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舞踏会で、スイーツと美女に出会う
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煌びやかなシャンデリアが輝き、
豪勢な料理がずらりと並ぶ仮面舞踏会の会場。
笑い声、ワルツ、そして香水の香りが混ざり合い、
会場はまさに貴族の見栄と欲望の戦場(パーティー)。
そんな中――
私は、水色の燕尾服にアクアマリンのブローチを胸に光らせ、
仮面で顔を隠した“群青の王子”として端っこに立っていた。
……えぇ、完全にガクブル中です。
(ひぇぇぇ!! 上流階級のパーティーって規模が違う!!)
(人が多すぎて息できない!! むしろここで酸欠死したら本望かもしれない!!)
兄上と父上、どうして私をソロ出陣させたの!?
あんた達、娘(※中身)を人混みに放り込むタイプのスパルタ!?
(とにかく目立たず、影のように過ごすんだ……!)
(空気になれカリス、もといカリーナ!! “存在しない系令息”でいこう!!)
――そんな決意を固めていたのに。
「ねぇ、見て。あの方……」
「誰ですの!? あの美男子……!」
「仮面をしていてもわかりますわ、見目麗しい……!」
……え、誰の話?
(ちょっと待って、それ私!?!?)
なぜか私、めっちゃ噂されてるんですけど!?!?
え?待って。なにそれ。私、ただの生存狙いの偽男子なんですけど!?
(落ち着け……ここでパニックになったら本当に死刑だ……!)
(スイーツでも食べて気を紛らわせよう……!)
そう、会場の一角には天国があった。
――スイーツコーナー。
(うっ……あれは……モンブラン!? ショートケーキ!? マカロンまで!?)
いやもうダメ、我慢の限界。
男とか女とか関係ない、人類としての本能が叫ぶ。
「モ、モンブラン……いただきます……!!」
もぐっ。
(うんまぁぁぁぁぁぁ!!!)
栗の香り、ほどよい甘さ、そして口に広がる幸福。
生きてて良かった。
転生して良かった。
……が、周囲の令嬢達はそんな私をうっとり見ていた。
「スイーツを頬張る姿も素敵……!」
「見て、あの唇……!」
いやいやいや!?
今この顔、モンブランのクリームついてるから!!
色気ゼロどころかスイーツ妖怪だから!!!
(ダメだ……私、もうすでに空気じゃなくなってる……!)
そんな現実逃避をしているうちに、気づけば夜風が恋しくなって、私はこっそり庭に出ていた。
月が綺麗に輝いている。
ふぅ……やっと一息つけ――
「やめてください!! 手を離してください!!」
……ん? 今の声、女の子?
私の脳内警報が鳴る。ピコンピコン。
“フラグ発生音”。
声のする方へ駆け寄ると、そこには――
月明かりの下で、金髪の巻き髪にルビーの瞳を持つ、
絶世の美女がいた。
ピンクのドレスに涙を浮かべ、男爵らしきオヤジに腕を掴まれている。
(うわ、典型的変態イベント来たこれ!!)
あの先、休憩室だったはず。
……もしかして、原作で出てきた“強制イベント”!?
考えるより先に、体が動いていた。
「やめろ!! その子、嫌がってるだろ!!」
私は金髪の彼女の手をそっと握った。
「な、何だ貴様!? 邪魔をするな!」
「誰でもいいだろ! 嫌がってる令嬢を引っ張る方が非常識だ!」
バチン、と空気が張り詰めた次の瞬間――
おじさんの拳が飛んできた。
(うおおおお!? 殴るの!?)
反射的に避け、足をかけ、転ばせる。
「うぎゃあっ!!」
……情けない声が響く。
すぐに騎士達が駆けつけ、おじさんは御用。
私はホッと息を吐いた。
そして、ふと隣を見ると――
あの金髪の美女が、私をじっと見つめていた。
ルビーのような瞳が、月光に照らされてきらきらと輝く。
「ありがとう……麗しい王子様」
(お、おう……王子様!? いや、私はただの男装庶民転生者なんですけど!?)
「いや、僕は王子じゃないよ。でも君が無事でよかった」
思わず、照れ隠しに笑ってしまう。
その瞬間、彼女の頬が少しだけ染まった気がした。
(あ、やば。可愛い。普通にタイプ)
危ない危ない、私も女なんだった。
いつの間にか繋いでいた手を離す。
「ご、ごめん! 手、嫌だったよね!?」
「いえ……そんなことは……」
ふっと微笑んで、彼女は去っていった。
月の下に残された私は、ただその背中を見送ることしかできなかった。
「……綺麗な人だったな」
自分が女であることを一瞬忘れるほどに。
この時、私はまだ知らなかった。
――あの金髪の美女こそ、
原作で“傾国の美男子”として登場するノアその人だったことを。
豪勢な料理がずらりと並ぶ仮面舞踏会の会場。
笑い声、ワルツ、そして香水の香りが混ざり合い、
会場はまさに貴族の見栄と欲望の戦場(パーティー)。
そんな中――
私は、水色の燕尾服にアクアマリンのブローチを胸に光らせ、
仮面で顔を隠した“群青の王子”として端っこに立っていた。
……えぇ、完全にガクブル中です。
(ひぇぇぇ!! 上流階級のパーティーって規模が違う!!)
