1 / 9
転けて覚醒。そして、婚約破棄を申し込みます!
しおりを挟む
痛っっったぁぁぁぁ!!?!?!?!?
頭の中で鐘が鳴った。いや、鐘どころか鐘楼ごと崩れ落ちた。
床に散らばる書類、こぼれた紅茶、そして見事に転がるわたくし、ロゼリス・アーバートン。
「……いったぁ……何事ですの……」
目を開けた瞬間、脳裏に流れ込んできたのは、見覚えのない――いや、見覚えありすぎる映像だった。
画面の中で泣きながら王子に縋る、赤髪の令嬢。
その名は――ロゼリス・アーバートン。
「……えっ、えっ、えっ!? これ、『運命と君と』じゃない!? え!? 私、ロゼリス!? 悪役令嬢の!?」
叫んだ瞬間、部屋にいた侍女がビクリと震える。
「お、お嬢様!? 頭でもお打ちになりましたか!?」
「えぇ、打ちましたわ。強烈に!!!」
そう。私は前世で乙女ゲームオタクとして生き、イベント特典のアクリルスタンドを抱いて眠るほど「ルチア×シルビア」に命を懸けていた。
そして今、その恋路を妨げて殺される悪役令嬢ロゼリスに――転生してしまっている。
よりによって、推しをいじめる悪役側。
そして三年後には婚約者アーロンに婚約破棄され、処刑。
「そんなバッドエンド、絶対、願い下げですわ!!」
ベッドの上で勢いよく立ち上がる。
侍女が悲鳴をあげるが、構っていられない。
私の頭の中では、もう対策会議が始まっていた。
まず第一に――アーロンとの婚約を早めに破棄する!
これさえ回避できれば、原作ルートから脱出できるはず。
何より、推しカプの恋路を邪魔せずに済む。
「そうですわ……推しの尊い恋を邪魔するなんて、オタク失格ですもの!」
そう、推しこそすべて。推しは酸素。推しカプは人類の至宝。
私の使命は、彼らを見守り、支え、壁になること――!
そして運命の日は、すぐにやってきた。
学院入学を目前に控えた春の舞踏会。
王族も貴族も集う煌びやかな会場。
そしてそこには、私の婚約者――第二王子アーロン・ジークスの姿があった。
金の髪、整った顔立ち、どこまでも傲慢な笑み。
「俺様系王子」の代表格。
前世では画面越しに見て「こいつ推しカプの邪魔すんな!!」と罵倒していたお方。
――でも今は違う。
この人とは、平和的に別れなければならない。
そう、これも推しのため、そして私の命のため!
(よし……やるしかないわ……!)
高鳴る心臓を押さえながら、私は彼の前へと歩み出た。
音楽が止み、周囲の貴族たちの視線が集まる。
完璧な笑みを浮かべながら、私は告げた。
「アーロン殿下。お願いがございますの」
彼は余裕の笑みを浮かべる。
「なんだ? また愛の言葉でも聞かせてくれるのか?」
その瞬間、私は深呼吸して、言い放った。
「どうか、婚約を破棄してくださいませ!!」
静寂。
会場が時を止めたように静まり返る。
アーロンの眉がぴくりと動く。
「……は?」
「婚約破棄、ですわ。理由は、あの、いろいろございますけれど……要するに、殿下とはもう“そういう関係”でいたくありませんの!」
周囲の令嬢たちが「キャー!」と悲鳴を上げる。
アーロンは完全にフリーズ。
そして次の瞬間、信じられないというように目を細めた。
「……お前、俺を……振ったのか?」
「ええ、そうですわ。清々しい気持ちです!」
そう言い切った瞬間、私はスカートを翻し、優雅に会場を後にした。
これで私は自由!これで未来は変わる!
背後から、アーロンの低い声が響いた。
「……面白い。ロゼリス・アーバートン、俺を振った女……か」
何かを決意するような声音。
けれど私は、振り返らない。
(これでいいんですわ!推し活への第一歩ですもの!)
まさかこの時――この一言が、彼の恋心に火をつけるとは、その時の私は知る由もなかった。
頭の中で鐘が鳴った。いや、鐘どころか鐘楼ごと崩れ落ちた。
床に散らばる書類、こぼれた紅茶、そして見事に転がるわたくし、ロゼリス・アーバートン。
「……いったぁ……何事ですの……」
目を開けた瞬間、脳裏に流れ込んできたのは、見覚えのない――いや、見覚えありすぎる映像だった。
画面の中で泣きながら王子に縋る、赤髪の令嬢。
その名は――ロゼリス・アーバートン。
「……えっ、えっ、えっ!? これ、『運命と君と』じゃない!? え!? 私、ロゼリス!? 悪役令嬢の!?」
叫んだ瞬間、部屋にいた侍女がビクリと震える。
「お、お嬢様!? 頭でもお打ちになりましたか!?」
「えぇ、打ちましたわ。強烈に!!!」
そう。私は前世で乙女ゲームオタクとして生き、イベント特典のアクリルスタンドを抱いて眠るほど「ルチア×シルビア」に命を懸けていた。
そして今、その恋路を妨げて殺される悪役令嬢ロゼリスに――転生してしまっている。
よりによって、推しをいじめる悪役側。
そして三年後には婚約者アーロンに婚約破棄され、処刑。
「そんなバッドエンド、絶対、願い下げですわ!!」
ベッドの上で勢いよく立ち上がる。
侍女が悲鳴をあげるが、構っていられない。
私の頭の中では、もう対策会議が始まっていた。
まず第一に――アーロンとの婚約を早めに破棄する!
