「幼馴染は、安心できる人で――独占する人でした」

だって、これも愛なの。

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番外編 似ていない理由

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久しぶりに帰省した兄・ユリウスと、庭のベンチに並んで腰を下ろした午後。
花の香りが漂い、静かな風が木々を揺らしていた。

「エリナ。随分と大人になったな」
「お兄様は、変わらないから、わたしはほっとします」

無邪気に笑うエリナを見て、ユリウスは柔らかく目を細める。
ふと、エリナは首を傾げてつぶやいた。

「ねぇ、お兄様。小さい頃、わたし“お兄様みたいな人が好き”って言ってたでしょ?」
「ああ、覚えているよ」
「ずっとレオンのことを、お兄様に似てるって思ってたんです。だから安心できるんだって。……でも、こうして会ってみると……あんまり似てないんですよね」

ユリウスは驚いたように瞬きをし、それからゆっくりと頷いた。
「……なるほど。エリナ、お前は“好き”という気持ちが分からなかったから、分かるもの――俺に重ねていたのかもしれないな」

「わたしが……?」
「無意識に。安心や信頼の形を、“似ている”と考えて」

エリナは胸に手を当てる。
兄の落ち着いた笑みと、レオンの笑顔を思い浮かべて、静かに気づいた。

「……だから違って見えるんですね。
 わたし、安心してるのは“似てるから”じゃなくて……“レオンだから”なんだ」

ユリウスは微笑み、妹の肩にそっと手を置いた。
「その答えに辿りついたなら、もう大丈夫だ」

夕陽が差し込み、二人の影を長く伸ばしていった。



数日後の放課後。
エリナとレオンはいつもの帰り道を並んで歩いていた。

「そういえばね、この前お兄様に会ったの」
「……ユリウス様に?」
「うん。それで、“似てる”って言ってたけど、やっぱりあんまり似てないかもって気づいちゃって」

レオンの足が一瞬止まる。
エリナは気づかず、にこにこと続けた。

「でもね、わかったの。安心できるのは“似てるから”じゃなくて、“レオンだから”なんだって」

無邪気に告げられたその言葉に、レオンはゆっくりと息を吐いた。
長い間胸に溜め込んできた痛みが、溶けていくように消えていく。

「……エリナ」
「ん?」
「……ありがとう」

短く、けれど深く。
その声の奥に、報われた想いが確かに宿っていた。

エリナは首をかしげながら笑い、いつも通り彼の隣を歩き続ける。
彼女の何気ない言葉が、レオンにとっては何よりも大切な宝物になっていた。
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