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侍女マリアの日記
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「会わない…か。参考までに理由を聞いても良いだろうか?」
ランバート殿下はもちろん私も気になります。
リネージュ様の出した答えを。
「あまり参考にならないかもしれません…ランバート殿下にお訊きしたいのですが、離婚した私はあなた様の目にどのように映っておりますか?」
「私の目にか?ふむ…そうだな。私にはあなたがとても強くみえる。か弱く見せようとしているわけでもなく、強がっているのでもなく精神が強いのだなと話していて感じる。」
「ふふ…誉め言葉として受け取っておきますね、そうですね…私は彼に愛人がいることも私から心が離れていたことも知っていました。でも彼を愛していたので彼から言われるまでは自分がクロス侯爵家から出るとまでは考えていませんでした。」
ふぅとまた少し大きな呼吸をされたリネージュ様に肩掛けをお渡ししました。
「有難う、マリア。そう…でも彼からとうとう離婚を言い渡されました。それはこの病気によって余命宣告をされた日の夜でした。」
それをきいたランバート殿下は目を瞠ってしまわれました。
「なんと…!!」
「いえ、彼は知りませんでした、もちろん離婚する身ですので言えませんでした。でも余命宣告をされて離婚される私は一体どこに身を置く場所があるのかと考えました…すぐに無いと気づきましたが。」
貴族女性は結婚したら基本的に帰る場所はない…最終的には修道院へいくしかなくなるのです。
「彼の子供を産むことができず、彼に愛する人ができて、それから別々の寝室に女性物の香水、それと同じ匂いがする手紙、蔑ろにされる態度。私は死ぬ宣告をされて…私の存在価値とは何だろうかと考えました。」
聞いているだけでも胸が痛む思いです。
リネージュ様の悲痛な叫びを私は初めて聞いたのです
「ランバート殿下…あなた様はさきほど私を強いと仰いましたね。」
「あ…ああ。」
「違うのです。」
「なんだと?」
「それは自分の感情を自分の心の奥底に生き埋めにしてるのです。葬ったのではありません。なぜなら無くならないからです。それは時々ふいに露出し、私を苦しめます。でも私はまたそれを埋めるのです。その繰り返しなのです。埋まっている間は別のことを考えられるのです。私にはこの病気の治療がそうでした。」
「なんと、痛ましい…」
「私は、夫に恵まれませんでしたが、それ以外の周囲の人間にはとても恵まれました。マリアもその一人です。病気と離婚があってそのことに気づけました。なので目を覚ました時、その現実に神に感謝します、生かしてくれてありがとうございますと。」
ちらりとリネージュ様は私を見てくださいました。
そして笑顔を見せてくださるのです。
私は涙をこらえることができませんでした。侍女失格でございます。
「ですが…私たち夫婦は子供のことがあろうとなかろうと離婚していたと思います。」
「それ以外にも問題があったということか?」
「そうですね…今回離婚したのは子供ができないという問題でした。しかし子供が問題なのではなく、私たちは同じ方向を見ていなかったのです。」
「同じ方向?」
コクリと頷くリネージュ様に新しい紅茶を差し出します。
冷めた紅茶でお体を冷やしていただくわけにはいきません。
「そうです、この問題に夫婦で立ち向かっていくことができませんでした。私は口をつぐみ、夫は外に逃避してしまいました。ほかの問題が起こった場合も同じことが起こったでしょう。これはなるべくしてなったんだと思っております。」
「…そうか、いずれにしても君はクロス侯爵に会う気は全くないと?」
「法的な手続きはすでに済んでおります、もし会ったとしても、以前の純粋に彼を慕っていた私には戻れないでしょう。会う理由がないのです。」
「そうか…相分かった。個人的なことを訊いてすまない。」
「いいえ、吐き出せてよかったと思います。聴いてくださり有難うございました。」
カタンと席を立つランバート殿下。
そして、再びリネージュ様に手を差し出されました。
「少し時間をかけすぎた、済まない…部屋まで送ろう。」
「有難うございます、今日は体調が良かったのでようございました。」
