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一話 秋風亭流暢
しおりを挟むえー、東京都台東区に位置する「浅草」。東京のみならず日本国内でも随一の観光地であり、最も日本らしさを感じられる観光エリアだ。
江戸時代の下町情緒を感じられるレトロな街並み、浅草で働く活発で温かい人々、歴史ある神社仏閣、日本の食文化が感じられる和菓子やグルメなど、浅草には日本の文化が凝縮されている。
江戸時代には遊興地としても栄え、からくり人形の展示や独楽回しなどの興行が行われていた見世物小屋や遊廓があった。
また、歌舞伎やオペラ、演芸が行われる会場もあり、文化の発信地となっていた。現代でも芸人が活躍する「浅草演芸ホール」があり、その面影は色濃く残る。
近年建てられた世界一高いタワー「東京スカイツリー」も浅草から近く、日本の今と昔を同時に楽しめるエリアでもある。扇子や箸など、日本の工芸品が購入できるお土産屋も多く、日本を満喫するなら必ず訪れるべき観光地だ。
ってことで、浅草を簡単にご紹介させていただきましたが、ま、そんな浅草での人情話でございまして、お付き合いのほどよろしくお願い申し上げます。
えー、雷門の程近くに〈月と萩〉という古い喫茶店がありましてね。知る人ぞ知る下町の人情喫茶で、二代目のマスターは先代の次男坊。歳の頃は四十二、三てとこか。若い頃は無茶もしたらしいが、今では人情味のある穏やかな人柄に変貌を遂げ、そりゃ、誰からも好かれるお人よ。ま、人間てぇのは経験してなんぼだ。な? 無駄な経験はねえ。それがおいらの体験上の答えでい。え? おいらですかい? 単なる客ですよ、〈月と萩〉のね。
カランコロン
「こりゃどうも、流暢師匠、いらっしゃい」
「ちわー、マスター。いつもの」
「はい、いつものね。今日は秋晴れで気持ちいいや」
「確かに。こういう晴天を下から見るとあっぱれだね」
「なんでですかい?」
「縦書きの晴天を下から読むと天晴じゃねぇですか」
「なるほど。上手い!」
「マスター、こんな日はピクニックとかハイキングにでも行きてぇねぇ」
「むしろ、行きたいのは温泉の方じゃないんですか、師匠は」
「エヘッ。マスターもその口だろ?」
「ええ。温泉か……いいなー。上げ膳据え膳で、至れり尽くせりだ。行きてえなー」
「どうです? 今年の冬は一緒に温泉でも」
「いいですね、独身同士。師匠と一緒なら楽しいや」
「じゃ、のんびりと予約でもしときまっさ」
「頼んます。はい、モカお待ち」
「ん~、いい香りだ。コーヒーはやっぱモカに限るね、どうも」
「モカコーヒーとかけて」
「ん? モカコーヒーとかけまして」
「注文するのは一人じゃない! と解く」
「……はて、その心は?」
「お前もか?」
「……上手いね、どうも」
「師匠に感化されちまったかな」
「感化されたら支障を来す、なんちゃって。……ん? どっかで聞いたな、この台詞」
「ところで、新潮師匠は元気ですかい」
「相も変わらず、勝手気ままにやってまっさ」
「たまにゃ、会いたいな」
「今度、連れて来ますよ。ご存じのとおりのわがまま師匠ですが」
「いや、新潮師匠は何をやっても憎めねえ。どっか子供みてぇで」
「そっすか? こちとら、いい迷惑なんですがね」
「前もって電話でも頂けりゃ、新潮師匠の好きな、栗羊羹でも用意しときますよ」
「そうかい? 師匠が喜ぶやな。何せ、甘いもんに目がねぇから。じゃ、そろそろ行くか。高座の時間でい。ごちそうさん!」
「毎度っ!」
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