お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩

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寝顔

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ファビアンのおかげで私はアクラム様の常軌を逸した行動から解放されました。
もちろんファビアンはお咎めなしです。


庭の剪定をしていたら、叫び声が聞こえたから駆け付けたとのことでした。
窓を開けていてよかったと本当に思いました。

アクラム様は鎮静効果、炎症止めの効果のある薬草などを調合したものを香にして嗅いでいただきました。
呼吸は安定してます。


彼の穏やかな寝顔をみれば、今が現実ではなく嘘のような気さえしてきます。
もう一度やり直せるのかなという気持ちになります。
一度霧散したとおもっていた想いも元に戻ってきたかのように感じました。

彼の寝顔を見ていて、私は気持ちをまた整理できなくなってしまいました。

彼の眼の下に隈があって眠れていないことが窺えました。
彼は私を愛していたのでしょうか?
確かに愛していると彼は言いましたが、肉体は別にあったのです。



私たちはどこで間違ったのでしょうか?
それとも初めからなのでしょうか?

考えてもわかりません。


しかし、現実は残酷で報告書が物語っていました。


もし最初からでも、ある時点から間違ったのだとしても、もう元に戻ることは叶わないのです。


彼には随分ひどい言葉を投げつけたと思いました。
兄に
「お前も大概ひどいことをされてるのだがな!」
と鋭く指摘されました。

やはり一度好きになった方なのです、愛して結婚もしたのです。
完全に嫌いになれないのです。






しばらく呆けていると、私の頬にヒンヤリとした空気を感じました。


私は泣いていました。
ぽろぽろと流れる涙、声を出すこともできませんでした。




「貴方のことが好きでした、愛しておりました。」






私は静かなこの部屋で一人アクラム様の寝顔に向かって、別れをもう一度告げました。



















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