これさえ回避できれば、原作ルートから脱出できるはず。
何より、推しカプの恋路を邪魔せずに済む。
「そうですわ……推しの尊い恋を邪魔するなんて、オタク失格ですもの!」
そう、推しこそすべて。推しは酸素。推しカプは人類の至宝。
私の使命は、彼らを見守り、支え、壁になること――!
そして運命の日は、すぐにやってきた。
学院入学を目前に控えた春の舞踏会。
王族も貴族も集う煌びやかな会場。
そしてそこには、私の婚約者――第二王子アーロン・ジークスの姿があった。
金の髪、整った顔立ち、どこまでも傲慢な笑み。
「俺様系王子」の代表格。
前世では画面越しに見て「こいつ推しカプの邪魔すんな!!」と罵倒していたお方。
――でも今は違う。
この人とは、平和的に別れなければならない。
そう、これも推しのため、そして私の命のため!
(よし……やるしかないわ……!)
高鳴る心臓を押さえながら、私は彼の前へと歩み出た。
音楽が止み、周囲の貴族たちの視線が集まる。
完璧な笑みを浮かべながら、私は告げた。
「アーロン殿下。お願いがございますの」
彼は余裕の笑みを浮かべる。
「なんだ? また愛の言葉でも聞かせてくれるのか?」
その瞬間、私は深呼吸して、言い放った。
「どうか、婚約を破棄してくださいませ!!」
静寂。
会場が時を止めたように静まり返る。
アーロンの眉がぴくりと動く。
「……は?」
「婚約破棄、ですわ。理由は、あの、いろいろございますけれど……要するに、殿下とはもう“そういう関係”でいたくありませんの!」
周囲の令嬢たちが「キャー!」と悲鳴を上げる。
アーロンは完全にフリーズ。
そして次の瞬間、信じられないというように目を細めた。
「……お前、俺を……振ったのか?」
「ええ、そうですわ。清々しい気持ちです!」
そう言い切った瞬間、私はスカートを翻し、優雅に会場を後にした。
これで私は自由!これで未来は変わる!
背後から、アーロンの低い声が響いた。
「……面白い。ロゼリス・アーバートン、俺を振った女……か」
何かを決意するような声音。
けれど私は、振り返らない。
(これでいいんですわ!推し活への第一歩ですもの!)
まさかこの時――この一言が、彼の恋心に火をつけるとは、その時の私は知る由もなかった。
0
あなたにおすすめの小説
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話
下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。
御都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結】私を嫌ってたハズの義弟が、突然シスコンになったんですが!?
miniko
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢のキャサリンは、ある日突然、原因不明の意識障害で倒れてしまう。
一週間後に目覚めた彼女は、自分を嫌っていた筈の義弟の態度がすっかり変わってしまい、極度のシスコンになった事に戸惑いを隠せない。
彼にどんな心境の変化があったのか?
そして、キャサリンの意識障害の原因とは?
※設定の甘さや、ご都合主義の展開が有るかと思いますが、ご容赦ください。
※サスペンス要素は有りますが、難しいお話は書けない作者です。
※作中に登場する薬や植物は架空の物です。
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
【完結】お前を愛することはないとも言い切れない――そう言われ続けたキープの番は本物を見限り国を出る
堀 和三盆
恋愛
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
デビュタントを迎えた令嬢達との対面の後。一人一人にそう告げていく若き竜王――ヴァール。
彼は新興国である新獣人国の国王だ。
新獣人国で毎年行われるデビュタントを兼ねた成人の儀。貴族、平民を問わず年頃になると新獣人国の未婚の娘は集められ、国王に番の判定をしてもらう。国王の番ではないというお墨付きを貰えて、ようやく新獣人国の娘たちは成人と認められ、結婚をすることができるのだ。
過去、国の為に人間との政略結婚を強いられてきた王族は番感知能力が弱いため、この制度が取り入れられた。
しかし、他種族国家である新獣人国。500年を生きると言われる竜人の国王を始めとして、種族によって寿命も違うし体の成長には個人差がある。成長が遅く、判別がつかない者は特例として翌年の判別に再び回される。それが、キープの者達だ。大抵は翌年のデビュタントで判別がつくのだが――一人だけ、十年近く保留の者がいた。
先祖返りの竜人であるリベルタ・アシュランス伯爵令嬢。
新獣人国の成人年齢は16歳。既に25歳を過ぎているのに、リベルタはいわゆるキープのままだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる