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尊きランチタイム!
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今日は、なんて素敵な日なのかしら!
ルチア様からお昼をご一緒にと誘われたロゼリスは、朝から上機嫌だった。
学院の廊下をスキップでもしたいくらいの勢いで、食堂へと向かう。
ロイエンス王立魔導学院の食堂は、まさに王国の縮図。
煌びやかなシャンデリア、整然と並ぶ銀食器、香り立つ高級料理。
昼食だというのに、並ぶ料理はまるで晩餐会。
(名門学院、恐るべし……ビュッフェ形式とか貴族の夢が詰まりすぎですわ……!)
などと感動していたその時。
カツ、カツ、と靴音が響く。
振り向いた瞬間、ロゼリスの脳が一瞬フリーズした。
!!???
(シ、シルビア殿下ぁぁぁ!!)
光を背に受け、金髪がきらめく。
爽やかな笑みを浮かべながら歩いてくるその姿に、周囲の女子たちが一斉に歓声を上げた。
「シルビア様~! 今日も素敵ですわー!」
「殿下ー! 笑顔が尊いですー!」
(わかります!! その気持ち!!)
心の中で全力で同意しながら、ロゼリスは静かに震えていた。
そんな中、シルビア殿下の視線がふと一点を捉える。
その先にはルチア。
ふっと微笑んだシルビア殿下が、軽やかに声をかけた。
「今から昼食? もしよかったら、僕もご一緒していいかな」
キャーーーッ!!!!(※心の叫び)
その瞬間、ロゼリスの脳内に鳴り響く尊いBGM。
見えないスポットライトがふたりを照らし、後光が差し込む。
そしてルチア様が、ちらりとこちらを見る。
(はっ! これはもしや、ルチア様が“ロゼリス様も一緒にどうですか?”って気を遣ってくださってる!?
そんな! そんな尊い空間に混ざるなど、恐れ多い!!
それはもう、オタク的に過呼吸案件ですわ!!!)
「わ、私のことはお気になさらず! お二人でごゆっくりどうぞ!
あっ、そうだわ! 教室に忘れ物を取りに行かなくては!」
早口でまくしたて、ロゼリスはその場をそそくさと離れた。
(あ、危なかった……。もう少しで推しカプの尊さで鼻血噴出するところでしたわ……。)
しかし、心の奥底では、見たいというオタク魂が燃え上がっていた。
(でも、やっぱり見たい!! 尊きお食事風景をこの目に焼き付けたい!!)
結局ロゼリスは、食堂のテラス席の壁の陰から、そっと覗くことにした。
ガラス越しに見える二人。
笑い合いながらパンを分け合う姿は、まさに聖域。
(あああああ……っ! やっぱり尊い!!
あの感じだと、シルビア様の方もルチア様を意識しておられますわね!?
良かった……尊き両片想い、始まりの瞬間……っ!)
幸せそうに見つめるロゼリスの背後から、不意に声がした。
「……お前、またこんなところで奇怪な動きしてるのか」
ビクリと肩を跳ねさせ、振り向く。
そこには、アーロン殿下。
(なぜ!? なぜ尊き聖域に殿下が出現なさるの!?今は推しカプの世界線ですのよ!?!?)
「こ、これはこれは殿下。奇遇ですわね……」
「奇遇じゃねぇよ。まったく、お前ってやつは……。もう少し公爵令嬢としての自覚を持て。草陰で何やってるんだ」
「……お花の観察を」
「ウソ下手か」
アーロンは眉をひそめ、腕を組む。
「だいたいな、お前、婚約破棄とかふざけたこと言ってないで妃教育をちゃんと受けろ。サボってるって聞いたぞ?」
「は、はぁ……」
「俺の婚約者でいられることに感謝しろ?
普通は、俺の婚約者になんて望んでもなれねぇんだぞ?」
(ああ……始まったわ。何言ってるのか全然わからないアーロン殿下講義)
「素直になれ。婚約破棄も、どうせ俺の気を引くためだろ?」
あはは、とロゼリスは乾いた笑いを浮かべた。
(アーロン殿下、なに言ってるのか本気で謎ですけど……)
でも、あのテラスの二人を守るためなら。
(愛想笑いぐらい、いくらでもして差し上げますわ!!)
