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最期まで
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三日目
四日目
五日目
六日め
なのか…...
何日経ったのだろうか。
鎖に縛られて、微かに漏れる日の光すらも見えない。
レイは虚ろな目で目の前で嗤う死神を見る。
両手を鎖で縛られ身動きはできない。
肩の部分がはだけたシャツは血液が垂れた跡が残っていた。
まだ、彼は吸い足りないらしい。
満面の笑みでレイの眼を見つめるデイレスは喉を鳴らしながら冷たい頬を赤らめる。
その表情は、ただの猛獣の形相だ。
番井の片方へと注ぐ底無しの歪んだ愛を最善面に出して。
今宵は満月。
化物の魔力と衝動が最大に達する日だ。
つまり、デイレスは今晩中理性は戻らない。
レイをどこまでも虐めるという訳だ。
酒でも飲んだかのようにふらついた足でレイに寄り添い、無理矢理開けさせた彼の口の中に薬を詰める。
レイもレイで、それを吐き出すことなく喉に通した。
「今までのおさらいだ。飲ませた薬を全て調合して作った特製媚薬で死ぬがいい」
「はあっ、兄さんこれっ、すぐに体が熱くなるぅ……体もっ、敏感になってぇ」
唾液の分泌速度も感度も何もかもが、いつもの如く頬にデイレスの掌が触れているだけで今すぐ絶頂に達しそうだ。
「ひゃううっ……」
レイに更なる性的快感が何度も襲いかかる。
ここ一ヶ月の毎日でデイレスから試された薬は大体九種類。
唾液の分泌の促進の他に感度向上、性欲の増加、心拍の低下……効果なんて数えきれない。
ただ、それを一気に体に入れられたら……
ゾクリとした感覚がレイの中で走る。
膨れ上がる性欲、だろうか。
理性の箍が内側から破壊されそうだ。
これも薬のせいで。
「あああっ!?来るっ、身体中ジンジンしてっ……」
「その泣き顔をもっと俺に見せろっ。俺だってこれでも必死に抑えているんだぞ」
レイのデリケートな部位に躊躇わず触っていくデイレスに興奮が止まらない。
このまま、快楽に溺れられるなら。
兄に身を委ねられるなら。
そんなレイの想いが反映したかのように、彼の頭には動物の耳が。
そして尻からはズボンから尻尾がはみ出ていた。
それらを鷲掴みにするようにデイレスがもふもふと白い毛玉を触っていく。
「ふにゃあ……」
「狼の疑似薬だ。鳴き方が違うだろう?」
そんなデイレスの意地悪に対し、困った表情で「わおんっ」と一吠え喘ぐ。
シャツに手を入れられ、腹を触られる感覚、尻尾として生える偽物の肌をなぞられた瞬間の触発にレイは悶える。
狼どころかこれではただの子犬だ。
レイは無意識に尻尾を左右に振っていた。
鎖をチャリリという硬質な音を響かせ、床に寝転がる。
動物でいうヘソ天だ。
「あおんっ、はあっ、はあ」
「欲にまみれた犬め。粛清してやる」
始めに口、同時に舌で擽られる。
その後吸血されながら尻尾を撫でられて絶頂。
その繰り返しで宵は過ぎていく。
上も下も中もぐちゃぐちゃにされて、気づけば朝日が差していた______気がした。
でも、デイレスの性欲が収まることはない。
そう、性欲が。
そのお陰で黒髪に戻ることはなく、死神の姿を維持していた。
薬の効果もすっかり切れ、快感がとてつもない疲労に変わる。
耳と尻尾が霧消しても、荒げた息と飛び出る舌、レイの見つめる瞳は狼のままであった。
デイレスもまだ足りないそうで、頬を紅潮させて、牙を剥き出しにして嗤う。
「兄さんっ……?」
レイはデイレスの異変に気付いた。
レイが彼の顔にかかった銀髪を掻き分ける。
そこから覗かせたデイレスの瞳は深紅の色を帯びていなかった。
弟と全く同じ、池の水面のように澄んだ灰色をしている。
「瞳の色が赤くない」
「ああ、とうとうなってしまったのか……」
デイレスは分かりきっていた。
何日も同じ血を啜り続けると瞳の色が反映され、最終的にその者の血でしか生きられなく呪いを。
実在する加護を。
