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第五話 「店の安全管理問題」
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店に向かう路地を曲がった瞬間、俺は思わず足を止めた。
——引き戸が半分開いたまま。
しかも、外からでも中の灯りとカウンターが丸見えだ。
(……鍵、かけ忘れた?)
心臓が少し速くなる。
扉をそっと開けると、店主はカウンターの奥で、何やら包丁を動かしていた。
「……こんばんは」
「あ、いらっしゃい。今日はちょっと早いね」
「……今、外の戸が開いてました」
「うん。開けっぱなし」
「……は?」
「だって、入りたい人が入れなくなると悲しいでしょ」
俺は数秒、返す言葉を探した。
「いや、防犯的に問題です」
「えー。じゃあ、誰かがお腹すいて来たとき、どうするの?」
「それは営業時間内に来てもらうしか——」
「お腹って、時間決められないよ?」
またその理屈か。
俺は額を押さえた。
「……泥棒が入ったらどうするんです」
「お腹すいてるなら、ごはん出すけど」
真顔で言っているのが恐ろしい。
俺の常識のどこにもない対応だ。
「……その時は、俺に連絡してください」
「うん。じゃあ番号教えて」
あまりにも自然に返され、つい携帯を差し出していた。
登録画面に並ぶ名前の欄。
店主は自分で打ち込み、「店主」と保存した。
「これで、開けっぱなしでも安心だね」
安心するポイントが、俺とはまるで違う。
——引き戸が半分開いたまま。
しかも、外からでも中の灯りとカウンターが丸見えだ。
(……鍵、かけ忘れた?)
心臓が少し速くなる。
扉をそっと開けると、店主はカウンターの奥で、何やら包丁を動かしていた。
「……こんばんは」
「あ、いらっしゃい。今日はちょっと早いね」
「……今、外の戸が開いてました」
「うん。開けっぱなし」
「……は?」
「だって、入りたい人が入れなくなると悲しいでしょ」
俺は数秒、返す言葉を探した。
「いや、防犯的に問題です」
「えー。じゃあ、誰かがお腹すいて来たとき、どうするの?」
「それは営業時間内に来てもらうしか——」
「お腹って、時間決められないよ?」
またその理屈か。
俺は額を押さえた。
「……泥棒が入ったらどうするんです」
「お腹すいてるなら、ごはん出すけど」
真顔で言っているのが恐ろしい。
俺の常識のどこにもない対応だ。
「……その時は、俺に連絡してください」
「うん。じゃあ番号教えて」
あまりにも自然に返され、つい携帯を差し出していた。
登録画面に並ぶ名前の欄。
店主は自分で打ち込み、「店主」と保存した。
「これで、開けっぱなしでも安心だね」
安心するポイントが、俺とはまるで違う。
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