俺がダンジョン配信をすることどころか、テレビで放映することも知らないみたいだ。
ふと、何かに気づきマジノコの方を見る。
そっぽを向いている。
その姿からは絶対に俺と目を合わせないという意志さえ感じる。
なるほど、コイツ。
「おいてえめ、マジノコ。お前嘘ついたな」
「な、なんのことやら……」
「お姉さん、お忙しいところ呼び止めちゃってすみません会えてよかったです! また!」
「? クロちゃんバイバイ~! マジノコさんもね~!」
「バイバイ~!」
俺への初めてのバイバイを堪能し、お姉さんをスタッフルームへと送る。
呼び止めた謝罪もばっちし。
姿が見えなくなるまで手を振りバイバイは当たり前だ。
さて、
「マジノコ、ダンジョンのあそこ、いこか」
「い、いやだ」
「そう言えばダンジョンの中って法律が効かなくなるんだよな~! もちろん人は殺しちゃいけないけど!」
「笑顔でなんてこというんだ! すまない、僕がわるかったから!」
「楽しい楽しいお遊戯の時間だ!」
「いやだああああ!!! 頭掴まないでくださいごめんなさい、僕はもうあんな思いはしたくないんだぁ!!!」
「やだよ」
「もう嘘つかないから!!!」
「それ前も言ってたよな? つか俺言ったし。次はねえって」
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「そいじゃ行きますか、ダンジョン! レッツゴー!」
「やだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ担がないで、助けてアンタレスうううううううううううう」
「おばちゃんご馳走様ー!」
「はいよー!」
「だあああああああああああああああああああ」
その日ダンジョン内では一人の青年の叫び声が夜通しこだましていたんだとか。
「まあまあ落ち着こうよ、クロ」
「これが落ち着いていられるかぁ!」
初配信を終えた俺は五十六階層の転移遺跡から一階層に転移し、ダンジョンから帰ってきた。
帰ってきての目的もちろんあれだ。
フードコートのお姉さんに俺の配信はどうだったかと感想を聞くのだと俺は息巻いていた。
だがしかし。
「なんでお姉さん今日に限って休みなんだよ!」
お姉さんは今日フードコートには居なかった。
どうやら、おばちゃんによると、お姉さんは用事があってお休みをしたらしい。
つまりは、だ。
今日流すはずだった俺の配信はフードコートのTVに流れていないし、何よりお姉さんは俺の配信を見ていないことになる。
俺がなんのためにダンジョン配信を始めたというのか。
全てはお姉さんを振り向かせるためにだ。
そのお姉さんが見ていないとなれば。
「うわあああ!!!!!!」
「落ち着こう、クロ」
「ぶわああああ!!!」
俺は一体何のために今日配信を行ったというのだろうか。
「とりあえずご飯食べようか、クロ。お腹すいただろ。今日は僕が奢るからさ。カツ丼、食べるでしょ?」
「うん食べる……」
「おばちゃん! カツ丼二つね! ほら、いつもの席いこ」
「いく……」
マジノコに落ち着かせられた俺はいつもの定位置のテーブルまで連れてかれた。
手を引かれているわけではなく、なんなら両手にカツ丼を抱えているマジノコに着いていった形だが。
珍しく優しいマジノコの言葉にはなんか知らないが逆らえなかった。
席に座ると、ちょっとまっててと言ったマジノコがセルフサービスのドリンクバーへいき、コーラを二つ持ってきた。
「今日はタイミングが悪かったんだよ! 用事があったなら仕方ない仕方ない!」
「タイミングですか……そうですか………そうですよね………………」
「そうそう!」
「俺がお姉さんと出会うタイミングが悪かったんですよね……アンタレスよりももっと早く出会っていたら……」
「そうくるか~」
そうくるか~ってなんですか。
「まあしょげてても意味ないじゃん? だからカツ丼食べてコーラ飲んでそんなこと忘れようよ!」
「マジノコ…………」
「チャンネル登録者様だってほら、見てみ? もう1万人を超えているよ! 一万人だよ、一万人!」
「いちまんにん……」
「学校の一クラスを四十人としたら、250クラス分がクロに興味を持ってチャンネル登録してくれた計算になるんだよ! 250クラス分だよ!」
「俺、人気者?」
「そうさ! クロは人気者だよ!」
適当に返答しかしないのに、必死に励まそうといいところを上げるコイツはいい奴だ。
そうさ、お姉さんなんてどうでもいい。
俺のことが好きなこの一万人さえいれば俺はいいの!
