「幼馴染は、安心できる人で――独占する人でした」

だって、これも愛なの。

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番外編 報われる瞬間(レオン視点)

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エリナと並んで歩く帰り道。
いつも通りの風景。いつも通りの歩幅。
けれど胸の奥にだけ、静かで落ち着かないざわめきがあった。

――君は、俺をどう見ているんだろう。
幼い頃からずっと、隣にいるのは当然のように思われてきた。
それでよかった。
“お兄様みたいな人が好き”――その一言を信じていれば、迷わずにすんだから。

だが、それは同時に呪いでもあった。
俺はただ、誰かの代わりでいるだけなのかもしれない。
君にとっての「安心」とは、俺自身じゃなく、兄上の影をなぞった幻なのではないか。

「そういえばね」
不意に弾むような声で、エリナが口を開いた。

「この前、お兄様に会ったの」

心臓が跳ねた。
やめてくれ、と願う自分と、もっと聞きたいと望む自分が同時に顔を出す。

「……ユリウス様に」
努めて平静を装った声。

「うん。それでね、ずっと“レオンはお兄様に似てるから安心する”って言ってきたけど……あんまり似てないかもって思ったの」

足が止まった。
胸を鋭く裂かれるような痛み。
そうか――やっぱり俺は、代わりだったのか。
君が信じてきた安心は、俺じゃなく兄上の姿に重ねたもの。
俺はただ、そこに似せて立っていただけ――。

「でもね」

軽やかに続いた声が、鋭い痛みをやわらげた。

「わかったの。安心できるのは“似てるから”じゃなくて、“レオンだから”なんだって」

一瞬、呼吸を忘れた。
耳にした言葉が本当に現実なのか、確かめるように何度も胸の奥で繰り返す。
“似てるから”じゃない。
“レオンだから”。

ずっと欲しかった答えが、こんなにもあっさりと、無邪気に差し出されるなんて。

「……エリナ」

名前を呼ぶ声が、震えていないだろうか。
彼女は振り返り、曇りのない瞳で笑う。
それだけで、これまで積み重ねてきた年月が一気に報われる。

幼い日の誓いを胸に、俺は隣に立ち続けてきた。
安心させたい、守りたい。
でも本当は――選んでほしかった。
兄上の影ではなく、俺自身を。

ようやくその願いが届いた。

「……ありがとう」

短い言葉しか出てこなかった。
でも、それだけで十分だった。
無邪気な彼女は首をかしげ、また前を向いて歩き出す。

その後ろ姿を見守りながら、胸の奥で静かに呟く。

――やっと、報われたんだ。
君が見ているのはもう“誰かの代わり”じゃない。
ただの、レオン。

その確信が、夕陽よりも温かく心を満たしていた。
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