「幼馴染は、安心できる人で――独占する人でした」

だって、これも愛なの。

文字の大きさ
9 / 15

第8話 揺れる気持ち

しおりを挟む
ここ最近のレオンは、変わらず優しい。
「疲れてるだけだよ」と笑い、いつも通りに隣を歩いてくれる。
それなのに――エリナの胸は、どこか締めつけられるように痛むのだった。



放課後の図書室。
窓から射す光が、棚の影を長く伸ばしている。
エリナは本を開いたまま、視線を動かせずにいた。
隣にはいつも通りレオンが座っている。
ページを繰る音が静かに響き、穏やかな空気が流れているのに……。

「……レオン」
「ん?」
「この前、あんなふうに言ったの、覚えてる?」

レオンの指がページの上で止まる。
「この前?」
「……“俺は譲らない”って。誰にも渡さないって」

エリナは自分でも頬が熱くなるのを感じた。
普段の彼からは考えられない強い言葉。
驚いたはずなのに、思い出すたび胸の奥が熱くなる。

「……ああ」
レオンは短く答え、視線をそらした。
「忘れてくれていいよ」
「忘れられないよ」

思わず口をついて出た一言に、エリナははっと息を呑む。
けれど本心だった。
安心できるだけの幼馴染――そう思っていたはずなのに、あの時の言葉は胸の奥深くに残って離れない。

(どうしてだろう……安心するだけじゃない。レオンの言葉ひとつで、わたし、こんなにも揺れてる)

無邪気に笑っていればいいと思っていた。
お兄様のような存在だと、褒めて伝えてきた。
けれど今は、その“似ている”という言葉を口にすることが怖い。
彼がどんな顔をするか、もう知ってしまったから。

「エリナ」
名前を呼ばれて顔を上げると、レオンが穏やかに微笑んでいた。
優しい笑顔。
でも、その奥に隠された感情が、今ははっきりと感じ取れてしまう。

(わたし……レオンを、“安心できる幼馴染”以上に見てる?)

自分の中に芽生えた感情を、まだ言葉にはできない。
ただ胸の鼓動だけが、真実を訴えるように速くなっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたへの愛を捨てた日

柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。 しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。 レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。 「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」 エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。

男装騎士団長は密かに副団長を恋慕う

麻麻(あさあさ)
恋愛
亡命して恋したのは騎士団長の彼でした。 (全4話) 3月4日21時、22時と5日21時、22時 2日に分けて公開。 両片思いの2人が幸せになるまでの短編。

あなたの片想いを聞いてしまった夜

柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」 公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。 政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。 しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。 「好きな人がいる。……片想いなんだ」 名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。

『話さない王妃と冷たい王 ―すれ違いの宮廷愛

柴田はつみ
恋愛
王国随一の名門に生まれたリディア王妃と、若き国王アレクシス。 二人は幼なじみで、三年前の政略結婚から穏やかな日々を過ごしてきた。 だが王の帰還は途絶え、宮廷に「王が隣国の姫と夜を共にした」との噂が流れる。 信じたいのに、確信に変わる光景を見てしまった夜。 王妃の孤独が始まり、沈黙の愛がゆっくりと崩れていく――。 誤解と嫉妬の果てに、愛を取り戻せるのか。 王宮を舞台に描く、切なく美しい愛の再生物語。

むにゃむにゃしてたら私にだけ冷たい幼馴染と結婚してました~お飾り妻のはずですが溺愛しすぎじゃないですか⁉~

景華
恋愛
「シリウス・カルバン……むにゃむにゃ……私と結婚、してぇ……むにゃむにゃ」 「……は?」 そんな寝言のせいで、すれ違っていた二人が結婚することに!? 精霊が作りし国ローザニア王国。 セレンシア・ピエラ伯爵令嬢には、国家機密扱いとなるほどの秘密があった。 【寝言の強制実行】。 彼女の寝言で発せられた言葉は絶対だ。 精霊の加護を持つ王太子ですらパシリに使ってしまうほどの強制力。 そしてそんな【寝言の強制実行】のせいで結婚してしまった相手は、彼女の幼馴染で公爵令息にして副騎士団長のシリウス・カルバン。 セレンシアを元々愛してしまったがゆえに彼女の前でだけクールに装ってしまうようになっていたシリウスは、この結婚を機に自分の本当の思いを素直に出していくことを決意し自分の思うがままに溺愛しはじめるが、セレンシアはそれを寝言のせいでおかしくなっているのだと勘違いをしたまま。 それどころか、自分の寝言のせいで結婚してしまっては申し訳ないからと、3年間白い結婚をして離縁しようとまで言い出す始末。 自分の思いを信じてもらえないシリウスは、彼女の【寝言の強制実行】の力を消し去るため、どこかにいるであろう魔法使いを探し出す──!! 大人になるにつれて離れてしまった心と身体の距離が少しずつ縮まって、絡まった糸が解けていく。 すれ違っていた二人の両片思い勘違い恋愛ファンタジー!!

『すり替えられた婚約、薔薇園の告白

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢シャーロットは幼馴染の公爵カルロスを想いながら、伯爵令嬢マリナの策で“騎士クリスとの婚約”へとすり替えられる。真面目なクリスは彼女の心が別にあると知りつつ、護るために名乗りを上げる。 社交界に流される噂、贈り物の入れ替え、夜会の罠――名誉と誇りの狭間で、言葉にできない愛は揺れる。薔薇園の告白が間に合えば、指輪は正しい指へ。間に合わなければ、永遠に 王城の噂が運命をすり替える。幼馴染の公爵、誇り高い騎士、そして策を巡らす伯爵令嬢。薔薇園で交わされる一言が、花嫁の未来を決める――誇りと愛が試される、切なくも凛とした宮廷ラブロマンス。

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

『白亜の誓いは泡沫の夢〜恋人のいる公爵様に嫁いだ令嬢の、切なくも甘い誤解の果て〜』

柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢キャロルは、長年想いを寄せていた騎士爵の婚約者に、あっさり「愛する人ができた」と振られてしまう。 傷心のキャロルに救いの手を差し伸べたのは、貴族社会の頂点に立つ憧れの存在、冷徹と名高いアスベル公爵だった。 彼の熱烈な求婚を受け、夢のような結婚式を迎えるキャロル。しかし、式の直前、公爵に「公然の恋人」がいるという噂を聞き、すべてが政略結婚だと悟ってしまう。

処理中です...