夜明け草の誓い ―政略で結ばれたふたりが見つけたのは、孤独を越える小さな光―

だって、これも愛なの。

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番外編 夜の回廊にて

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夜更けの宮殿は、静寂に包まれていた。
長い回廊に灯る燭台の炎が、淡く壁を照らし、窓の外には星空が広がっている。

俺は眠れず、ひとり歩いていた。
執務に追われるうち、心は休まらず、胸の奥に沈む孤独は消えない。
――そう思っていたのに。

「殿下……」

振り返れば、そこにリリアナがいた。
薄手の羽織を肩に掛け、控えめに立っている。
月明かりに照らされたその姿は、儚くも愛らしい。

「……眠れぬのか」

「はい。……なんとなく、です」
小さな声で答える彼女を見て、俺は思わず苦笑した。
同じだ。俺もまた、眠れずにここにいる。

ふたり並んで歩き出す。
石造りの回廊に足音が響くたび、不思議なほど心が落ち着いていく。

沈黙の中、俺は言葉を探した。
――今まで、誰にも言えなかったこと。

「リリアナ」
名を呼ぶと、彼女は少し驚いたように顔を上げた。
その瞳は星を映して、澄んでいる。

「……俺はずっと、孤独に慣れていた。
求められるのは役割ばかりで、誰かに必要とされても、それは“人”ではなく“肩書き”としてだった」

歩みを止める。
言葉が胸の奥からせり上がり、抑えられない。

「だが……お前は違う」

リリアナが瞬きをする。
その小さな肩がわずかに震えているのを見て、俺は迷いなく続けた。

「お前が笑うと、俺は……救われるのだ」

長い間、口にできなかった真実。
声にした途端、胸の重みが解けるようだった。

リリアナは目を潤ませ、やがて微笑んだ。
「わたしは……殿下のお役に立ちたいと願っていました。
でも、もしわたしの笑顔が殿下の救いになるなら……それ以上の幸せはありません」

その言葉に、胸が熱くなる。
気づけば、彼女の手を取り、唇を寄せていた。
手の甲に触れた一瞬の口づけ――それは誓いのように静かで、深い。

「……お前だけは、離さぬ」

夜の回廊に、俺の低い声が響く。
星々の瞬きが祝福するかのように、窓から差し込んでいた。
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