Fu✕k!F◯ck!Rock!!!

くらえっ!生命保険ビーム!!

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不正、裏切り、やったもの勝ち

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「全くもって品がないな、六々。」

愚痴をつけるような声に視線をむければ
そこにあったのは、見慣れた友人の顔。
シワ一つない白服に格式張った黄色のスーツ。
しかし首元は第二ボタンまで外れ、
同色のネクタイもひどく緩められている。

「全力の出し方は人それぞれさ。
 そこに上品も下品もない、
 そうだろう?フランツ。」

強調されるような胸元にどうしても
吸い寄せられてしまう視線を隠さずに振り返れば、
あいも変わらず不機嫌そうに
顔を歪めてため息をつく。

「舞台に立つ奴らの話じゃない。
 始めにお前の名前をうっただろうが。」

肘をついて、
指先5本でグラスをつまみ上げる
ソイツは静かにそれを傾け、飲み込む。

「与えられた物を手がかりとして扱う奴に、
 それを極めたやつをぶつけるなんて
 品がないやり方じゃないか、と言ってるんだ。」

そう、薄い唇が綴った後に
わざとらしく細めた翡翠の瞳は
蛇を想像させるように絡みついて責め立てる。

「ったく、またアンタは優しくなったね。
 まぁアタイも流石に此処までとは
 思って無かったさ。さてさて…どう睨む?」

「睨むもクソもないな。
 このままじゃ、の音は届かないぞ。」

うざったそうに艶のある銀髪を左手でかきあげて
フランツはぶっきらぼうにステージを睨む。
照らし出されたステージから伸びる光を
その瞳で弾き、その一際変わった光を受けてか
一人でにバチが振り落とされる。

「ァ!?」

驚きの声さえマイクにのって広がらない。
ふりかえれば、ドラムを担当する
剃りの入った男は合図さえなく演奏を始めていた。
それに付随するようにベースとキーボードも。
なぜなんの前準備もなく動き出せるのか?
なぜそれに付き従えたのか?
答えは簡単。
だが、脳がそれを拒む。
を認めてしまえば勝ち目はない。
ステージに立つ理由がない!

「…50人近くを瞬きの間に催眠状態。
 トリガーは音…というよりは振動か。
 呆れた悪癖スキルだな、アイツ。」

「いんや、本人曰く寵愛ロック
 …確か、受胎告知ガブリエルらしいよ。」

わざとらしくため息をつくフランツに
横槍を一つ入れれば、細めた瞳をさらに歪めて
顔全体で不快感をあらわにしていく。

「寵愛だと?あぁ、だから修道服なのか。
 だとしてもネジが外れてるな。」

だが、フランツは呟いた後に
なおも呆れたように乾いた笑いを一つ加える。

「ん?どうしたんだい?」

てっきり、とでも釘を打つべきか。
この優女が笑うことなど
アンナちゃんに関してあるとは思わなかった。

「ふん、見てみろ、六々。
 神に仕える身を主張しながらこの状況ありさまを。
 軒並ぶ奴らは意思を惹かれ
 超常の掌に乗せられている。」

だが、確かにそういえば。
フランツという人間はどこまでも優しい。
付け加えて、
皮肉屋で、自罰的で、正義を嫌って、

「人知を超えた異能が、
 ありもしない絵空事の名前を担って
 我が物顔で往来している。」

善行に生きて、現実主義者で

「まさしくFuckじゃないか。」

無神論者同じ穴の狢だ。
…でも、だからこそ。

どうすりゃ良い!?

焦燥感だけが腕を振るわせて、
不信感だけが心臓を鳴らす。
こんなくだらないシステムに飲み込まれた矢先で
もうすぐ1番目のパートがおわる。

「さぁ、ケイ!どうしますか!?」

幾つかの汗と共にフードがめくれて
歪に口端を歪める化物が吠えた。

「…ッ気が散んだよ!喋んな!」

獣の狂気を孕んだ瞳は魅入るように垂れて
絹糸のような真白の毛皮が朱に染まる。
それが、異質に見えてしかたがない。
その姿に足が竦んでしかたがない。

考えろ!考えろ!

必死にピックを叩きつけるが
この音が届くことがない。
掲げられた赤が染まることはない。

「……。」

現実は決してドラマチックではない。
思考は時間通りに過ぎていく。
苦難に悩む理由は力不足。
不運に苛まれる理由は力不足。
吐き捨てようが、躊躇おうが
その全ての到達点は自らの無力。
確信できる。
このステージには神がいる。
一心不乱に弦をかき鳴らし、
満足を貪欲に噛み砕き笑みを浮かべる神が。

届かない、聞こえないぞ人間ごときじゃ。

「おい、潰れるぞアイツ。」

つまらな気な瞳は
退屈そうにそう呟く。

「…。」

その瞳に晒されるように鍵屋圭の腕が止まる。
ネックを押さえる手もピックを握る手も
そして、苦悶に歪めていた顔も
その全てがダラリと垂れる。
けれど、それに観客が示すことはない。
始めから視界に照らされていなかったように
赤色を掲げる人達は岩見杏奈から目を離さない。

『アハハッ!』

であれば、神は潰えない。
口端を歪めてそれは笑う。

「一介の人間にどうこう出来るものじゃない。
 額縁通りに受け取れ、相手が悪かった。」

数秒の沈黙はない。

「全く、どの時代も厄介なものだな。
 悪癖スキル持ちという奴らは。」

爆ぜる。曲調が反転して、荒波を立たせるように。
全身が総毛立つような感覚で皮膚が波打ち、
鼓膜を貫いて脳に直接電極が差し込まれたように
神経に則って手の震えが止まる。

「らしくないね、フランツ。」

この感覚が心地よい!
私が、私の信仰するRockが!
私を通して、私こそが示している!

