魔法俳優

オッコー勝森

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同グルでディナー

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 グループで一緒になった六人、つまりメル、フレア、シャビオ、マリア&キャシーの双子と遅めのディナーに行く。全員、通信精霊で親に連絡はした(オレの場合は養父だが)。一人を除き、全員がOKを出した。治安の良いミナスだけかもしれないが、貴族の親は意外と緩い。フレアの父リュークさんのみ反対したが、娘に通信をぶっつんされていた。
 反抗期、怖いなあ怖いなあ。
 超旨いと評判の腸詰肉を中心に扱う大衆向けレストランの一室、思い思いの飲み物と料理を頼む。飲み物はすぐに来た。貴族のお坊ちゃんお嬢ちゃんに乾杯の文化はないらしく、各々勝手に口をつける。

「なんだったんだよぉあの練習は」

 シャビオが口を言い始める。傭兵団のメンバー、あるいはヤクザ者ならば、ここで机にコップを叩きつけただろうな。まったく、貴族ってヤツは礼儀正しいぜ。

「ラキだけやたら上手いし」「武芸訓練で慣れてんだ。あーいうの」
「あー、道理で強そうなわけだよ」
「強そうじゃなくて強いのよラキは。かっこいいのよ」

 なんかめっちゃヤバそうなクリーチャー倒してたんだから。とコップを叩きつけるフレアさん。割れるよ。
 貴族だからといって、必ずしも行儀がいいわけではなさそうだ。

「推しについて喋る時に礼儀正しくなんていられないわ。人間だもの」
「オシってなんだよ……フォニア、ウルティア」

 視界の端で、メルがコップを落としたのを捉えた。緊張してるようだ。床にシュースとガラスをぶちまける前に、魔法で止める。ジュースをコップに注ぎ直し、元の位置に戻した。

「いい感じにブレンドしといたぜ」「あ、あ、ありがとうございます」
「かっこいーなーラキくん」「普通の女の子だったらガチ恋しそうだなー」

 マリアとキャシーが口を開く。

「まー私の好みとは違うけど」「私もー」
「朴訥な男が好きなのがマリア」「少し太った男が好きなのがキャシー」
「「どっちも好きなのが金のある男」」「正直だなオイ」

 肩を竦めておく。この双子、会話の間合いが独特そうだ。ペアリングを意識するあまり。野ウサギの夫婦並みに切り離しちゃいけない絆を感じる。
 シャビオに向き直った。

「練習の話に戻すが。あれ・・は、演技と言えるのか?」

 純粋な疑問として投げかける。ここにいる皆、演技経験はオレよりもずっと長い。タメになる一家言くらい持ってるかもしれねえ。感じたことを素直に言う。

「ただ、『形』を真似ていただけのような気がするんだけど」
「まったくだよ。君の言う通りだな」

 シャビオが乗ってくる。メルほどではなかったが、彼の成績も悪かった。運動能力それ自体は平均よりも高そうだったが、反射神経がイマイチで、ホログラムから常に一拍ほどズレるのだ。

「演技で一番重要なのは、対象への理解だろ? どういう性格なのか、どういう人生を歩んできたのか、その場でのポジションは何か。考え抜くことが大事って、俺の父さんは言ってたよ。そこをすっ飛ばし、『形』だけ取り出して真似するというのは、俺たち固有の思想を封じられたも同然だよ。俳優の人性に対する冒涜なんじゃないかな」
「なるほど」

 シャビオの言葉には、大きな説得力があったように思われた。オレの覚えた違和感と似ている。サージェント先生の教えともかなり整合的だ。
 フレアが挑発的に微笑み、シャビオの主張に水を差す。

「あら。私は、参考に値するすごい技術だと思ったわ。もちろん、ホログラムとのズレを数値化するというのは、やり過ぎだと思うけど」

 料理が一つ運ばれてきた。双子の一人、キャシーの注文した料理が運ばれてくる。全員の料理が揃うのを待たず、どころか片割れが頼んだ料理の到着すら待たず、バジルの練り込まれた腸詰肉に、豪快にかじりつく。
 旨そう。

「それでも、ホログラムを忠実に再現するラキは、とてもダイナミックだったし、細かな所作も滑らかかつ自然で、贔屓を抜きにしてもすごく良かったわ。さすが、過去の映像作品から、いい動きを抽出してるだけはある。『心』は確かに大事。けど、『形』も同じくらい、いやもっと大事なのよ」

 芯のある意見だった。そういう分別ある所を狩猟の時にも出してくれれば、もうちょっと子守りが楽だったのに。大自然は人を赤ちゃんに帰すのか。

「でも、自分で考えて動いた方がいい演技するって人もいるでしょ」
「そうね。ジャクソン先生の練習方法は、合う合わないがあると思うわ」
「俺には合わないよ。『精密演技』とやらの練習が、これから一年弱続くのか」
「今日が初回よ。合うか合わないかを決めつけるのはまだ早いわ。じっくり見定めるべきよ」

 キリッとかっこよく締めるフレア。
 痛い勘違いでなければの話だけど、フレアさん、ほぼ初対面のオレに分かりやすく惚れてなかったか? じっくりとは程遠い感じで。
 料理が目の前に料理が置かれた。立ち上る肉と油の香ばしさ。すぐさまフォークを突き刺し、口に入れる。パリッとした食感が素晴らしい。

「あれ。豚だけじゃないなこりゃ。なんの肉だろな」
「さあ。食には詳しくないの」「俺もだ」
「豆肉じゃないかなー」「なんだマメニクって」
「豆から取れた肉っぽい成分を肉風に加工してるの」「とってもヘルシー」
「へえ」「へえ」「へー。あ。話が変わるけど」

 道理で動物って感じが薄いと思った。
 一つ賢くなったところで、フレアがオレたちにこう尋ねる。

「来月の初めに、初代『劇王』の誕生祭があるわよね。みんなどうするの?」
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