夜明け草の誓い ―政略で結ばれたふたりが見つけたのは、孤独を越える小さな光―

だって、これも愛なの。

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プロローグ

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宮殿の大広間は、きらめく水晶灯に照らされ、天蓋のような夜空を模した天井には星々が散りばめられていた。
人々は笑い、杯を掲げ、音楽とともに舞う。
その賑やかな渦の中で、俺はただ一人、冷めた心を抱えたまま立っていた。

――また、同じだ。
華やかさに包まれても、心の奥はどこまでも静まり返っている。
この場で誰と目を合わせても、俺を「人」として見る者はいない。
王弟として、名門の子として。
それ以外の意味を、誰も俺に与えてはくれない。

「殿下、本日の婚約者をご紹介いたします」

そこにいたのは、まだ幼さを残す少女だった。

淡いドレスの裾を両手でそっとつまみ、深く礼をする。
その仕草は拙いのに、不思議と愛らしい。
光の粒を映す瞳は、まるで水面に浮かぶ星を拾い集めているように澄んでいた。

「リリアナ・フローレンスと申します。……お会いできて、光栄です」

小鳥のような声が、大広間のざわめきに溶ける。
その瞬間、胸の奥で何かが微かに鳴った。

どうしてだ。
なぜ俺は、この無垢な少女の一挙一動に、目を奪われているのだろう。

婚約――それはただの政略。
愛など求められていない。
俺も、求めてはいけない。

それでも。
花の香に顔をほころばせる姿を見ていると、冷たく閉ざしていた心に、ひどく柔らかな風が差し込んでくるようで……。

俺は、困惑を隠すように杯を口へ運んだ。
唇に触れた酒の苦味すら、妙に遠い。

――名ばかりの婚約者。
けれど、この夜、確かに俺は「孤独ではないかもしれない」と思ってしまった。
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