「神なんていないよ。
 勿論、機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナだってね。」

もう、音を鳴らす理由がない。
これ以上、此処で足掻く意味がない。

「だったら、は何だと?」

私は今!たった今!
私の!私が!信仰を!あぁ!嗚呼!
今この体は、否!この御本は!

「決まってるだろ?」

こうして、ピリオドを迎える。

■そのものだ!



『アッ…は?』

「人間だよ、ごく普通のね。」

沈黙。
コンマ単位であるかさえわからないもの。
それでも、確かに沈黙があった。
地続きの上り坂に通った、わずかな歪。
ならばその先は

「神はいない。機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナだってね。
 なら、どんでん返しの奇跡もない。
 加えて、神に与えられた試練もない。」

始めて、光に照らされた気がした。
始めて、観客の顔がよく見えた。
始めて、

「なら所詮は、人間同士の小競り合い。
 勝つのはより相手を出し抜いたほうさ。」

高らかに掲げたピックは右腕ごと
とうの昔に振り下ろした。
圧倒的な光量に
肌が焼き焦がされる痛みが心地良い。
そこには、ドラムもベースもキーボードもない。
当然、
当たり前に当たり前だ。
異質なのは、俺の方なのだから。

「…ハハっ…スゲェ。」

ピックスクラッチによってボルテージは駆け上る。
それに釣られるように一点のつぶやきが、広がる。
徐々にではない。
その点同士が干渉することなく、
ただ事実的に、観客の全員が一人でに
その音に魅入られていく。

「サビを踏み台にしてのアドリブ!
 あっはっは!確かに理には適ってるね!
 いや、曲の性質上は大正解さ!」

「全く…本当に品がないな。
 降りたふりをして、
 虎視眈々と狙っていた訳か。」

何と言う、不正Fuck。何と言う裏切りFuck

ふん。お前の言うところのあぁ!けれどッ!何と言う!あぁ!何と言う!。」

やったもの勝ちRockか。」

岩見杏奈の受胎告知ガブリエル
自らの振動を駆使した民衆への強制催眠。
しかし、ロックを信仰する岩見杏奈は
自らに与えられた寵愛の本質を真価として捉えない。
岩見自身が履き違える寵愛の真価は
催眠状態に陥る、一つ前の段階。
詰まる所
岩見は、人が他者と接する際に持つ
不信感や緊張、気遣い。
或いは楽曲を聴く際の
知名度や曲調の好み、作曲者の良し悪しなど
先入観から付加価値に至るその全てを
ノイズとして捉えている。
岩見はこのノイズを除去することで
他者の防衛機能を失わせ、

まさしく、神業がかった演奏と
天性の人心掌握術によってもたらされる
寵愛の如く異能。

それを、鍵屋圭は見逃さなかった。

風化した過去の経験と、研ぎ澄まされた才覚。
詰まる所の『カン』。
微細な違和感と、不完全な確信。
『カン』はそれらを突く唯一の足かがりであり、
土壇場の鍵屋圭に残された諸刃の剣。
鍵屋圭はその剣だけで
鉄火事場へ打って出た。



策略も謀策もない。
自らの快楽を最優先に置いた音。
これこそが、『鍵屋圭の音』。
一見すれば独りよがりで独善的。
しかし、自らの感情は音に乗り他人の心を動かす。
その事実を既に
親愛なる隣人によって。

「…帰るぞ、六々。」

「ん?最後まで見ないのかい?」

ステージからこぼれる光を器用にかわして
フランツは暗がりに顔を隠す。

「せっかくの休暇なんでな。
 …オレはオレの趣味に時間を使わせてもらう。」

サッと踵を返すフランツを
追いかけるように、椅子から降りて駆け寄る。

「ふぅ~~~~ん?あっはっは!
 良いのが作れるといいねぇ!」

「…なんでそうなる。
 別に楽器作りだけが趣味じゃない。」

全く、わかりやすいやつだ

「別にアタイは楽器作りなんて言ってないよ?
 陶芸も絵画もフランツの趣味じゃないか。」

わざとらしくヒールを鳴らして歩く姿もそうだが

「チッ!さっさと帰って飯だ。
 …晩飯の仕込みは済んでるんだろうな。」

「勿論、秘伝の生姜焼きだよ。」

ポケットからはみ出た青色のリストバンドを見て
そう思わずには居られなかった。

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