退屈おばばの、刺激求めて山手線!

紫 李鳥

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6 痴漢だっ!

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 今回は、【佐野心眼】さんからご提供いただいたエピソードをベースに脚色しています。

 佐野心眼さん、ありがとう♪

 痴漢は許さん!





 本日は登録しているエキストラの仕事が入ったので、ショルダーバッグにスカート姿でラッシュ時の電車に乗ったお浜さん。

(イテテ。そんなに押さんでもいいじゃろ?『混んどるコンドルは飛んでいく』じゃな。優先席も寝たふりどもが独占しとるし。すし詰め状態で体を動かす事もできん。ギュウギュウづめの電車の中 抱きしめられているみたい ギュウギュウづめの電車の中 ゆられゆられて夢ごこち~♪……てなわけないだろっ!アッ!後ろの誰かがわしのケツ触っとる。クッ。わしもまだまだイケるのう。……てなわけないだろっ!痴漢は許さん)

 お浜さんは、用心のために持参した針山をポケットから出すと、お尻に触れるものをまち針で突っついた。

 だが、うんともすんとも反応がない。もう一度突っついたが、「痛っ!」の声がない。

 おかしいと思ったお浜さんは、まち針を針山に刺してポケットにしまうと、触れるものに手を伸ばした。

(むむ……硬いっ。革の手袋でもしとるんか?……いや、違う、角がある。……なんじゃ、カバンの角が当たっとったんか。久しぶりにスカート穿いたから、てっきり痴漢だと思った。……トホホ)

 お浜さんは、自分の勘違いにがっかりした。

 肩を落としながらふと視線を上げると、お尻を触る手が目の前で動いていた。

(これこそ、痴漢だっ!)

 現行犯で取っ捕まえようとしたお浜さん。ところが、よく見ると、触っていたのはプリーツスカートを穿いてるほうだった。

 顔を上げて確かめると、触っていたのは女子高生風で、触られていたのは中学生くらいの男子だった。

(ギョギョ……痴女か?)

 女子高生の顔は見えないが、間違いなくその手は男子のお尻を触っていた。

(世の中にはこういう女子高生もおるんじゃな。変態か?……いや。もしかして、二人は知り合いかもしれん。コミュニケーションの一環として触れ合ってるのかも。じゃが、どう見ても男子をからかっているようにしか見えん)
 
 お浜さんが男子を覗き込むと、顔を真っ赤にして俯いていた。……嫌がっている様子だった。

 お浜さんは、ポケットの針山からまち針を抜くと、女子高生の手に刺した。

「痛っ!」

 女子高生が声を出した。お浜さんは素早くポケットの針山にまち針を戻すと、片手でスマホをいじった。

 女子高生は手の甲を擦りながら、お浜さんのほうを見た。

(クッ。「女のくせに男のケツ触ってんじゃないよっ!」っと怒鳴りたいとこじゃが、男子の立場もあるじゃろから、黙っとくか)

 お浜さんは、男子と目を合わせると、ニッと笑って電車を降りた。
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