男装悪役令嬢は、女装王子に溺愛される!?ー死刑回避のための男装ライフ、恋愛フラグが乱立中ー

明夏 向日葵

文字の大きさ
47 / 47

婚姻式〜永遠の約束〜

しおりを挟む
ノアの私室。
婚姻式を終えれば、ここでノアと共に暮らす。
その新しい生活に少しでも慣れるため、カリーナは数日前からこの部屋に通っていた。

夜。
カリーナはベッドに寝転がり、天井のシャンデリアを眺めていた。
胸の奥が、緊張と幸福で静かに波打っている。

(明日はついに、ノア殿下との婚姻式……)
(転生した当初、彼と結ばれるなんて思いもしなかった。誰からも愛されずに生きていくのだと、そう信じていたのに……)

“愛される”ということが、こんなにも温かく、幸せなものだったなんて。

そんなことを思いながら、カリーナはベッドの上で小さく寝返りを打った。

そこへ、扉が静かに開く。
公務を終えたノアが、疲れた顔に優しい笑みを浮かべて近づき、そのまま彼女の隣に潜り込んだ。

「眠れない?」

低く落ち着いた声。
温もりが隣に広がる。

「……明日が婚姻式だと思うと、緊張してしまって」

カリーナが小さく笑うと、ノアは彼女の手を取り、指を絡めた。

「大丈夫。僕がいる」

その一言と手の温もりが、心の奥まで染みわたる。

「……ありがとうございます、殿下」

やがて、ノアの腕の中でカリーナはゆっくりと眠りについた。
ノアはその髪を撫で、額にキスを落とす。

「愛してるよ。
明日は君にとって、最高に幸せな日にしてみせる。――約束する」

***

翌朝。
ルビーとブルーダイヤがあしらわれたウェディングドレスに身を包むカリーナは、鏡の前に立っていた。
純白のヴェールの下で、彼女の瞳が星のように輝いている。

向かう先は――誰よりも愛しい人のもとへ。

祭壇の前に立つノアが、カリーナを見つけると微笑んだ。
その目に映るのは、ただひとり。

「……綺麗だ、カリーナ。
綺麗すぎて、今すぐ抱きしめたくなる」

その言葉に、カリーナの頬が紅に染まる。
彼の差し出した手に、自分の手を重ねると、温かい安心が胸に広がった。

2人は並んで、国王と王妃の前に立つ。

ルノス国王が高らかに宣言する。
「ノルヴィス王国第二王子、ノルヴィス・ノア。
そしてラービス・カリーナ――その婚姻をここに執り行う!」

厳かに、式は進む。

指輪交換のとき、ノアはそっとカリーナの手を取った。

「僕と出会ってくれて、ありがとう。
生きる希望を、優しさを、そして強さを教えてくれた君に、心から感謝している。
これからは、僕が君を守る番だ。
だから――ずっと僕のそばで、僕の愛を受け取ってほしい」

その言葉とともに、指輪がカリーナの薬指に輝く。

カリーナもまた、ノアの手を優しく包んだ。

「ノア殿下……いいえ、ノア。
心から愛しています。
貴方の幸せは、私の幸せ。
だから私は、この生涯をかけて貴方を支え、貴方を幸せにします」

彼女の声は涙に揺れながらも、凛として美しかった。
ノアの薬指にも指輪が通される。

2人は静かに見つめ合い、そして唇を重ねた。

祝福の鐘が鳴り響く。
その瞬間、薔薇色と群青色の宝石が陽の光を受けて寄り添うように輝いた。

まるで、2人の未来を――永遠の愛を――祝福しているかのように。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜

束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。 家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。 「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。 皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。 今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。 ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……! 心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...