そうしてお二人はリネージュ様のお部屋までゆっくりと歩みを進められました。
ランバート殿下はもちろん私も気になります。
リネージュ様の出した答えを。
「あまり参考にならないかもしれません…ランバート殿下にお訊きしたいのですが、離婚した私はあなた様の目にどのように映っておりますか?」
「私の目にか?ふむ…そうだな。私にはあなたがとても強くみえる。か弱く見せようとしているわけでもなく、強がっているのでもなく精神が強いのだなと話していて感じる。」
「ふふ…誉め言葉として受け取っておきますね、そうですね…私は彼に愛人がいることも私から心が離れていたことも知っていました。でも彼を愛していたので彼から言われるまでは自分がクロス侯爵家から出るとまでは考えていませんでした。」
ふぅとまた少し大きな呼吸をされたリネージュ様に肩掛けをお渡ししました。
「有難う、マリア。そう…でも彼からとうとう離婚を言い渡されました。それはこの病気によって余命宣告をされた日の夜でした。」
それをきいたランバート殿下は目を瞠ってしまわれました。
「なんと…!!」
「いえ、彼は知りませんでした、もちろん離婚する身ですので言えませんでした。でも余命宣告をされて離婚される私は一体どこに身を置く場所があるのかと考えました…すぐに無いと気づきましたが。」
貴族女性は結婚したら基本的に帰る場所はない…最終的には修道院へいくしかなくなるのです。
「彼の子供を産むことができず、彼に愛する人ができて、それから別々の寝室に女性物の香水、それと同じ匂いがする手紙、蔑ろにされる態度。私は死ぬ宣告をされて…私の存在価値とは何だろうかと考えました。」
聞いているだけでも胸が痛む思いです。
リネージュ様の悲痛な叫びを私は初めて聞いたのです
「ランバート殿下…あなた様はさきほど私を強いと仰いましたね。」
「あ…ああ。」
「違うのです。」
「なんだと?」
「それは自分の感情を自分の心の奥底に生き埋めにしてるのです。葬ったのではありません。なぜなら無くならないからです。それは時々ふいに露出し、私を苦しめます。でも私はまたそれを埋めるのです。その繰り返しなのです。埋まっている間は別のことを考えられるのです。私にはこの病気の治療がそうでした。」
「なんと、痛ましい…」
「私は、夫に恵まれませんでしたが、それ以外の周囲の人間にはとても恵まれました。マリアもその一人です。病気と離婚があってそのことに気づけました。なので目を覚ました時、その現実に神に感謝します、生かしてくれてありがとうございますと。」
ちらりとリネージュ様は私を見てくださいました。
そして笑顔を見せてくださるのです。
私は涙をこらえることができませんでした。侍女失格でございます。
「ですが…私たち夫婦は子供のことがあろうとなかろうと離婚していたと思います。」
「それ以外にも問題があったということか?」
「そうですね…今回離婚したのは子供ができないという問題でした。しかし子供が問題なのではなく、私たちは同じ方向を見ていなかったのです。」
「同じ方向?」
コクリと頷くリネージュ様に新しい紅茶を差し出します。
冷めた紅茶でお体を冷やしていただくわけにはいきません。
「そうです、この問題に夫婦で立ち向かっていくことができませんでした。私は口をつぐみ、夫は外に逃避してしまいました。ほかの問題が起こった場合も同じことが起こったでしょう。これはなるべくしてなったんだと思っております。」
「…そうか、いずれにしても君はクロス侯爵に会う気は全くないと?」
「法的な手続きはすでに済んでおります、もし会ったとしても、以前の純粋に彼を慕っていた私には戻れないでしょう。会う理由がないのです。」
「そうか…相分かった。個人的なことを訊いてすまない。」
「いいえ、吐き出せてよかったと思います。聴いてくださり有難うございました。」
カタンと席を立つランバート殿下。
そして、再びリネージュ様に手を差し出されました。
「少し時間をかけすぎた、済まない…部屋まで送ろう。」
「有難うございます、今日は体調が良かったのでようございました。」
そうしてお二人はリネージュ様のお部屋までゆっくりと歩みを進められました。
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