コミュ障じゃないボカロPが書いたラノベなんて読まない

ぼを

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そよよ

第4話

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 僕は思わず、
「どっちだよ」
 と、少しだけ笑いながら訊いてしまった。ミコはそれに、微笑みで以て返答した。

 ミコが、腰を動かし、僕と距離を縮めた。彼女の長い髪の毛が、僕の腕にかかった。
「ボクはキミのタルパだから…」ミコが言った。「キミの知らないキミ、というか、キミが覚えていないキミについては伝える事ができるけど」言いながら、ミコは僕の手に、彼女の手をそっと重ねた。「未来の事が予測できる訳じゃないんだよ」ミコは、上目遣いで僕の瞳を覗き込んだ。「だから、あの娘とキミがどうなるか、という事は、解らないんだから…」
 僕は、ミコの視線にたじろぎながら、小さく頷いた。確かに、ミコは預言者じゃない。だから、僕の精神の一部ではない有香について、何も予測する事はできないという事だ。
 僕の心の声に、ミコは眼を細くして微笑んだ。

「何か、話してあげよっか?」ミコが言った。
「話すって…」僕が言った。「何を?」
「キミが知らない、キミの事」
 それって
「僕が忘れている昔の記憶とか、そういう事?」
 ミコは、小さく、キシシ、と笑うと、頷いた。

 僕は、自分が覚えている一番、稚さな時の記憶ってなんだろう、と思い巡らしてみた。微かに覚えているのは、幼稚園に入る前の、恐らく2歳か、3歳くらいの記憶だ。母親と一緒に近所の公園に遊びに行き、地面に落ちていた大きな石、といっても、当時の自分の手のひらにとっての大きさだけれど、を、ブランコで遊んでいる女の子に向かって投げた。石は女の子にあたらなかったが、母親は僕の事を叱り、女の子に謝る様に諭した。けれど、僕には、自分が悪い事をした実感がなかったから、謝る事ができずに、代わりに母親が謝った。そんな記憶だ。しかし、なんでこんな出来事を、一番古い記憶として持っているんだろう…。あまりにも変哲がないのに、そんなに印象的だったんだろうか。
「記憶がねじ曲がっている、という事は、あるよね」
 ミコの言葉に、僕は、ドキッとした。それって、この記憶が都合よく後から、僕の意識だか無意識だかによって、書き換えられているって事? そんな、ラノベじゃないんだから…。

「実は、女の子に…」僕が伺う様に言った。「石が、当たっていた…?」

 僕の質問に、ミコは、だとしたら、とはぐらかすように答えた。僕は、混乱した。それから、何故、ミコがそんな事を言うのかを考えた。ミコは、自分から、教えてあげる、と言いながら、僕の意識で以て、この記憶を意図的に呼び起こさせた。つまり、ミコは僕の意識を侵食してみせた。ミコの、教えてあげる、が、僕の、自分で思い出す、と同義だった。これって…
「ごめん」ミコが言った。「警戒させちゃったね。でもボクには、キミの体を乗っ取るようなつもりはないから…安心して欲しいな」
 中野の友人も言っていたが、タルパが主の体を乗っ取って行動する、という事は、事実としてあるらしい。つまり、多重人格状態になり、タルパという人格および記憶のパーティションが、この体を以て、主の意識が眠っている内に行動をしてしまう、というのだ。
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