ロゼリスの心の中で、推しカプ死守の決意が燃え上がる。
今日も、尊き世界の平和は、ひとりのオタク令嬢によって守られるのだった。
ルチア様からお昼をご一緒にと誘われたロゼリスは、朝から上機嫌だった。
学院の廊下をスキップでもしたいくらいの勢いで、食堂へと向かう。
ロイエンス王立魔導学院の食堂は、まさに王国の縮図。
煌びやかなシャンデリア、整然と並ぶ銀食器、香り立つ高級料理。
昼食だというのに、並ぶ料理はまるで晩餐会。
(名門学院、恐るべし……ビュッフェ形式とか貴族の夢が詰まりすぎですわ……!)
などと感動していたその時。
カツ、カツ、と靴音が響く。
振り向いた瞬間、ロゼリスの脳が一瞬フリーズした。
!!???
(シ、シルビア殿下ぁぁぁ!!)
光を背に受け、金髪がきらめく。
爽やかな笑みを浮かべながら歩いてくるその姿に、周囲の女子たちが一斉に歓声を上げた。
「シルビア様~! 今日も素敵ですわー!」
「殿下ー! 笑顔が尊いですー!」
(わかります!! その気持ち!!)
心の中で全力で同意しながら、ロゼリスは静かに震えていた。
そんな中、シルビア殿下の視線がふと一点を捉える。
その先にはルチア。
ふっと微笑んだシルビア殿下が、軽やかに声をかけた。
「今から昼食? もしよかったら、僕もご一緒していいかな」
キャーーーッ!!!!(※心の叫び)
その瞬間、ロゼリスの脳内に鳴り響く尊いBGM。
見えないスポットライトがふたりを照らし、後光が差し込む。
そしてルチア様が、ちらりとこちらを見る。
(はっ! これはもしや、ルチア様が“ロゼリス様も一緒にどうですか?”って気を遣ってくださってる!?
そんな! そんな尊い空間に混ざるなど、恐れ多い!!
それはもう、オタク的に過呼吸案件ですわ!!!)
「わ、私のことはお気になさらず! お二人でごゆっくりどうぞ!
あっ、そうだわ! 教室に忘れ物を取りに行かなくては!」
早口でまくしたて、ロゼリスはその場をそそくさと離れた。
(あ、危なかった……。もう少しで推しカプの尊さで鼻血噴出するところでしたわ……。)
しかし、心の奥底では、見たいというオタク魂が燃え上がっていた。
(でも、やっぱり見たい!! 尊きお食事風景をこの目に焼き付けたい!!)
結局ロゼリスは、食堂のテラス席の壁の陰から、そっと覗くことにした。
ガラス越しに見える二人。
笑い合いながらパンを分け合う姿は、まさに聖域。
(あああああ……っ! やっぱり尊い!!
あの感じだと、シルビア様の方もルチア様を意識しておられますわね!?
良かった……尊き両片想い、始まりの瞬間……っ!)
幸せそうに見つめるロゼリスの背後から、不意に声がした。
「……お前、またこんなところで奇怪な動きしてるのか」
ビクリと肩を跳ねさせ、振り向く。
そこには、アーロン殿下。
(なぜ!? なぜ尊き聖域に殿下が出現なさるの!?今は推しカプの世界線ですのよ!?!?)
「こ、これはこれは殿下。奇遇ですわね……」
「奇遇じゃねぇよ。まったく、お前ってやつは……。もう少し公爵令嬢としての自覚を持て。草陰で何やってるんだ」
「……お花の観察を」
「ウソ下手か」
アーロンは眉をひそめ、腕を組む。
「だいたいな、お前、婚約破棄とかふざけたこと言ってないで妃教育をちゃんと受けろ。サボってるって聞いたぞ?」
「は、はぁ……」
「俺の婚約者でいられることに感謝しろ?
普通は、俺の婚約者になんて望んでもなれねぇんだぞ?」
(ああ……始まったわ。何言ってるのか全然わからないアーロン殿下講義)
「素直になれ。婚約破棄も、どうせ俺の気を引くためだろ?」
あはは、とロゼリスは乾いた笑いを浮かべた。
(アーロン殿下、なに言ってるのか本気で謎ですけど……)
でも、あのテラスの二人を守るためなら。
(愛想笑いぐらい、いくらでもして差し上げますわ!!)
ロゼリスの心の中で、推しカプ死守の決意が燃え上がる。
今日も、尊き世界の平和は、ひとりのオタク令嬢によって守られるのだった。
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