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第7話『小比類巻陸の恋愛ノート(全10巻)』
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「これ、何?」
放課後の図書室。
空き教室の片隅で、望月 紬は、ひときわ分厚いノートを見つけた。
「“運命的出会いに関する考察と仮説”……?」
「あ、それはっ……!!」
小比類巻 陸が、慌ててノートを隠そうとする。
「ま、待って!今ちょっとだけ!
ほら、こういうのって“気になると余計に読みたくなる”法則あるから!たぶんどっかの心理仮説にもあるやつ!」
「心理じゃなくて、君の好奇心の話でしょ!?返して!!」
「──っていうか、これ、10冊もあるの?」
「…………ある」
⸻
◾️ノートの中身(一部抜粋)
◎第2巻より:
『君が振り向いた角度と、窓から差す光の屈折率が一致したとき、
心が騒いだ。それは錯覚か、それとも“始まり”だったのか』
「……詩人なの?」
「いや、これは観察記録だから。定量的分析の一環……」
「……次」
⸻
◎第5巻より:
『万が一、きみが泣いたときのために、
ポケットティッシュを2重に持ち歩いている。
1枚は使う用、1枚は“あげる用”』
「ちょっと待って、それ私のため?」
「そ、それは……“一般的に”涙は恋のトリガーになりやすいから、万が一に備えて……!」
「でも、2重に持ってるのやさしいじゃん」
「ち、ちがっ、これはあくまで準備の一環であり、気配りというより戦略というか……」
「ふふっ」
⸻
◎第9巻より:
『手がふれたとき、心拍が3.2秒だけ早くなった。
あれは物理的接触による反射か、それとも──
……それとも、“好き”なのか?』
──ページの文字が、ここだけ少し乱れている。
「……」
紬は、黙ってノートを閉じた。
「……なんで、こんなに真剣なの?」
「この前も言ったけど、
どうせなら、俺は“完全無欠のハッピーエンド”が欲しいんだよ」
「でもさ──本当に、そんなものあるの?」
陸は少し黙って、
それからまっすぐに、紬を見た。
「……もし、“きみがそこにいる”っていう結末なら、
俺にとっては、それが“完全無欠”なんじゃないかって、
最近、思うようになった」
「………………」
紬は、目をそらした。
何かを隠すように、かすかに笑って。
「──じゃあ、そのエンドロール、期待してるよ」
⸻
◾️つづく
放課後の図書室。
空き教室の片隅で、望月 紬は、ひときわ分厚いノートを見つけた。
「“運命的出会いに関する考察と仮説”……?」
「あ、それはっ……!!」
小比類巻 陸が、慌ててノートを隠そうとする。
「ま、待って!今ちょっとだけ!
ほら、こういうのって“気になると余計に読みたくなる”法則あるから!たぶんどっかの心理仮説にもあるやつ!」
「心理じゃなくて、君の好奇心の話でしょ!?返して!!」
「──っていうか、これ、10冊もあるの?」
「…………ある」
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◾️ノートの中身(一部抜粋)
◎第2巻より:
『君が振り向いた角度と、窓から差す光の屈折率が一致したとき、
心が騒いだ。それは錯覚か、それとも“始まり”だったのか』
「……詩人なの?」
「いや、これは観察記録だから。定量的分析の一環……」
「……次」
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◎第5巻より:
『万が一、きみが泣いたときのために、
ポケットティッシュを2重に持ち歩いている。
1枚は使う用、1枚は“あげる用”』
「ちょっと待って、それ私のため?」
「そ、それは……“一般的に”涙は恋のトリガーになりやすいから、万が一に備えて……!」
「でも、2重に持ってるのやさしいじゃん」
「ち、ちがっ、これはあくまで準備の一環であり、気配りというより戦略というか……」
「ふふっ」
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◎第9巻より:
『手がふれたとき、心拍が3.2秒だけ早くなった。
あれは物理的接触による反射か、それとも──
……それとも、“好き”なのか?』
──ページの文字が、ここだけ少し乱れている。
「……」
紬は、黙ってノートを閉じた。
「……なんで、こんなに真剣なの?」
「この前も言ったけど、
どうせなら、俺は“完全無欠のハッピーエンド”が欲しいんだよ」
「でもさ──本当に、そんなものあるの?」
陸は少し黙って、
それからまっすぐに、紬を見た。
「……もし、“きみがそこにいる”っていう結末なら、
俺にとっては、それが“完全無欠”なんじゃないかって、
最近、思うようになった」
「………………」
紬は、目をそらした。
何かを隠すように、かすかに笑って。
「──じゃあ、そのエンドロール、期待してるよ」
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◾️つづく
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