Love affair〜ラブ アフェア〜

橘 薫

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♠︎出会い♠︎弘田宇丈

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 みひろさんから初めて電話がかかってきたのは、平日の昼間だった。
 仕事柄、あちこちに名刺を配っている。知らない番号から電話が来るのは日常茶飯事だったから、オレは何も考えずに電話に出た。

「はい」
「…」
「もしもし?もしもし?」
「あの…」
 電話の主は女性だった。
「弘田さんのお電話…でしょうか?」

 セクシーな声に、一瞬ドキンとした。
「はい、そうですが」
「あの…」
 電話の主は、少しためらうように間をあけた。
「先日、〇〇先生を応援する会で名刺を交換させていただいた、真柴という議員の妻です」
「あぁ…はい」

 あの彼女だ。控えめな印象を与えながらも、何故だか目を奪われた。オレの周りにいる、派手で、やる気満々で、自信に満ちたタイプとは真逆の女性。

「ご要件は何でしょうか?」
「その、広告のマーケティングのことで…会って、お話を伺いたいのですがご都合いかがでしょう?」
「はぁ」

 秘書ではなく、奥さんが電話してきたことに違和感を感じたが…秘書がわりなのかな?と大して深く考えずに、会う約束をした。

 待ち合わせ場所に現れた彼女は、紺のワンピースに、紺の低いヒール。控えめな大きさのパールのネックレスにイヤリング…と、コンサバの王道をいく格好だった。相変わらず、印象に残りにくい…そう思わせて何故か目を奪われる。

 お茶を飲みながら改めて自己紹介がてら、自分の仕事内容の話をした。
 頭のいい人だな、と感じた。新聞もよく読んでるし、経済にも含蓄が深そうだ。
 こちらに合わせてはいるが、きっと独自の意見、独自の視点を持っているんだろう…それを知りたくなった。

 何がこの人を、ここまで目立たないよう徹底させるのか。議員の妻、というだけではなさそうだな…。本当の彼女を見てみたい、知りたい…と思った。

 会話の中のキーワード。旦那さんの話を中心にしながら散りばめられる彼女のプライベート…それを記憶した。
 月に二回、水曜日はお茶の稽古で、今日はその帰り。稽古は豪徳寺で、昔から通っているところ…。
家は汐留の高層マンション。23で結婚して、ずっと旦那さんを支えてきたこと…。

 マーケティングの話は口実だとすぐにわかったが、深くは突っ込まなかった。きっと、周りにオレみたいなタイプがいないから珍しかったかんだろう。

 その日は、小一時間くらい話した。
別れ際に「主人に今日伺った件を話しておきますね」と言われたが、それは次に会う時の口実にするつもりなのかもしれない。

 それよりも前に…不意打ちしてみよう。予想外のことが起きると、人は本性を出す。
 彼女の本性はどんななのか…楽しみで仕方なかった。
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