淡々とした落ち着く低音でレイに呪いの事を伝える。
「……つまり、レイが死ねば俺も死ぬ。これで最期まで一緒だ」
デイレスは今まで、化物の寿命と人間の寿命が大きく異なり、老いていくレイをいつ看取るのか。
いつこの手から離れていくのか。
それだけをずっと危惧していた。
でもこれなら問題ない。
化物だけが引き起こす病にかかれば実質人間の寿命を生きる期間としてレイと一生居られる。
それなら悔いは……
「……そう」
余りにも素っ気ない返事だった。
しかしその顔は、興味の有無ではなく、何故か哀しそうな表情をしている。
「何か嫌なことでもあったか?」
「それって、僕が死んだら兄さんが死ぬんでしょ?僕の姓で兄さんが生きられなくなるのは、嫌だ」
デイレスは困った笑みをする。
非常に嬉しい我が儘だった。
彼の要望に応えられるものなら一つだけある。
ただ、成功するとも限らず、それでレイが死んだら尚更世界がつまらなく見えるだろう。
そうなったら自害するに決まっている。
でも、出来るなら____。
「レイ、よく聞いてくれ。もし、レイが俺の取った行動で意図せず苦しんで死ぬこととなったらどうする。俺を恨むか?」
実に、突拍子もなく、端的な質問だった。
しかし、レイは迷わずこくりと頷く。
それは否定という意味で。
「僕の人生の死に際がそれなら寧ろ嬉しい。最愛の人に殺されるならそれでいい」
レイの表情は、実に明るく純粋だった。
デイレスが寂しい顔をするまでに。
「そうか……いや、そうだな。俺らは二人、依存しあった特別な関係だ。なら、躊躇うことものない、か」
「そうだよ。さあ、兄さんは僕に何をしてくれるの?」
心の中である決心をしたデイレスが目を瞑るレイに口づけをする。
「準備はいいか……?」
「……ん」
不味い味を感じさせないよう、彼の鼻を詰まんで。
「んっ、ん……」
デイレスは塞いだレイの口にどろっとしたある物を流し込む。
それは舌を伝い、大量に喉へと入っていく。
窒息寸前で本能的に足掻く彼に。
鋭い牙を舌に食い込ませ、深い傷口から大量に湧き出た血液の全てをレイの体内に入れる。
レイを脆弱な人間から抜け出させる為に。
「んぐっ、あうっ……」
苦しい。
息が出来ない。
口移しで流し込まれる何かを必死に飲み込む。
辛い。苦しい。
窒息して死ぬのだろうか。
心臓が命の危機に悲鳴をあげている。
心拍がどんどん遅くなって___
体温も感じなくなって____
あれ、
なのに
何故意識はある?
思考回路も正常だ。
なんならいつの間にか苦しさも消えていた。
レイが目をパチリと開ける。
感覚でも分かる通りデイレスが鼻と口元を塞ぎ、液体を喉に直接流し続けている。
鼻は最早呼吸するための意義を失い、嗅覚のためだけの器官となっていた。
肺も、心臓も、もう機能していない。
でも、不思議と元気で活力が湧いてくる。
それは愛から来るものなのか、感じた事のない抑えきれない欲求か。
レイはデイレスの背中に手を回す。
冷たくなった、人肌を感じさせないその腕で。
(何かが……来る……それも、大きい波みたいに)
疼く、と言うのだろうか。
身体中がゾクゾクとしてくる。
皮膚の一つ一つが生まれ変わるような、新たな体に変わる感覚が駆け巡る。
丸っこかった爪は段々と伸びて黒い光沢を帯びていく。
耳元では骨がパキリと軋み、形状が変化していた。
デイレスの舌にコツリと当たり始めるのは肌を貫く為の牙。
栗色の猫っ毛は登頂部から色素が抜けるように真っ白に変色し、柔らかなうねりは無くなってサラサラなストレートに。
瞳は真っ赤に染まり、獣特有の鋭い瞳孔をしていた。
「っぷはあ」
深紅に濁りきった舌を離し、摘ままれた鼻も解放される。
嗅覚から込み上げてきたのは口内から香る血の臭い。
鉄臭いのに、不快に感じない。
寧ろ拒もうとしても脳が、本能が理性を吹き飛ばそうとしてそれを求めているようで____。
バサリ
レイの腰からシャツを突き破って蝙蝠の翼が生える。
新たなレイの姿は人間の面影はなく、兄だけが分かる柔らかな顔立ちのみが微かに残っている程度だろうか。