もう、いいんだよ!
飯食べるし!
割り箸を割り、いただきますをする。
さっそくカツ丼に一手を入れる前に、備え付けのスープから飲むのが俺の流儀。
ワカメスープが程よい塩加減で上手いのだ。
「美味しい? 美味しいよなクロ!」
「ああ、うめえよ、このスープまじうめえ!」
「そいつはよかった! 元気出たろうしカツ丼を実食と洒落込もうじゃ………………」
「もぐもぐ。ん、どうした?」
これからいざ飯を食おうだってのに、何急に引き攣った顔して固まって。
どうしたんだよマジノコ、俺の後ろに目線向けてるか何かいたんか?
ん?
あ!
「お姉さん!」
マジノコの目線の先を追うとお姉さんがフードコートのスタッフオンリーと書かれた扉に向かって歩いていた。
しかも私服じゃないか! 身体のLINEが分かるギチギチのジーンズがなんとも言えない美しさをしている。
オーバーサイズのパーカーを来ており、萌え袖がかわいいっす。
ちょこっとでた指たちからしか摂れない栄養素がそこにはある。いいね。
「あ、クロちゃん、それにマジノコさんまで! ダンジョン上がり?」
「そうなんですよお姉さん! マジノコから聞かされたと思うけど、俺たちさっきまでダンジョンに潜ってて配信してたんですよ。でもお姉さんは用事で今日はいないみたいで見てないと思うけど。そうだよな、マジノコ」
そうだよな! とマジノコに目配せすると、表情は固まったまますごい目を見開いた状態でさっきと変わらなかった。
お前すごいもの見たみたいにお姉さんみて固まってるがどうしたんだよ。
汗が尋常じゃない量流れてるぞ?
滝みてえに。
「マジノコさんから聞かされたって何が?」
「俺がダンジョン配信することについてですよ! そこのでっかいテレビで俺の配信を流してくれるんですよね?」
「え、なんのこと?」
「ん?」
?マークを浮かべそんなの知らないよーって感じに首をかしげるお姉さん。
なぜかは分からないが俺がダンジョン配信をすることどころか、テレビで放映することも知らないみたいだ。
ふと、何かに気づきマジノコの方を見る。
そっぽを向いている。
その姿からは絶対に俺と目を合わせないという意志さえ感じる。
なるほど、コイツ。
「おいてえめ、マジノコ。お前嘘ついたな」
「な、なんのことやら……」
「お姉さん、お忙しいところ呼び止めちゃってすみません会えてよかったです! また!」
「? クロちゃんバイバイ~! マジノコさんもね~!」
「バイバイ~!」
俺への初めてのバイバイを堪能し、お姉さんをスタッフルームへと送る。
呼び止めた謝罪もばっちし。
姿が見えなくなるまで手を振りバイバイは当たり前だ。
さて、
「マジノコ、ダンジョンのあそこ、いこか」
「い、いやだ」
「そう言えばダンジョンの中って法律が効かなくなるんだよな~! もちろん人は殺しちゃいけないけど!」
「笑顔でなんてこというんだ! すまない、僕がわるかったから!」
「楽しい楽しいお遊戯の時間だ!」
「いやだああああ!!! 頭掴まないでくださいごめんなさい、僕はもうあんな思いはしたくないんだぁ!!!」
「やだよ」
「もう嘘つかないから!!!」
「それ前も言ってたよな? つか俺言ったし。次はねえって」
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「そいじゃ行きますか、ダンジョン! レッツゴー!」
「やだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ担がないで、助けてアンタレスうううううううううううう」
「おばちゃんご馳走様ー!」
「はいよー!」
「だあああああああああああああああああああ」
その日ダンジョン内では一人の青年の叫び声が夜通しこだましていたんだとか。
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