(人が多すぎて息できない!! むしろここで酸欠死したら本望かもしれない!!)
兄上と父上、どうして私をソロ出陣させたの!?
あんた達、娘(※中身)を人混みに放り込むタイプのスパルタ!?
(とにかく目立たず、影のように過ごすんだ……!)
(空気になれカリス、もといカリーナ!! “存在しない系令息”でいこう!!)
――そんな決意を固めていたのに。
「ねぇ、見て。あの方……」
「誰ですの!? あの美男子……!」
「仮面をしていてもわかりますわ、見目麗しい……!」
……え、誰の話?
(ちょっと待って、それ私!?!?)
なぜか私、めっちゃ噂されてるんですけど!?!?
え?待って。なにそれ。私、ただの生存狙いの偽男子なんですけど!?
(落ち着け……ここでパニックになったら本当に死刑だ……!)
(スイーツでも食べて気を紛らわせよう……!)
そう、会場の一角には天国があった。
――スイーツコーナー。
(うっ……あれは……モンブラン!? ショートケーキ!? マカロンまで!?)
いやもうダメ、我慢の限界。
男とか女とか関係ない、人類としての本能が叫ぶ。
「モ、モンブラン……いただきます……!!」
もぐっ。
(うんまぁぁぁぁぁぁ!!!)
栗の香り、ほどよい甘さ、そして口に広がる幸福。
生きてて良かった。
転生して良かった。
……が、周囲の令嬢達はそんな私をうっとり見ていた。
「スイーツを頬張る姿も素敵……!」
「見て、あの唇……!」
いやいやいや!?
今この顔、モンブランのクリームついてるから!!
色気ゼロどころかスイーツ妖怪だから!!!
(ダメだ……私、もうすでに空気じゃなくなってる……!)
そんな現実逃避をしているうちに、気づけば夜風が恋しくなって、私はこっそり庭に出ていた。
月が綺麗に輝いている。
ふぅ……やっと一息つけ――
「やめてください!! 手を離してください!!」
……ん? 今の声、女の子?
私の脳内警報が鳴る。ピコンピコン。
“フラグ発生音”。
声のする方へ駆け寄ると、そこには――
月明かりの下で、金髪の巻き髪にルビーの瞳を持つ、
絶世の美女がいた。
ピンクのドレスに涙を浮かべ、男爵らしきオヤジに腕を掴まれている。
(うわ、典型的変態イベント来たこれ!!)
あの先、休憩室だったはず。
……もしかして、原作で出てきた“強制イベント”!?
考えるより先に、体が動いていた。
「やめろ!! その子、嫌がってるだろ!!」
私は金髪の彼女の手をそっと握った。
「な、何だ貴様!? 邪魔をするな!」
「誰でもいいだろ! 嫌がってる令嬢を引っ張る方が非常識だ!」
バチン、と空気が張り詰めた次の瞬間――
おじさんの拳が飛んできた。
(うおおおお!? 殴るの!?)
反射的に避け、足をかけ、転ばせる。
「うぎゃあっ!!」
……情けない声が響く。
すぐに騎士達が駆けつけ、おじさんは御用。
私はホッと息を吐いた。
そして、ふと隣を見ると――
あの金髪の美女が、私をじっと見つめていた。
ルビーのような瞳が、月光に照らされてきらきらと輝く。
「ありがとう……麗しい王子様」
(お、おう……王子様!? いや、私はただの男装庶民転生者なんですけど!?)
「いや、僕は王子じゃないよ。でも君が無事でよかった」
思わず、照れ隠しに笑ってしまう。
その瞬間、彼女の頬が少しだけ染まった気がした。
(あ、やば。可愛い。普通にタイプ)
危ない危ない、私も女なんだった。
いつの間にか繋いでいた手を離す。
「ご、ごめん! 手、嫌だったよね!?」
「いえ……そんなことは……」
ふっと微笑んで、彼女は去っていった。
月の下に残された私は、ただその背中を見送ることしかできなかった。
「……綺麗な人だったな」
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この時、私はまだ知らなかった。
――あの金髪の美女こそ、
原作で“傾国の美男子”として登場するノアその人だったことを。
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