そんな兄、デイレスはレイを見て嬉しそうに笑う。
身も心も本物の兄弟になれたから。
「よく耐えたな……!偉いぞ俺の弟」
「これくらいの苦しさなら痛くもないよ。かつてもっと痛い思いをしたからね。村の人間共に」
レイの後ろから生える翼は興奮しているからかパタパタと風を切って羽ばたかせている。
解放感と欲求に満ち溢れたレイは顔を赤らめる。
その顔はデイレスと同じ、妖艶さを帯びた化物の形相だった。
デイレスの血を含み、人間として流れる血が侵食されたことで細胞ごと生まれ変わってデイレスと同じ姿になった。
彼と同じ成分が体に流れている。
それを考えるだけで、レイは心が弾む。
「ねえ兄さん……喉、渇いてきちゃった」
「あらだけ飲んだのにか?ははっ、仕方ない。ほら、俺の首ごと食らえ」
レイが喉を唸らせて、怪しげな笑みを浮かべた。
デイレスがコートを脱ぎ、首筋を露にした瞬間、レイが飛び付く。
そこに理性はない。
抗うことの出来ない吸血衝動のままに牙を突き立てて。
物凄い速度でゴクゴクと彼の血液を体に取り入れる。
それも、彼の血液しか飲めなくなる病になるまでに。
「レイへのプレゼントだ。いつか渡そうと思っていたが、こんなに早く見せられるとはな」
指を鳴らしたデイレスが魔力を使う。
レイの体は禍々しい黒い炎に包まれ、服装が変わった。
デイレスとお揃いのロングコート、ハーフアップの髪型に長い前髪を留めた黒いヘヤピン、デイレスの左右対象のピアスに純愛という名前の身体中に巻かれた包帯が絡まった奇っ怪な、けれども兄とお揃いの衣装に。
そして嵌められた首輪は白い肌が食い込む程に最もきつく絞められて。
「これで……永遠に居られるな」
耳元で囁いたデイレスに牙を血で染め、血眼になったレイが嗤う。
化物の兄弟は離れることなく抱き合って。
「ずっと一緒。ずっと大好き……兄ちゃん」
四日目
五日目
六日め
なのか…...
何日経ったのだろうか。
鎖に縛られて、微かに漏れる日の光すらも見えない。
レイは虚ろな目で目の前で嗤う死神を見る。
両手を鎖で縛られ身動きはできない。
肩の部分がはだけたシャツは血液が垂れた跡が残っていた。
まだ、彼は吸い足りないらしい。
満面の笑みでレイの眼を見つめるデイレスは喉を鳴らしながら冷たい頬を赤らめる。
その表情は、ただの猛獣の形相だ。
番井の片方へと注ぐ底無しの歪んだ愛を最善面に出して。
今宵は満月。
化物の魔力と衝動が最大に達する日だ。
つまり、デイレスは今晩中理性は戻らない。
レイをどこまでも虐めるという訳だ。
酒でも飲んだかのようにふらついた足でレイに寄り添い、無理矢理開けさせた彼の口の中に薬を詰める。
レイもレイで、それを吐き出すことなく喉に通した。
「今までのおさらいだ。飲ませた薬を全て調合して作った特製媚薬で死ぬがいい」
「はあっ、兄さんこれっ、すぐに体が熱くなるぅ……体もっ、敏感になってぇ」
唾液の分泌速度も感度も何もかもが、いつもの如く頬にデイレスの掌が触れているだけで今すぐ絶頂に達しそうだ。
「ひゃううっ……」
レイに更なる性的快感が何度も襲いかかる。
ここ一ヶ月の毎日でデイレスから試された薬は大体九種類。
唾液の分泌の促進の他に感度向上、性欲の増加、心拍の低下……効果なんて数えきれない。
ただ、それを一気に体に入れられたら……
ゾクリとした感覚がレイの中で走る。
膨れ上がる性欲、だろうか。
理性の箍が内側から破壊されそうだ。
これも薬のせいで。
「あああっ!?来るっ、身体中ジンジンしてっ……」
「その泣き顔をもっと俺に見せろっ。俺だってこれでも必死に抑えているんだぞ」
レイのデリケートな部位に躊躇わず触っていくデイレスに興奮が止まらない。
このまま、快楽に溺れられるなら。
兄に身を委ねられるなら。
そんなレイの想いが反映したかのように、彼の頭には動物の耳が。
そして尻からはズボンから尻尾がはみ出ていた。
それらを鷲掴みにするようにデイレスがもふもふと白い毛玉を触っていく。
「ふにゃあ……」
「狼の疑似薬だ。鳴き方が違うだろう?」
