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2章:時を賭ける少女
第2話
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「なるほど…。これと言って国府に特有の事象は確認できなかったな」
「大きな出来事といえば、隕石の墜落だけれど、国府はあの時、調理部の活動で学校の家庭科室にいた、と言うし…。距離的に隕石に近かったか、という意味では、僕と桜よりも近かったのは、あのアイスクリーム屋のおばさんくらいだからな…」
「隕石が、人体に特殊能力を発現させる程の強力な放射能を持っていたとすれば、お前や桜にもなんらか影響があってもおかしくない、という事か」
「言ってしまえば、豊橋と堀田さんもだ」
「…そうか。そうだな。とりあえず、隕石説は棄却できそうだ」
「もし、国府の他にもなんらかの超能力に目覚めたサンプルが見つかれば、共通点を探る事で要因を深掘りできると思うんだよね。だから、原因追求には、国府の情報だけでは不足なんだよ」
「なるほど。その通りだろう。では、この話はこれで終わりとしよう。情報がなければ仮説に仮説を重ねるしかできることがないからな。仮説をもとに作り上げた仮説は、ただの虚構に過ぎん」
「ところで…国府に訊きたいんだけどさ…」
「…なんですか? 鳴海せんぱい」
「答えづらかったら、黙っていてくれればいい。でも、気になったんだ。さっき神宮前が言った、短時間に多くの命を…って。もしかして国府は…自分自身の寿命を数値化して、確認してしまったんじゃないのか? そして、それが思いの外、短かった…」
「う…うう…」
「国府チャン? そうなの?」
「う…ふ…ふえええぇぇぇぇぇえええん! うえええぇぇぇぇええええん!」
「こ…国府ちゃん…」
「…やっぱりそうだったか…」
「そうか。とすると、お前の人生の価値を最大化するためにも更なる情報が必要だ。単刀直入に訊く。国府よ、お前が確認した自分の寿命は、あとどのくらいだ?」
「豊橋先輩! あんた、本当にデリカシーがないよね!」
「ほう、お前はデリカシーで人が救えると考えているのか」
「くっ…」
「国府ちゃん、大丈夫だよ…。あたしたちがついてる。ほら、抱きしめてあげるからさ。ぎゅううううう」
「…さっちん…やわらかくて、いい匂い」
「そりゃあ、やわらかいよ。桜チャンは、国府チャンが超能力を使って測定した学園のバストサイズランキングで、トップの少女だからね」
「ば、バストサイズランキング…で、トップ…なのか、桜は…」
「国府チャン安心しな。鳴海先輩は、昨日ボクを救ってくれたんだから、今日は国府チャンを救ってくれるよ」
「数学的帰納法みたいに人を便利屋扱いするなよな…。でも、僕や豊橋がいる限り、国府の事を死なせやしないよ」
「あ…ありがとう…ございます。じゃあ…お話しますね」
「国府ちゃん、ゆっくりで、無理しないでいいからね」
「う…うん。ええと…。私、自分の、寿命を数値にする力が本当に嘘なのか試してみたくって…昨日、お風呂あがりに、鏡の前で…」
「そっか、国府ちゃんの超能力は、鏡に映せば、自分の寿命も数値化できるんだね」
「なるほど。で、お前が見た、自分の数値はいくつだったか、教えてもらう」
「ええっと…。多分…分単位で…85,521…でした」
「85,521…か。…ふう…。そうか…。1,425時間だから…大体60日くらいって感じだね…。確かに、突きつけられたら誰だって落ち込む数値だな。でも、大丈夫だよ。対策を立てるには、充分な時間がある」
「そそそ…そうでしょうか…」
「そもそも、僕は今だって、国府の超能力で寿命が数値化できることを疑っているんだぜ? 神宮前の事もあるしね」
「い…今ばっかりは、私…自分の超能力が嘘だったらよかったのに…って思います」
「国府よ。お前の寿命数値化が正確だと仮定してだ。60日という時間範囲が解っただけでもかなりの事を読み解く事ができる」
「かなりの事だって? 豊橋先輩、いい加減な事は言わないでくださいよ。何が解るって言うんスか?」
