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公爵令嬢様は発明好き
口が過ぎますよ
しおりを挟む今まさにレイモンドに掴みかかろうとしていた時に、決して大きくはない声であるが、その凛と通った声が場を支配する。
レイチェルが振り向いた先には居ないはずの女がいた。
確か先ほど親に会いに行くといって消えたアリシアであった。
「私のモノに触れないでくださいませ、レイチェル・カールトン?」
にっこりと微笑むその姿は誰をも魅了する笑顔である。
この場にはそぐわない笑顔であるが…
「うるさいわね!私のモノですって?男を囲うなんて最低ね!公爵家も地に堕ちたもんだわ!!」
はんっと鼻息荒く捲したてる。
「あら?先程は愛人を囲うのは常識云々仰っていた貴女がそれをいいますか?」
ぐぅっとどこから出したかわからない声を出すレイチェル。
レイモンドは動かずにただ成り行きを見守っている。
「レイモンドは私のモノですよ。返して下さいな?そもそも醜いなどと仰る意味がわかりませんが?」
あ、これはすごく怒っているとレイモンドは思った。
同時に嬉しさがこみ上げる。歪んでいるかもしれないが、アリシアの心に自分が居ることが何より嬉しい。
気を引き締めた顔をしたいが嬉しさがこみ上げてきて微妙な表情になる。
「ふん!貴女何も知らないのね!?オッドアイっていうのは前世で悪行を犯した者がなるって常識でしょうが!!それをこの私が面倒を見てあげるっていっているのよ!親切で善良なこの私が!!」
「それを証明できるのですか?」
「は?」
「だから前世で悪行を犯したなどと証明できるのですか?」
「この目が証明でしょっっっ!!」
「は?」
今度はアリシアが同じように返す。
「それは証明ではありません、調べましたが根も葉もない言い伝えでしたわ。根拠のないことをさも真実かのように仰るのは品位が欠けていると思いませんか?貴族として上に立つものとして今一度ご自分の性根をnoblesse obligeに当てはめてみなさい。当てはまらないでしょうけど。口が過ぎますわよカールトン様?」
一息でアリシアは言う。
「さぁ!カールトン侯爵令嬢様!お帰りはこちらでございますわよ?」
ドアから少し離れてアリシアはレイチェルを促そうとする。
「うるさい!うるさい!!お前はいつも私の邪魔をする!!公爵家がなんだ!お前などただの錬金術狂だろうが!!」
突如激昂し、令嬢とは思えぬ言葉を発する。
レイチェルはその顔をひどく歪めている。
「私は王太子妃なる!!私を侮辱したことを許さない!!死刑にしてやる!!!!」
そう言って、突如走り出す。
ドレスを着ているとは思えないスピードでアリシアへ向かってくる。
「お嬢!!!」
流石にこれはレイモンドも慌てる。
しかし、レイチェルを捕まえられず、焦る。
隠し持っていた短刀をアリシアに向ける。
「死ねぇぇ!!!」
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