そんなデイレスの意地悪に対し、困った表情で「わおんっ」と一吠え喘ぐ。
シャツに手を入れられ、腹を触られる感覚、尻尾として生える偽物の肌をなぞられた瞬間の触発にレイは悶える。
狼どころかこれではただの子犬だ。
レイは無意識に尻尾を左右に振っていた。
鎖をチャリリという硬質な音を響かせ、床に寝転がる。
動物でいうヘソ天だ。
「あおんっ、はあっ、はあ」
「欲にまみれた犬め。粛清してやる」
始めに口、同時に舌で擽られる。
その後吸血されながら尻尾を撫でられて絶頂。
その繰り返しで宵は過ぎていく。
上も下も中もぐちゃぐちゃにされて、気づけば朝日が差していた______気がした。
でも、デイレスの性欲が収まることはない。
そう、性欲が。
そのお陰で黒髪に戻ることはなく、死神の姿を維持していた。
薬の効果もすっかり切れ、快感がとてつもない疲労に変わる。
耳と尻尾が霧消しても、荒げた息と飛び出る舌、レイの見つめる瞳は狼のままであった。
デイレスもまだ足りないそうで、頬を紅潮させて、牙を剥き出しにして嗤う。
「兄さんっ……?」
レイはデイレスの異変に気付いた。
レイが彼の顔にかかった銀髪を掻き分ける。
そこから覗かせたデイレスの瞳は深紅の色を帯びていなかった。
弟と全く同じ、池の水面のように澄んだ灰色をしている。
「瞳の色が赤くない」
「ああ、とうとうなってしまったのか……」
デイレスは分かりきっていた。
何日も同じ血を啜り続けると瞳の色が反映され、最終的にその者の血でしか生きられなく呪いを。
実在する加護を。
淡々とした落ち着く低音でレイに呪いの事を伝える。
「……つまり、レイが死ねば俺も死ぬ。これで最期まで一緒だ」
デイレスは今まで、化物の寿命と人間の寿命が大きく異なり、老いていくレイをいつ看取るのか。
いつこの手から離れていくのか。
それだけをずっと危惧していた。
でもこれなら問題ない。
化物だけが引き起こす病にかかれば実質人間の寿命を生きる期間としてレイと一生居られる。
それなら悔いは……
「……そう」
余りにも素っ気ない返事だった。
しかしその顔は、興味の有無ではなく、何故か哀しそうな表情をしている。
「何か嫌なことでもあったか?」
「それって、僕が死んだら兄さんが死ぬんでしょ?僕の姓で兄さんが生きられなくなるのは、嫌だ」
デイレスは困った笑みをする。
非常に嬉しい我が儘だった。
彼の要望に応えられるものなら一つだけある。
ただ、成功するとも限らず、それでレイが死んだら尚更世界がつまらなく見えるだろう。
そうなったら自害するに決まっている。
でも、出来るなら____。
「レイ、よく聞いてくれ。もし、レイが俺の取った行動で意図せず苦しんで死ぬこととなったらどうする。俺を恨むか?」
実に、突拍子もなく、端的な質問だった。
しかし、レイは迷わずこくりと頷く。
それは否定という意味で。
「僕の人生の死に際がそれなら寧ろ嬉しい。最愛の人に殺されるならそれでいい」
レイの表情は、実に明るく純粋だった。
デイレスが寂しい顔をするまでに。
「そうか……いや、そうだな。俺らは二人、依存しあった特別な関係だ。なら、躊躇うことものない、か」
「そうだよ。さあ、兄さんは僕に何をしてくれるの?」
心の中である決心をしたデイレスが目を瞑るレイに口づけをする。
「準備はいいか……?」
「……ん」
不味い味を感じさせないよう、彼の鼻を詰まんで。
「んっ、ん……」
デイレスは塞いだレイの口にどろっとしたある物を流し込む。
それは舌を伝い、大量に喉へと入っていく。
窒息寸前で本能的に足掻く彼に。
鋭い牙を舌に食い込ませ、深い傷口から大量に湧き出た血液の全てをレイの体内に入れる。
レイを脆弱な人間から抜け出させる為に。
「んぐっ、あうっ……」
苦しい。
息が出来ない。
口移しで流し込まれる何かを必死に飲み込む。
辛い。苦しい。
窒息して死ぬのだろうか。
心臓が命の危機に悲鳴をあげている。
心拍がどんどん遅くなって___
体温も感じなくなって____
あれ、
なのに
何故意識はある?
