Love affair〜ラブ アフェア〜

橘 薫

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♠︎セックスセラピスト♠︎弘田宇丈

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 オレはみひろさんに、願望をちゃんと伝えてほしいと思ってる。
 どこが気持ちいいとか、どうして欲しいとかを明確に知りたいし、教えてもらえればちゃんとそれに応えるつもりだ。

 けど、みひろさんは決して口に出さない。ただ、潤んだ目でオレを見上げるだけだ。
 結局オレが、自分の欲をコントロールできなくなって、彼女にぶつけてしまう。
 オレに抱かれるのは好きなんだろうけど…。じゃなきゃ、月に一度とはいえリスクを冒してまで会わないだろう…。

「過去になんかあって、それで声我慢するようになったりとかさ。なんだっけ?そういうの。動物みたいなの」
「…トラウマか?」
「それそれ!」
「なんだよ、動物みたいなのって」
「だからさ、トラウマ?そういうのが関係することもあるだろ?セックスの問題って」
「ああ、まぁ…な」
「なんとかしてやりたくてさ…アオの意見、聞きたいんだよ」

 アオは暫く考えて言った。
「こういうのはさ、まず本人が何とかしたいって思わないと意味、ないからさ」
「うん」
「おまえさ、そのへん彼女に確認してんの?」
「いや…」

 ただの、オレのワガママかもしれない。抱いてる時の彼女が、まだ…本当の彼女じゃない気がして。
 全部さらけ出させてやりたい。取り繕うことも偽ることも必要ない。たとえ欲にまみれ、本能に忠実でも…欲しいものを欲しい、と宣言してほしいし、手に入れるためならどんな手段も厭わない…そういう面があってもいいんだって安心させてやりたい。

 どんなことも受け入れる覚悟は出来てる。じゃなきゃ、ほかの女全部切って、みひろさんのためだけに、あの逢瀬のためだけにオレの全てを捧げやしない…。

「会って話してみないとなんとも言えないけどさ、可能性として考えられるのは複数のトラウマだな」
「複数、か…」
「ああ、彼女確か、いいとこのお嬢様だったよな?」
「ああ」
「要求出来ないことの理由はさ、色々なケースが考えられる。可能性として高いのは、要求しても通らないっていう…諦めだな」
「諦め?」
「そ」
 アオはツマミに箸を伸ばしながら喋り続けた。
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