夜明け草の誓い ―政略で結ばれたふたりが見つけたのは、孤独を越える小さな光―

だって、これも愛なの。

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番外編 照れていらっしゃいます?(リリアナ視点)

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夜空に散る星を見上げながら、わたしは頬を押さえていました。
胸がまだ、どきどきしているのです。

――「お前は、ただ愛らしく笑っていればいい。……それが、私の救いになる」

あの言葉を思い出すたび、心があたたかくて、くすぐったくて。
殿下はいつも難しい顔をなさってばかりだから、笑ってくださったときのことを思うと余計に胸がいっぱいになります。

「……笑顔、見せていただけましたものね」
小さくつぶやいた声は、夜の風にさらわれてしまいました。

でも、あの笑顔をまた見たいのです。
そのために、わたしができることは――。

翌朝、思いついたのはお菓子作りでした。
庭園に咲いた夜明け草の花びらを思い出して、同じ色合いのジャムを添えたタルトを焼き上げるのです。
小さくて、素朴で、でも心を込めて。

殿下は執務室で書類に向かっていらっしゃいました。
扉を叩くと、低い声が「入れ」と返ってきます。

「お忙しいところ失礼いたします。あの……お菓子を作ってみました。よろしければ、お口に合えばと……」

わたしが差し出した皿を見て、殿下はわずかに目を見開かれました。
そして、ためらいがちにフォークを手に取り、一口。

「……甘いな」

「す、すみません。甘すぎましたか?」

「いや」
殿下はふいに視線を逸らしながら、小さく息をついた。
「……悪くない。……いや、むしろ……」

その頬が、ほんのり赤くなっているのを見て、わたしは思わず笑ってしまいました。

「殿下が……照れていらっしゃいます?」

「……余計なことを言うな」

いつもの冷ややかな声色のはずなのに、わたしには照れ隠しにしか聞こえません。
その様子がとても可愛らしくて、胸の奥がまたきゅんとしてしまいました。

――わたしも、殿下にとって「救い」でありたい。
その願いを胸に、今日も笑顔で隣にいようと、そっと決めるのです。
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