「なるほど、浅はかであるという事は、同時に度し難い事でもある。お前を見ているとそう思える。頭を使って考えてみろ。人間の死因なんて、そういくらも存在しない。病気、災害、事故、事件。そんなものだろう」
「ああ、その通りだな」
「鳴海くん、どういう事?」
「死亡に至るまでに要する時間の順に、死因を並べ替えて考えればいいんだよ。例えば、病気の場合、当日に罹患して当日に死ぬ、という可能性は高くない。脳卒中、心筋梗塞といった突発の病でもない限り
はね。そして、そういった病で死ぬには、僕たちは若すぎる」
「そっか…。じゃあ、国府ちゃんに定期的に健康診断を受けて貰えば…」
「そうだね。あるいは、病気による死亡は回避できる可能性がある。次に災害だけど、災害であれば、広範囲に影響が及ぶはずだ。地震、津波、隕石…はもう落ちたけど。もし災害が死因なら、事前に調査する事ができる。少なくとも、同時期に同じ要因で死ぬ人が周囲に沢山いる筈だからね。国府は、全員救いたい、って思うかもしれないけれど」
「鳴海先輩…それって、国府チャンが、片っ端から道行く人々の寿命を調べていって、国府チャンと同じくらいの寿命の人がいれば…ってことスか?」
「その理解で間違っていないよ。繁華街にでも行って、複数サンプルをチェックしていけばいい。統計学的には、384人をチェックできれば充分な確からしさを得られる筈だよ。もし、国府とほぼ同じ時期に死ぬ予定の人を一定数以上発見できれば、死因は災害と判断できる。であれば、どこか別の地域にでも、一時的に引っ越せば対策ができる。国府以外に災害で死ぬ予定の人たちを無視すれば、だけれど」
「おおっ! 鳴海先輩、希望が見えてきたじゃないスか!」
「事故、事件は偶発的だから、未然に防ぐのが難しい。先に、病気、災害の可能性を潰しておく事ができれば、事故事件の対策としては、神宮前をそうしたように、国府を監禁してしまう、という手があるよ。大丈夫。僕たちは、国府を助けられる」
「おお! いける、いけるっスよ。国府チャン、やっぱり鳴海先輩に相談してよかったじゃん」
「な…鳴海せんぱい…」
「ん? 国府、どうしたの?」
「さ、さっそくなんですけれど…。私の事を助けてもらってもいいですか…?」
「大きな出来事といえば、隕石の墜落だけれど、国府はあの時、調理部の活動で学校の家庭科室にいた、と言うし…。距離的に隕石に近かったか、という意味では、僕と桜よりも近かったのは、あのアイスクリーム屋のおばさんくらいだからな…」
「隕石が、人体に特殊能力を発現させる程の強力な放射能を持っていたとすれば、お前や桜にもなんらか影響があってもおかしくない、という事か」
「言ってしまえば、豊橋と堀田さんもだ」
「…そうか。そうだな。とりあえず、隕石説は棄却できそうだ」
「もし、国府の他にもなんらかの超能力に目覚めたサンプルが見つかれば、共通点を探る事で要因を深掘りできると思うんだよね。だから、原因追求には、国府の情報だけでは不足なんだよ」
「なるほど。その通りだろう。では、この話はこれで終わりとしよう。情報がなければ仮説に仮説を重ねるしかできることがないからな。仮説をもとに作り上げた仮説は、ただの虚構に過ぎん」
「ところで…国府に訊きたいんだけどさ…」
「…なんですか? 鳴海せんぱい」
「答えづらかったら、黙っていてくれればいい。でも、気になったんだ。さっき神宮前が言った、短時間に多くの命を…って。もしかして国府は…自分自身の寿命を数値化して、確認してしまったんじゃないのか? そして、それが思いの外、短かった…」
「う…うう…」
「国府チャン? そうなの?」
「う…ふ…ふえええぇぇぇぇぇえええん! うえええぇぇぇぇええええん!」
「こ…国府ちゃん…」
「…やっぱりそうだったか…」
「そうか。とすると、お前の人生の価値を最大化するためにも更なる情報が必要だ。単刀直入に訊く。国府よ、お前が確認した自分の寿命は、あとどのくらいだ?」
「豊橋先輩! あんた、本当にデリカシーがないよね!」
「ほう、お前はデリカシーで人が救えると考えているのか」
「くっ…」
「国府ちゃん、大丈夫だよ…。あたしたちがついてる。ほら、抱きしめてあげるからさ。ぎゅううううう」
「…さっちん…やわらかくて、いい匂い」
「そりゃあ、やわらかいよ。桜チャンは、国府チャンが超能力を使って測定した学園のバストサイズランキングで、トップの少女だからね」
「ば、バストサイズランキング…で、トップ…なのか、桜は…」
「国府チャン安心しな。鳴海先輩は、昨日ボクを救ってくれたんだから、今日は国府チャンを救ってくれるよ」
「数学的帰納法みたいに人を便利屋扱いするなよな…。でも、僕や豊橋がいる限り、国府の事を死なせやしないよ」
「あ…ありがとう…ございます。じゃあ…お話しますね」
「国府ちゃん、ゆっくりで、無理しないでいいからね」
「う…うん。ええと…。私、自分の、寿命を数値にする力が本当に嘘なのか試してみたくって…昨日、お風呂あがりに、鏡の前で…」
「そっか、国府ちゃんの超能力は、鏡に映せば、自分の寿命も数値化できるんだね」
「なるほど。で、お前が見た、自分の数値はいくつだったか、教えてもらう」
「ええっと…。多分…分単位で…85,521…でした」
「85,521…か。…ふう…。そうか…。1,425時間だから…大体60日くらいって感じだね…。確かに、突きつけられたら誰だって落ち込む数値だな。でも、大丈夫だよ。対策を立てるには、充分な時間がある」
「そそそ…そうでしょうか…」
「そもそも、僕は今だって、国府の超能力で寿命が数値化できることを疑っているんだぜ? 神宮前の事もあるしね」
「い…今ばっかりは、私…自分の超能力が嘘だったらよかったのに…って思います」
「国府よ。お前の寿命数値化が正確だと仮定してだ。60日という時間範囲が解っただけでもかなりの事を読み解く事ができる」
「かなりの事だって? 豊橋先輩、いい加減な事は言わないでくださいよ。何が解るって言うんスか?」
「なるほど、浅はかであるという事は、同時に度し難い事でもある。お前を見ているとそう思える。頭を使って考えてみろ。人間の死因なんて、そういくらも存在しない。病気、災害、事故、事件。そんなものだろう」
「ああ、その通りだな」
「鳴海くん、どういう事?」
「死亡に至るまでに要する時間の順に、死因を並べ替えて考えればいいんだよ。例えば、病気の場合、当日に罹患して当日に死ぬ、という可能性は高くない。脳卒中、心筋梗塞といった突発の病でもない限り
はね。そして、そういった病で死ぬには、僕たちは若すぎる」
「そっか…。じゃあ、国府ちゃんに定期的に健康診断を受けて貰えば…」
「そうだね。あるいは、病気による死亡は回避できる可能性がある。次に災害だけど、災害であれば、広範囲に影響が及ぶはずだ。地震、津波、隕石…はもう落ちたけど。もし災害が死因なら、事前に調査する事ができる。少なくとも、同時期に同じ要因で死ぬ人が周囲に沢山いる筈だからね。国府は、全員救いたい、って思うかもしれないけれど」
「鳴海先輩…それって、国府チャンが、片っ端から道行く人々の寿命を調べていって、国府チャンと同じくらいの寿命の人がいれば…ってことスか?」
「その理解で間違っていないよ。繁華街にでも行って、複数サンプルをチェックしていけばいい。統計学的には、384人をチェックできれば充分な確からしさを得られる筈だよ。もし、国府とほぼ同じ時期に死ぬ予定の人を一定数以上発見できれば、死因は災害と判断できる。であれば、どこか別の地域にでも、一時的に引っ越せば対策ができる。国府以外に災害で死ぬ予定の人たちを無視すれば、だけれど」
「おおっ! 鳴海先輩、希望が見えてきたじゃないスか!」
「事故、事件は偶発的だから、未然に防ぐのが難しい。先に、病気、災害の可能性を潰しておく事ができれば、事故事件の対策としては、神宮前をそうしたように、国府を監禁してしまう、という手があるよ。大丈夫。僕たちは、国府を助けられる」
「おお! いける、いけるっスよ。国府チャン、やっぱり鳴海先輩に相談してよかったじゃん」
「な…鳴海せんぱい…」
「ん? 国府、どうしたの?」
「さ、さっそくなんですけれど…。私の事を助けてもらってもいいですか…?」
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