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第4章 恋の自覚
舞踏会の翌日。
リリアーナは、鏡の前で頬に手をあてていた。
(あのとき、殿下がわたしに……嫉妬、って……)
胸の奥がじんわり熱くなる。
思い出すだけで、鼓動が早まるのだ。
「これは……なんでしょう」
自分でも説明できない感情に、彼女は困惑する。
そこへ扉がノックされた。
「リリアーナ」
落ち着いた声。アレクシスだ。
「……っ、殿下」
彼女は慌てて立ち上がり、応接室へ向かう。
彼は窓際に立っていて、いつもの冷徹な表情に戻っていた。
だが、リリアーナが入ると少し視線を緩める。
「昨日は、すまなかった」
「……?」
「君を困らせた」
不器用な謝罪。
その一言に、リリアーナの胸はまた強く鳴った。
「困ってなどおりません。むしろ……」
言いかけて、言葉が喉で止まる。
(むしろ、嬉しかった……なんて言えません)
沈黙を破ったのは、彼のほうだった。
「君は、本当に私を“優しい人”だと思っているのか」
「え?」
「私は優しくなどない。……ただ、君が気になって仕方ないだけだ」
低く、真っ直ぐな声。
リリアーナの頬がぱっと赤く染まった。
気になって仕方ない――それは、婚約者として当然なのだろうか。
それとも……。
(殿下は、わたしのことを特別に思ってくださっているの?)
胸の奥がくすぐったくて、苦しくて、でも温かい。
初めての感情に戸惑いながら、リリアーナはそっと目を伏せた。
「……殿下」
「なんだ」
「わたし、少しだけ……心が落ち着きません。殿下のことを考えると」
アレクシスの瞳が驚きに揺れる。
そして、抑えきれないように微笑みが滲んだ。
「それは――悪くない兆しだ」
「……?」
「君が、私を意識している証拠だから」
言葉の意味を理解した途端、リリアーナの胸は破裂しそうになる。
(これが……恋?)
おっとり令嬢はまだ答えを出せない。
けれど確かに芽生えた気持ちを抱きしめながら、二人のじれじれの日々は、さらに甘い予感を帯びていくのだった。
リリアーナは、鏡の前で頬に手をあてていた。
(あのとき、殿下がわたしに……嫉妬、って……)
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落ち着いた声。アレクシスだ。
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「……?」
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言いかけて、言葉が喉で止まる。
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「え?」
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低く、真っ直ぐな声。
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気になって仕方ない――それは、婚約者として当然なのだろうか。
それとも……。
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初めての感情に戸惑いながら、リリアーナはそっと目を伏せた。
「……殿下」
「なんだ」
「わたし、少しだけ……心が落ち着きません。殿下のことを考えると」
アレクシスの瞳が驚きに揺れる。
そして、抑えきれないように微笑みが滲んだ。
「それは――悪くない兆しだ」
「……?」
「君が、私を意識している証拠だから」
言葉の意味を理解した途端、リリアーナの胸は破裂しそうになる。
(これが……恋?)
おっとり令嬢はまだ答えを出せない。
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