コミュ障じゃないボカロPが書いたラノベなんて読まない

ぼを

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サンタの存在証明

第1話

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 12月も半ばを過ぎて、随分と外気の温度が下がってきた。気が付けば、M3 からもう2か月近くが経過している。あれから作った曲は数える程もないけれど、ミコは相変わらず僕の傍にいてくれるし、有香も定期的に連絡を取ってくれたので、例年より寂しい事はなかった。まあ、どちらかというと孤独は嫌いじゃないので、そもそも寂しい、という感情自体が他人よりは薄いかもしれないけれど。

「ねえねえ」ミコがトイレの扉を勢いよく開けて登場すると、言った。「どう? この恰好」
 ミコは、サンタクロースのコスプレをしていた。そうか、もうすぐクリスマスなんだ。

「良く似合ってるよ」僕は、突然のコスプレでの登場に何の驚いた体も見せず、言ってやった。事実、サンタカラ―のミニのワンピースはとても良く似合っていた。「でも、その格好だとパンツが見えそうだね」
 僕の言葉に、ミコは両手でスカートを押さえる様にすると、
「変態!」
 と言った。今更変態もないだろう。よく見ると、上目遣いに頬を染めてはいるけれど、口許では笑っている。ほらね。

 あれから、ミコとは結局一度もセックスに挑戦していない。なんとなく、また陽物が付いていたら…という不安が払えず、勇気を出せずにいる。

「で?」ミコが言った。「クリスマスの予定はどうなってるの?」
 クリスマスの予定ねえ。
「別に、何の予定もないけれど」
 僕の言葉に、ミコはわざとらしく溜息をついた。
「女の子と予定くらいないの? ボクはキミの事が心配だよ」
 と言いながら、リアル彼女が出来たら消えなければならない、という事を彼女は充分認識している。つまり、僕は充分認識している。

「じゃあさ」僕が言った。「ミコと二人で、どこか出かける?」
 僕の言葉に、ミコは目を輝かせて数回頷いた。この展開を狙ってたのかな?
「どうする? またコンサートとかでもいいよ? このコスプレで出歩いてもいいよね?」
 どうせ他人には見えないから、裸で出歩いて貰ったって構やしないよ。
 僕の心を読んだのか、ミコは、キシシ、と歯を見せて笑った。そういえば、同じ笑い方をする有香からは何も連絡してこないな。かといって、こちらから誘うのも、どうにも鼻白んでしまう。

「クリスマスプレゼント!」ミコが言った。「新しい歌で良いよ」
 僕は苦笑した。まさか、タルパにプレゼントをねだられるとは思わなかった。でも、歌、というのが彼女らしい。そりゃあ、物質的なプレゼントは彼女にはあまり意味がない。概念的な贈物が適当。
「いいね」僕が返答した。「どんな歌がいいかな?」
「クリスマスソングがいいな」
 クリスマスソングか…。思えば、あまり季節柄を反映した歌や曲を作ったことがない。ラブソングとかなら年中聴いてもらえるかもしれないけれど、クリスマスソングは当日から遡って精々1週間くらいしか聴いてもらえないから、人に聴いてもらう事を考えると、とても効率が悪い。でも、こういう機会じゃないと作らないのも事実。
「解ったよ」僕が返した。「クリスマスソングを考えてみるよ」
 僕の言葉に、ミコは、えへへ~、と声に出して微笑むと、ありがとう、嬉しいな、と言った。

「サンタさんの事」ミコが言った。「いつまで信じてた?」
 サンタクロースの存在について? そう言えば、いつまで信じてたろうか。というより、そもそも信じていた事があったかも覚えていない。記憶にあるのは、なんかのイベントで祖父がサンタクロースの恰好をしていた事くらいで、多分、その時初めて、サンタクロースなんかいないんだ、という認識を持ったと思うのだけれど、それ以前からも信じていたかと言われると、結構怪しい。

 然し、まさか、存在証明がそもそもできないタルパの口から、そんな質問が出てくるとは。一層、サンタクロースのタルパでも作ればよかったか?

「その質問ってさ」僕が言った。「ミコが一番よく知ってるんじゃないの?」
 僕の言葉に、ミコは意地悪そうな笑顔を見せた。
「教えてあげないよ~だ」
 ケチ。

 でも、サンタの存在を信じる信じないって、難しい問題だ。子供からすれば、単純にプレゼントをくれる人が両親であるのか、それとも、子供の想像の枠では捉えられない超越的存在であるのかの違いかもしれないが、拡大解釈すれば、これは神の存在をどう扱うか、にまで発展させる事も出来そうだ。神は死んだ、って言っていたのは、ニーチェだったろうか。でも、宗教は世の中の成り立ちや不条理を説明し理解する為の手段であり、神を崇める事や、神の存在について議論する事自体はあまり意味がないし、合目的的ではないと、僕は考えている。だから、宗教の対義語が科学だというのは、相応に得心が行く。僕等が認知する事象の成り立ちを、どのような手段で説明するか、の違いにしか過ぎない。だから、そういう意味では、確かに神は存在するだろうし、同じくらい正しく、物理学の法則はこの物質世界を支配している。だから、サンタはやっぱり、存在していると考えた方がロマンがあるな。
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