19 / 24
公爵令嬢様はお持ち帰りする 過去編
王宮を探検!
しおりを挟む「貴方の目綺麗ね!」
そう言って幼子は近づいていった。
それが王国の闇の部分に触れることになるとは彼女も思っていなかっただろう。
幼子の純真無垢は時として危険を孕み、危険に飲み込まれてしまう。
この少女もまたそうなるだろうか。
「……ううぅ…ううう!」
綺麗と言われたモノは唸り声をあげる。まるでそれしか知らないように。
近く幼子…両者の間には何も隔てるものはない。
幼子…アリシアは王宮を探検していた。
隠し通路を把握するべく、父親にひっついて王宮に来ていた。
幼子ながら彼女は
「迷子になってしまった」
とでも言えばいいと安易に考えていた。
いくつかの隠し通路は見つけたし、ルートはわかった。
今から行くところはどこに繋がっているのかなとワクワクした気分で彼女は1人で探検していた。
自分の発明した道具を背中に背負って…
王国のある一室に入った時に違和感を感じ、部屋をくまなく探した。
不自然だがそれを感じさせないように置かれている寝台。きっとあそこに何かあると目星をつけた。
幸い彼女は小さい子供だったので、大人では入られない寝台の下にだって潜ることができた。
慎重に触る。違和感を逃さない。彼女は宝探しをするかのように夢中になった。
そしてある場所で手が止まる。
絨毯の上からでは分かりにくいが、そこに不自然な縫い目があった。
持ってきていた小型のナイフでその糸を切る。
正方形に切られたそこには他の床と一緒のようだが、擦れた跡が見える。
「なるほど、押すのかしら…」
押してみる。しかし幼女の力では動かないらしい。乗ってみる…それでも動かない…
ならばと背負っていた鞄からシュルリと取りだすは…
「ふふんシルクの生地持ってきてよかったわ!重たい荷物運ぶ時に役に立つのよね」
ひとり言をぶつぶつ言いながら、部屋にある、重たそうな本を取り出す。
取り出すのも一苦労であるがそれを運ぶのも一苦労。
彼女は何冊かを生地の上に置き、スルスルと絨毯の上を滑らせていく。
そうして本を重し代わりにする。
ズズッっと徐々に動く。
そしてカチと音がなった。
「やった!」
すると、部屋のどこかが開いた音がした。
若干、湿気を含んだ空気が漂う。
アリシアは寝台から抜け出して見渡す。
そこは大きな鏡があった場所だった。
鏡がなくなって、空洞があいていた。
アリシアは鞄からランタンを取り出す。
自身が使っているアルコールランプを持ち運びできるようにした。
松明が主流だが、残念ながら彼女が持つにはサイズがでかすぎる。
その点アルコールランプは小さいながらも明るいのだ。
替え芯もアルコールも持っている。
鞄はいつも冒険グッズでいっぱいだった。
「さて!行くわよ!お父様に見つからないうちに!!」
そう言って勢いよく空洞に入っていった。
「どこに続いてるのかしら?」
人が2人通れたら充分な通路。迷子にならないように印をつける。
「しかもだれか最近通ったような感じがするわ」
そう、足跡が彼女のものでないものがある。
大人の男性のような大きい足跡だった。
しばらく歩いていると大きい広場のようなところに出た。
「あら?何かあるのかしら?」
ランタンをかざしてみる。
彼女の腕が短いせいか、あまり効果はない。
壁伝いに歩く。
何があるかわからないからだ。
自己責任ではあるが、痛いおもいをしたいわけでない。
ゆっくり歩く。
ガチャン
不意に触ったものは
鉄格子の一部だった。
1
あなたにおすすめの小説
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!
翠月るるな
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。
侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。
そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。
私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。
この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。
それでは次の結婚は望めない。
その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる