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♠︎年末♠︎弘田宇丈
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社に戻ると山のような仕事が待っていた。メールをチェックし、重要度の高いものから返信していく。
気がついたらもう七時近かった。時間が経つのが、早い。
みひろさんといるときもそうだ。もっと一緒に居たい。出来ることなら…一晩一緒に過ごしてみたい。もっと色んなことを話して、触れて、キスして…。
「弘田さん、残業ですか?」
みひろさんのことを思い出していたら、声をかけられた。
えっと…デザインチームの子、だっけかな?確かまだ若い…今年二年目だったかな?
「ああ、えっと…」
「美優です。中島美優」
「あー、中島さん。えと、何か用かな?」
「夕飯、行きません?」
「え?」
彼女と普段接点はない。マーケティングとデザインは対外チームを組むが、彼女の部署とはチームが違う。会議で顔を合わせることはあっても、個人的に話をすることはほとんどない。
「オレと?」
「はい」
参ったな…オレ、結構人見知りなんだよな…。こんな若そうな子と、うまく話…できんのか?
断る理由を探していたら、「お腹空き過ぎちゃって残業できません。一人ご飯寂しいんで、つきあってください!」と、頼み込まれた。
その強引さに負けてつい、頷いてしまった。
中島さんは、よく喋る子で助かった。オレが振らなくてもガンガン喋る。彼女の話に適当に相づちを打ちながら、思った。
みひろさんの背の方が、高い。
みひろさんの髪の方が、黒い。
みひろさんの声の方が、柔らかい。
みひろさんの瞳の方が…黒目がちで、神秘的で、きれいだ。
結局、みひろさんのことばかりを思い出してる。さっき別れたばかりなのに、もう恋しくなって…この腕の中に抱いた感触や、可愛がって感じさせて、何度となくイカせてぐったりした様子を思い出す。
「弘田さん、香水つけてます?」
ふいに中島さんが鼻をくん、とさせた。
「いや、オレ香水はつけないよ?」
「ふぅん…この香り、弘田さんから香ってます」
「え?そう?」
内心焦りながら、平静を装って聞いた。いつ移り香したんだろう…別れ際に抱きしめたときか?
「女物…クロエ、ですね」
「え?」
「ローズ ド クロエ」
「…香水、詳しいんだな」
「彼女さんのですか?」
「ああ、まぁ…な」
否定するのもおかしいし、肯定しておいたほうが、予防策にもなるだろう。
「彼女いるのかぁ…残念」
中島さんはいたずらっぽく笑うと、それ以上話を振ってこなかった。
気がついたらもう七時近かった。時間が経つのが、早い。
みひろさんといるときもそうだ。もっと一緒に居たい。出来ることなら…一晩一緒に過ごしてみたい。もっと色んなことを話して、触れて、キスして…。
「弘田さん、残業ですか?」
みひろさんのことを思い出していたら、声をかけられた。
えっと…デザインチームの子、だっけかな?確かまだ若い…今年二年目だったかな?
「ああ、えっと…」
「美優です。中島美優」
「あー、中島さん。えと、何か用かな?」
「夕飯、行きません?」
「え?」
彼女と普段接点はない。マーケティングとデザインは対外チームを組むが、彼女の部署とはチームが違う。会議で顔を合わせることはあっても、個人的に話をすることはほとんどない。
「オレと?」
「はい」
参ったな…オレ、結構人見知りなんだよな…。こんな若そうな子と、うまく話…できんのか?
断る理由を探していたら、「お腹空き過ぎちゃって残業できません。一人ご飯寂しいんで、つきあってください!」と、頼み込まれた。
その強引さに負けてつい、頷いてしまった。
中島さんは、よく喋る子で助かった。オレが振らなくてもガンガン喋る。彼女の話に適当に相づちを打ちながら、思った。
みひろさんの背の方が、高い。
みひろさんの髪の方が、黒い。
みひろさんの声の方が、柔らかい。
みひろさんの瞳の方が…黒目がちで、神秘的で、きれいだ。
結局、みひろさんのことばかりを思い出してる。さっき別れたばかりなのに、もう恋しくなって…この腕の中に抱いた感触や、可愛がって感じさせて、何度となくイカせてぐったりした様子を思い出す。
「弘田さん、香水つけてます?」
ふいに中島さんが鼻をくん、とさせた。
「いや、オレ香水はつけないよ?」
「ふぅん…この香り、弘田さんから香ってます」
「え?そう?」
内心焦りながら、平静を装って聞いた。いつ移り香したんだろう…別れ際に抱きしめたときか?
「女物…クロエ、ですね」
「え?」
「ローズ ド クロエ」
「…香水、詳しいんだな」
「彼女さんのですか?」
「ああ、まぁ…な」
否定するのもおかしいし、肯定しておいたほうが、予防策にもなるだろう。
「彼女いるのかぁ…残念」
中島さんはいたずらっぽく笑うと、それ以上話を振ってこなかった。
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