『好きのつづきがわからなかった』“好き”に慣れすぎた二人が、初めて本当の告白を交わすまで。

だって、これも愛なの。

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第四話『ちゃんと聞かせて』

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 体育館の裏手は、昼休みでも人の気配が少ない。
 遠くでバスケ部のドリブル音が響く中、ベンチに腰掛けた優が菓子パンを手にしていた。
 今日はチョココロネじゃないらしい。袋の端をいじりながら、ぼんやりと空を見ている。

「……優」

 呼びかけると、ゆっくり顔を上げた。
 目が合った瞬間、俺は息を呑む。
 いつものにやけ顔じゃない。
 少しだけ、距離を測るような目だ。

「昨日のこと、ちゃんと聞きたい」
「昨日のこと?」
「“付き合ってほしい”って言っただろ」

 優は視線をそらして、小さく息を吐いた。
「……ああ。あれな」

 その声が、ひどく淡々としていて胸がざわつく。

「俺、てっきりいつもの冗談かと思って……悪かった」
「別に。透ってそういうやつだし」
「そういうやつって……」

 言葉に詰まる。
 優の手元の菓子パンはほとんど減っていない。
 食べかけのまま、膝の上でくしゃっと袋がしわをつく。

「……本気だったんだよ」

 小さな声。
 でも確かに、俺の胸に届いた。

 そうだ、昨日の優は本気だった。
 覚えたての言葉を、きっと何度も心の中で練習して、やっと言ったのに。
 俺はそれを笑って流した。

 返すべき言葉はもう決まっている。
 でも、俺はほんの少し息を吸って、優の目をまっすぐ見る。

「……じゃあ、俺もちゃんと言う」

 次の瞬間、昼休みのチャイムが鳴った。
 優がふっと笑い、「続きは放課後だな」と立ち上がる。

 その背中を追いながら、俺は放課後が待ち遠しくて仕方なかった。
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