思考回路も正常だ。
なんならいつの間にか苦しさも消えていた。
レイが目をパチリと開ける。
感覚でも分かる通りデイレスが鼻と口元を塞ぎ、液体を喉に直接流し続けている。
鼻は最早呼吸するための意義を失い、嗅覚のためだけの器官となっていた。
肺も、心臓も、もう機能していない。
でも、不思議と元気で活力が湧いてくる。
それは愛から来るものなのか、感じた事のない抑えきれない欲求か。
レイはデイレスの背中に手を回す。
冷たくなった、人肌を感じさせないその腕で。
(何かが……来る……それも、大きい波みたいに)
疼く、と言うのだろうか。
身体中がゾクゾクとしてくる。
皮膚の一つ一つが生まれ変わるような、新たな体に変わる感覚が駆け巡る。
丸っこかった爪は段々と伸びて黒い光沢を帯びていく。
耳元では骨がパキリと軋み、形状が変化していた。
デイレスの舌にコツリと当たり始めるのは肌を貫く為の牙。
栗色の猫っ毛は登頂部から色素が抜けるように真っ白に変色し、柔らかなうねりは無くなってサラサラなストレートに。
瞳は真っ赤に染まり、獣特有の鋭い瞳孔をしていた。
「っぷはあ」
深紅に濁りきった舌を離し、摘ままれた鼻も解放される。
嗅覚から込み上げてきたのは口内から香る血の臭い。
鉄臭いのに、不快に感じない。
寧ろ拒もうとしても脳が、本能が理性を吹き飛ばそうとしてそれを求めているようで____。
バサリ
レイの腰からシャツを突き破って蝙蝠の翼が生える。
新たなレイの姿は人間の面影はなく、兄だけが分かる柔らかな顔立ちのみが微かに残っている程度だろうか。
そんな兄、デイレスはレイを見て嬉しそうに笑う。
身も心も本物の兄弟になれたから。
「よく耐えたな……!偉いぞ俺の弟」
「これくらいの苦しさなら痛くもないよ。かつてもっと痛い思いをしたからね。村の人間共に」
レイの後ろから生える翼は興奮しているからかパタパタと風を切って羽ばたかせている。
解放感と欲求に満ち溢れたレイは顔を赤らめる。
その顔はデイレスと同じ、妖艶さを帯びた化物の形相だった。
デイレスの血を含み、人間として流れる血が侵食されたことで細胞ごと生まれ変わってデイレスと同じ姿になった。
彼と同じ成分が体に流れている。
それを考えるだけで、レイは心が弾む。
「ねえ兄さん……喉、渇いてきちゃった」
「あらだけ飲んだのにか?ははっ、仕方ない。ほら、俺の首ごと食らえ」
レイが喉を唸らせて、怪しげな笑みを浮かべた。
デイレスがコートを脱ぎ、首筋を露にした瞬間、レイが飛び付く。
そこに理性はない。
抗うことの出来ない吸血衝動のままに牙を突き立てて。
物凄い速度でゴクゴクと彼の血液を体に取り入れる。
それも、彼の血液しか飲めなくなる病になるまでに。
「レイへのプレゼントだ。いつか渡そうと思っていたが、こんなに早く見せられるとはな」
指を鳴らしたデイレスが魔力を使う。
レイの体は禍々しい黒い炎に包まれ、服装が変わった。
デイレスとお揃いのロングコート、ハーフアップの髪型に長い前髪を留めた黒いヘヤピン、デイレスの左右対象のピアスに純愛という名前の身体中に巻かれた包帯が絡まった奇っ怪な、けれども兄とお揃いの衣装に。
そして嵌められた首輪は白い肌が食い込む程に最もきつく絞められて。
「これで……永遠に居られるな」
耳元で囁いたデイレスに牙を血で染め、血眼になったレイが嗤う。
化物の兄弟は離れることなく抱き合って。
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