'寄宿学校シリーズ──5つの恋短編集

だって、これも愛なの。

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星の涙に願う夜

第八章 「月下の舞踏会」

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 寄宿学校の大広間。
 年に一度の舞踏会の夜、シャンデリアが光を放ち、床には無数の足音が響いていた。
 煌びやかな衣装に身を包んだ貴族の子弟たちが、音楽に合わせて優雅に踊る。

 カイルは壁際に立ち、無言のままその光景を見ていた。
 周囲から「また一人で」と囁かれても気にしない。
 ──そう思っていたのに。

 「カイル!」
 鮮やかな紅のドレスを揺らし、リリアが駆け寄ってくる。
 「ねえ、一曲だけ一緒に踊ろうよ!」

 「……俺は踊らない」
 即座に返す。
 「じゃあ、わたしが教えてあげる!」
 「教え……?」

 返答を待たずに、リリアは彼の手を取った。
 細い指先が触れた瞬間、胸が跳ねる。
 「ほら、足をこう……そうそう!」

 彼女の笑顔に導かれ、ぎこちなくもステップを踏む。
 初めは周囲の視線が気になって仕方なかった。
 「どうしてリリアがあのカイルと……?」
 そんな囁きが聞こえるたび、背筋が強張る。

 だが、彼女の笑顔だけは変わらない。
 「上手だよ、カイル!」
 「……お前、目が悪いだろ」
 「ふふ、照れてる?」

 思わず言葉に詰まる。
 耳の奥が熱くなり、視線を逸らした。

 ──気づけば。
 人々の視線も、ざわめきも、もうどうでもよくなっていた。

 月明かりがステンドグラス越しに差し込み、二人の影を重ねる。
 その瞬間、カイルははっきりと自覚した。

 ──俺は、この少女に惹かれている。

 万能の成績も、孤高の評判も関係ない。
 彼女といるときだけ、胸の奥が生きているように騒ぐ。

 曲が終わり、リリアがぱっと手を離す。
 「ね、楽しかったでしょ?」
 「……別に」
 けれどその声は、明らかに震えていた。
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