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ーぽとり、しゅわん。ー
特別編「こくん、あまい。」
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冬がやわらぎ、庭園の温室には早咲きの花がほころんでいた。
しんとした空気に、甘い香りが「ふわん」と漂う。
丸い木の卓上に並べられたティーカップ。
リリアナは両手で包み込むように持ち上げ、「こくん」と口に運んだ。
花の香りが溶け込んだ紅茶は、ほんのり甘くて胸の奥まで広がっていく。
「……あまい」
思わず零したつぶやきに、向かいのアレクシスが目を細める。
「そうですか? 私は少し苦みを感じましたが」
彼も「こくん」と口に含み、ふと彼女を見つめた。
リリアナは小さく首を振る。
「違うんです。紅茶の味もそうですけれど……。
あなたと飲むから、余計に“あまい”のです」
その言葉に、アレクシスの頬がわずかに赤く染まった。
彼はカップを置き、指先で縁を「とん」と叩く。
「リリアナ。……あなたは本当に、私の胸を揺らしますね」
「え?」
「私の人生はずっと、淡々とした味わいだと思っていました。
けれど、あなたと共にあるだけで“あまさ”が混じる」
リリアナの心臓が「とくん」と跳ねた。
彼の視線は真剣で、けれど不器用に照れている。
「……甘すぎるのは、苦手ではありませんか?」
少し不安げに問いかけると、アレクシスは即座に答えた。
「いいえ。あなたがくれる“あまさ”なら、いくらでも」
紅茶の香りとともに、ふたりの間にあたたかな沈黙が流れる。
「こくん」と一口飲むたびに、心まで甘く満たされていった。
しんとした空気に、甘い香りが「ふわん」と漂う。
丸い木の卓上に並べられたティーカップ。
リリアナは両手で包み込むように持ち上げ、「こくん」と口に運んだ。
花の香りが溶け込んだ紅茶は、ほんのり甘くて胸の奥まで広がっていく。
「……あまい」
思わず零したつぶやきに、向かいのアレクシスが目を細める。
「そうですか? 私は少し苦みを感じましたが」
彼も「こくん」と口に含み、ふと彼女を見つめた。
リリアナは小さく首を振る。
「違うんです。紅茶の味もそうですけれど……。
あなたと飲むから、余計に“あまい”のです」
その言葉に、アレクシスの頬がわずかに赤く染まった。
彼はカップを置き、指先で縁を「とん」と叩く。
「リリアナ。……あなたは本当に、私の胸を揺らしますね」
「え?」
「私の人生はずっと、淡々とした味わいだと思っていました。
けれど、あなたと共にあるだけで“あまさ”が混じる」
リリアナの心臓が「とくん」と跳ねた。
彼の視線は真剣で、けれど不器用に照れている。
「……甘すぎるのは、苦手ではありませんか?」
少し不安げに問いかけると、アレクシスは即座に答えた。
「いいえ。あなたがくれる“あまさ”なら、いくらでも」
紅茶の香りとともに、ふたりの間にあたたかな沈黙が流れる。
「こくん」と一口飲むたびに、心まで甘く満たされていった。
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